三月大歌舞伎 元禄忠臣蔵「御浜御殿綱豊卿」@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 🎊🎊🎊祝傘寿🎉🎉🎉 仁左さまの80歳のお誕生日3月14日に観劇してまいりました。仁左さまと同じ空間にいられたこと、その至芸を同時代に生で観られることに感謝です🙏 当たり役、当代切っての綱豊卿、何度も拝見していますが、いつになく綱豊卿のセリフの一粒一粒が胸に沁みました。そして、助右衛門の槍を交わす立ち回り(所作)の美しさに魅入りました。以下、ほぼ仁左さまのことしか書いてません😅🙇‍♀️

 

 まずは「御浜御殿松の茶屋」、橋を渡って現れたその酔態から香ってくる柔らかな色気。半開きにした扇子の扱い方まで優雅だわ✨ ふわふわとした様子ながら、本心は違う、みたいなのを感じさせるのが、助右衛門の名を聞いたとき。彼に隙見を許すと言いながら何か思いを巡らせているようだった。赤穂の浪人たちは仇討ちしたくとも吉良の顔を知らない→だからこの日に隙見をして顔を覚えておきたい=「あいつら仇討ちを決行する気だな、よしよし……」という感じね。浦尾の萬次郎さんが強めの意地悪さを見せていてとても面白く、孝太郎さんの江島も知性&理性を感じさせる良い側仕えでした。

 

 続く「御座の間」で、勘解由(歌六)に本心を漏らす「討たせたいのお。めでたく浪人どもに本望を遂げさせてやりたいのお」のセリフに綱豊卿の心情が滲み出る。勘解由に吐露しているとも、独り言として思わず呟いてしまったとも思える口調です。

 そのあとの、見せ場である綱豊卿と助右衛門(幸四郎)との対峙の場は、2人の丁々発止の中にみなぎる緊迫感、そこで聴かせるセリフの硬軟、緩急の塩梅が素晴らしい。仁左さまの、品格を失わない鷹揚に構えた態度、知的な眼差し、時々見せる苛立ちや怒りの発露に釘付けでした。浪人たちの本心が知りたい。でないと、自分は赤穂家再興を願い出ていいのかどうか、行動を決められない。そのじれったさも手に取るように伝わってくる。

 いつも面白いと感じるのは、綱豊卿が「じゃあ、お家再興を願い出てあげるから心配するな」とカマを掛けると、再興が叶ったら仇討ちはできなくなるので助右衛門が「お家再興は……😖」と最後まで言えずに泣き崩れたあとです。浪人たちの本心が分かってフッと柔らかい顔になった仁左さま綱豊卿が「お前は俺に憎い口を聞きおったぞ😏」とニコニコしながら言う、あそこがいいんですよね。あれは「やっぱりお家再興は願い出てなんかやらないよ(=だから仇討ちできるぞ、しなさい)」って言ってるわけで、この含みを持たせたやり取りが好き。セリフ術の巧みさも感じられます。でも助右衛門はその意味がわからず、それなら自分が今宵吉良を討つしかないと早がてんしちゃうのねー。

 仁左さまのセリフの流暢さ、奥に隠された本心を時々見せる絶妙な加減。それに対して、幸四郎さん助右衛門の無骨さと生々しさ。相手が大きすぎてまともに言い合っても敵わないのが悔しくて、必死になったりつい生意気な口を聞いたり、綱豊卿に「どうせ次期将軍を狙ってるんでしょ、それを誤魔化すため放蕩のふりしてるんでしょ」って嫌味を言ってしまったり、可愛くすらある。でも、ただ若いだけの情熱や勢いの良さで対峙するのではなく、心の底に武士の矜持を強く感じさせる助右衛門でした。

 

 最後の「能舞台の背面」の場、後シテ姿の仁左さまの麗しいこと💖 最初は目元しか出していないのに、その目の動きだけでも素敵だわ。桜の木を背に型を決めた時、上から桜の花びらがハラハラと舞い落ちるのが憎い演出。マスクを外してからの長ゼリフがまた聴かせます。助右衛門の性急さを戒めるところには優しさを、諭すところのセリフには赤穂への想いを感じました。

 今回はその最後で、綱豊卿が自分の身の上(今の状況)と大石内蔵助とを重ねていることがすごくよく伝わってきた。綱豊卿は助右衛門に言います「大石の放蕩三昧は仇討ちの本心がバレないように周りを油断させるためではない、浅野家再興か仇討ちかどちらが正しい道なのか悶々と考えているのだ(←大意)」と。そして、自分も同じなのだ、ということですね。自分が浮かれ遊んでいるのは、どうするのが一番良いのか悩み迷っているからなのだと。でも誰にも分かってもらえない、その孤独を抱えているように思えました。最後、太鼓の音をきっかけに「わしの出じゃ!」と爽やかに声を上げ、能の姿で戻って去っていくところ、とてもいいですよね👏

 

 しかしそれにしてもですね、ほんと、真山青果の戯曲ってセリフが面倒臭くてとても苦手。理屈っぽくて回りくどくて説明くさくて😔 小説にして読んだら面白く感じるかもだけど、芝居はもっとセリフを料理してあるのが好きなのです。仁左さまだから観るのであって、他の役者さんだったらゴメンナサイしますよ、これ。

 

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