橋之助/新悟/歌之助/芝翫/歌女之丞/中村福之助/松江
国立劇場恒例の歌舞伎鑑賞教室を観てきました。会場は、7月前半はティアラこうとう、後半は調布市グリーンホールと、国立劇場があんなことになってるんで公共の外部施設を転々と……。音羽屋型なので、宙乗りなど派手なケレン無しヴァージョンです。
午前Aプロ、午後Bプロで、佐藤忠信/源九郎狐はA=橋之助、B=芝翫、義経はA=歌之助、B=中村福之助、川連法眼はA=芝翫、B=松江。両プロとも静御前は新悟、法眼妻は歌女之丞。橋之助の忠信を観たかったのでAプロに行きました。良かったです~👏
橋之助の忠信/源九郎狐は今回が2度目で、2021年3月に南座の花形歌舞伎で既に勤めてるんですね(私は未見)。おそらく今回は、そのときよりレベルアップした演技だったことでしょう。前半に登場する忠信は端正で精悍な雰囲気。どっしりとした重さや大きさはまだ足りないものの、凛々しい武将っぽさが全身から感じられます。セリフもキッパリと聞かせてくれ、上手に引っ込むところでのキリッとした見得も良かった。
後半、源九郎狐になってからがとても見応えがありました。まず、その高い身体能力ですね。軽やかな動きとシャープな決めポーズ。静御前の「さてはそなたは狐じゃな?」で、藤色の小袖に長袴という姿のまま床下にストンと落ち、次の瞬間、白狐の毛縫の衣装になって登場するという最初の見どころでは、屋敷上手からサササーッと出てきて階段の手すりをポーンと飛び越えて平舞台にトン……と着地する、獣っぽい見事な動き。「涙ながらの暇乞い」から欄干渡りは、平舞台からヒラリと欄干に飛び乗ると腰をグッと低く落としてスススーと小走りする動きが軽やか。義経が登場してから、黒御簾の中にシュワッと消えるところも綺麗なダイヴでした。 足を伸ばした狐っぽい形や膝軸ピルエットも魅せます。 若さからくる身の軽さ俊敏さはサスガでした👍
そんな感じで身体の躍動感はあるんだけど、一方で柔らかさは弱めだったのと、狐っぽさ、特に子狐としての愛らしさはやや不足だったかな。鼓を賜って嬉しがるところは、いとおしげに愛でるというより激しく喜ぶ感じ。
でも、狐詞はあまりわざとらしくなく自然で聞きやすいし(もっと獣っぽさがあるといいのかもだけど、私はこの方が好み😌)、親を慕い悲しむ哀れさもよく出ていました。荒法師との立ち回りも勢いがあり、荒法師の膝に後ろから乗って立つ?のは初めて見たかも。私は荒法師の、あの独特の化粧と首の動きがとても苦手で、もう「怖い」というレベルです💦(悪夢に出てきそう😖)。なのでなるべく目に入れないようにし、橋之助に焦点を合わせて見るようにしましたよ。
新悟の静御前はしっとりした雰囲気があり、源九郎狐に哀れ味を覚えるところの、抑えた中に見せる感情表現がよかった。義経は歌之助。大きさはまだないですが、お顔が綺麗なので品の良さが感じられ、セリフにも格を乗せていました。Aプロでは中村福之助は亀井六郎なんだけど、成駒屋3兄弟は歌之助が女方をやれば兄弟でもっといろいろな狂言ができるのでは?と思うのですよ(例えば神谷町小歌舞伎とかでね)。そういうわけにはいかなかったのかな🤔 芝翫が法眼で、冒頭から舞台を重厚に引き締め、そのあとの若手たちによる芝居に、丸本の香りを残していった感じでした。総じて、大変面白く観ました🎊
舞台上方に義太夫のセリフが字幕で出るの親切だなと思いました(今までもそうだった?)。ただ、歌舞伎用の劇場ではないので花道は本舞台下手から斜めに壁ぎわに入る形で、距離も数メートルと短いし、しかも揚げ幕の音がチャリン……ではなく、ガラゴロ……っていうのがちょっと興醒め😅
この「四の切」の前に、いつも通り「歌舞伎のみかた」があって、MCは玉太郎。彼は今風のルックスで人気出そうなのに、若手役者たちの本流になかなか入れないのが気の毒です😢 もっとお役をいただいて舞台に出て欲しい。解説MCとしては喋りにあまり慣れていない(というか、アドリブ対応が苦手)風だった。橋吾が逸見藤太になって登場し玉太郎と絡むので、解説に歌舞伎色が加わる感じになり、良かったです。