東京バレエ団「ロミオとジュリエット」@東京文化会館 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 ジョン・クランコ

音楽 セルゲイ・プロコフィエフ

秋山瑛/大塚卓/宮川新大/樋口祐輝/安村圭太/生方隆之介

 

 日にちが経ってしまったけど、大塚卓さんロミオ役デビューの日に観てきました。東バのクランコ版ロミジュリ、以前にも観たよねー、と思ったら、以前どころかわずか2年前の2022年に観ているのをすっかり忘れている自分😓 しかも、それが東バ初演だったとは。そのときは安達&秋元ペアで観ていて、パリスが大塚さん。パリスは将来のロミオ候補の登竜門と言われているようで(その全ての人がロミオを踊るわけではないけど)、今回の大塚さん、満を持してのロミオですね。

 

 感動がじんわりと心に染み渡る、良い舞台でした~🎊 ジュリエットは秋山瑛さん。初演時、池本祥真さん相手にジュリエット・デビューしてるのね。繊細な踊り、豊かな表現、とってもいい。最初の乳母とふざけるシーンでは本当に十代半ばの少女だったのに、恋を知ってどんどん成長していくの分かります。寝室のPDDでの複雑な心理表現は大人のそれだったし、特にパリス(生方隆之介)への態度の変化において顕著。舞踏会の時点ではまだ若い男性の手を握ったことすらないのでは?と思わせる恥じらいを見せ、パリスにリードされて踊る清楚なPDD。後半になり、ロミオと愛を確かめ合い別れたあと、パリスとの結婚に「No !」という時の、キッパリした鋭角的な動きで見せる意思の強さ。悲痛な表情は見せるけど、それが却って固い決意を感じさせる。母や乳母にすがっても助けてはくれないと分かってからの熟考→自立→神父のところへ、という流れも丁寧に見せてくれました。

 

 大塚卓さんのロミオは、若さと勢いがありまっすぐな青年。例えば、マキューシオ(宮川新大)が殺されたあと、転がっている剣を最初に見たときは頭を横に振って気持ちを抑えるんだけど、2度目に剣を目にしたとき思わずそれ掴む。剣を手にしたことでふるいたち、ティボルトをグングンと追い詰めて刺し殺す。その勢いがすごくて、あの無鉄砲さがロミオなんだよね。そのあと、キャピュレット夫人(奈良春夏)が嘆く横で呆然と立ち尽くしていて、次第に、自分がしでかした事の重大さに気づくのね。剣をスルリと落とし、夫人の前に跪いて「殺してください」という感じで(アルブレヒトのように💦)胸を開くところ、潔さがあった。

 ダンスは大きくて伸びやかだしエレガンス味もある。ただ、初役初日だったからか演劇的な表現は手探りだったような。ロミオの成長を見せるのであれば、序盤で街の女の子たちやマキューシオたちともっと弾けてほしいかも。大塚さんは王子色が勝っている感じだったな。

 

 瑛さんと大塚さんから生まれるケミストリーは大変良かったと思う。華奢な感じの瑛ジュリエットと並ぶと大塚ロミオは包容力ある青年という雰囲気が増し、キュンキュンしてしまう😆 舞踏会での一目惚れシーンでは、大塚さんが積極的に瑛さんと近づこうとしていて、瑛さんはマスクを取った彼の素顔を見てハッとするものの、その自分の気持ちが何なのか分からないながら、少しずつロミオとの距離を縮めていく感じ。ロミオの大胆さ、ジュリエットの戸惑いと好奇心という対比が良かったです。

 

 バルコニーシーンは爽やかな夜風に包まれたような感覚に。クランコ版では階段がないのでロミオがジュリエットを抱いて下ろしたり上げたりするわけですが、2人に身長差があるためとても絵になるのですね。ジュリエットが石の台座に腰掛けてロミオのソロをキラキラした表情で見ているところが可愛い☺️ 大塚さんのソロはダイナミズムがあり、恋をした幸福感に溢れていて、それに呼応して瑛さんもだんだん自分を解放していくのが分かる。PDDはスピード感があり2人の喜び、感情の高揚が伝わってきます。リフトされた瑛さんが両手を胸の前で組む仕草は、初めて知る恋の世界に驚きと興奮を隠せないというキラッキラのポーズでした。

 

 寝室のPDDはロマンティックな雰囲気の中に別れの悲しみ、その先に何が待っているのか分からない不安などがちゃんと表現されていた。もっと一緒にいたい、見つかる前に去らなければならない、相反する想いに揺れ葛藤する2人の姿がドラマティック。リフトでは激しさは抑え気味で、その滑らかな絡みで互いの存在を確かめ合うようでした。

 

 ティボルトの安村圭太さんが本当にティボルトだった👏 尊大で、オレさま感あり、マキューシオが瀕死で喘いでいるのを立ったまま「自業自得だ」って顔して腕を組んでじっと見ているところゾクッとしましたよ。ロミオに刺された脇腹を触り手についた血を見てフッと笑う、倒れ込む時も笑ってロミオを指さしていて、最後まで不敵❗️「俺を殺したお前も、もう終わりだゾ」みたいな、声にならない叫びが聞こえたような。私は、マキューシオを殺してしまったことでうろたえちゃうのでなく、ヒールに徹底しているティボルトの方が好きです~。

 

 霊廟シーン、ロミオの後を追って自害したジュリエットは、横たわるロミオの手を取り自分の頬に当てて死んでいきます。美しいラストでした。

 ユルゲン・ローゼの舞台&衣装デザインはとても良いのですが、唯一とっても気になったのは、バルコニーと寝室でのロミオの白いシャツ。裾を縛るタイプなので首から胸、お腹近くまでV字に大きく開くのね。踊ると乳首も胸毛も丸見えで、興醒めどころかとっても下品😩 前開き部分を首下あたりから普通に紐で結ぶデザインにして欲しいです。

 

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