「オーランド」@PARCO劇場 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

原作 ヴァージニア・ウルフ

翻案 岩切正一郎

演出 栗山民也

宮沢りえ/山崎一/河内大和/ウエンツ瑛士/谷田歩

 

 ヴァージニア・ウルフによる1928年の小説を戯曲化した芝居です(“オーランドー” という日本語表記が一般的だと思うけど、本作では “オーランド” )。小説は、16世紀後半にイングランドに生まれた貴族の息子オーランドの、16歳頃から、この小説が出版された1928年時点で36歳までの、数百年にわたる一代記で、男として生まれ、途中で女に変わります。今回の舞台では、オーランドは現代も生きている、みたいにしてあったような。

 小説自体は、ウルフの恋人だった女性ヴィタ・サックヴィル=ウェストがモデルで、ウルフにもヴィタにも夫がいたけど、2人は3年間ほど恋愛関係にあったらしい。ちなみに私は、小説「オーランドー」は読んでいて、ティルダ・スウィントン主演の映画「オルランド」と、多部未華子主演の2017年の舞台「オーランドー」は観てます。

 

 ネタバレあらすじ→麗しき少年オーランド(宮沢りえ)1586年16歳のとき「樫の木」という詩を書き始める。エリザベス1世の寵愛を受け、17世紀になって女王が死去すると、ロシア大使の姪と恋に落ちるが失恋。傷心のなか詩作に没頭するが、陰険な詩人ニックに酷評される。ルーマニアのハリエット公女から猛アタックを受けて辟易し、国外脱出しようと、外交官としてコンスタンティノープルへ行く。30歳を迎えた彼は政務に努めながらもロマの生活に憧れるが、暴動の最中に昏睡状態に陥り、目を覚ますと女性の身体になっている。自分の変化を受け入れたオーランドはイギリスに戻る。ルーマニアのハリー太公(かつてのハリエット)に再び付き纏われ、書き続けている詩集の出版をニックに今度は後押しされ、娼婦たちと遊び、18、19世紀を生き抜く。20世紀になり、36歳船長ボンスロップと結婚、子どもを産む。出版した詩集「樫の木」が文学賞を取る。戦争が始まり、空爆を受けた瓦礫の中から赤子の亡骸を拾い上げ、抱いて去っていく。終わり。

 

 えーと、脚本のスタイルが全く受け付けられなかったです😔 役者たちも演出も舞台美術なども良いのに、戯曲として自分に刺さってこなかった、ですね😑

 けっこうな長編の小説を上手く翻案してあるけど、2/3くらい(特に1幕の大半)は、オーランドが状況や心情を「説明」している=ほとんどオーランドのモノローグ、ナレーションです。そこで発せられるセリフは散文詩ふうで美しくはあるけど、「詩」として文字で読んでもいいのでは?と思えてしまい、「芝居」の形として面白くなかった(しつこく言う💦)。

 

 翻案された方はフランス文学者、詩人(ご専門は近現代フランス詩、演劇)だそう。フランスの戯曲の翻訳などはされているようだけど、なぜその方にイギリス小説の戯曲化を依頼したのだろう。普通に、演劇畑の専門家(=劇作家)に脚本化してもらうわけにはいかなかったの?と思ってしまう。

 また、最後、いきなり反戦っぽい方向に持っていくような終わり方で、バックに戦場の映像もけっこう映されるし、それってちょっと違うような気がしました。何故そっちに着地させる?🙄 まぁ、一人で喋りまくっていたオーランドが、瓦礫の中で声にならない叫び声をあげるシーンは印象的で、そこに何らかの意味は感じたけど、男でもあり女でもあるオーランドの、自らを追求する数百年の人生の旅……ジェンダーをめぐるアイデンティティーの模索、そこから人間の本質に迫る、というようなのを期待してたんで。

 

 オーランドを演じた宮沢りえさんは素晴らしかったです🎊 最初の登場では黒い上着と細身のパンツ姿で、舞台中央に置かれたドア枠のようなモノに寄りかかり、片脚を反対側の枠にかけたそのポーズが異常にカッコよく、男から女に変わっても、常に中性的な雰囲気をまとっている。ほぼ喋りっぱなしのセリフが詩的リズムを感じさせ、さまざまな人と出会い、別れ、時代の変化に揉まれ……という波乱の400年近い人生を、その時ごとに感情を交えて語っていく。そこに、大胆さ、可愛らしさ、迷い、達観などを見せ、時にシャープに、時にしなやかに動きながら、自分の在り方を見つめる、とても繊細な演技でした。

 

 4人の男性はシーンごとにオーランドの相手として役を演じるほか、ロマや娼婦たちになり、コロスとして物語を進行させていく。ナチュラルな演技をするわけではないので(自然な対話というのがほとんどない)結構大変だったんじゃないかな。河内大河さんの老エリザベス女王は怪演で、少年オーランドに欲情するところなど、もう不気味でした😅 山崎一さんも手堅い演技で、ヘボ詩人ニックの嫌味な感じなど、とても良かった。

 

 雲が動く映像がバックに映されるのが、時空の流れを感じさせてよかった。オーランドが女になると雲がうっすら紅色づいたりして。舞台下手の上方から大木の枝葉が垂れ下がっているのが象徴的です。オーランドが書いた詩のタイトル「樫の木」は原作では「The Oak Tree」で、オークはイングランドでよく目にする巨木です。寿命が長いのが特徴で、樹齢数百年というものも多く、それがオーランドの人生と重ねられるのですね。

 

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