映画ピーター・グリーナウェイ③「ZOO」(1985年)@シアター・イメージフォーラム | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 引き続きグリーナウェイの映画の感想です。この「ZOO」は、今回の4作品の中ではグリーナウェイの嗜好、こだわりが最も明確に表現されていると思う。シンメトリカルな構図、光と影の対比、生と死の境、美と醜のせめぎ合い……。でもって、とっても奇妙な映画なんですよ。動物の死骸が腐敗していく過程をタイムラプスで撮影することに取り憑かれた双子💦 というのがお話の主軸だから。想像するほどグロテスクではないものの、強迫観念みたいなものを覚える作品でした。

 

特集上映のフライアーの画像は「ZOO」

 

 ネタバレあらすじ→動物園に勤めている双子の動物行動学者。彼らの妻を乗せた車が交通事故に遭い、妻2人は死亡。運転していたアルバはお腹の子と片脚を失う。妻の死に触発された双子兄弟は生物の進化に関する映像を観ながら、生命体が腐敗していくことに興味を覚え、さまざまな動物の腐敗過程を映像で記録し始める。また両性具有のカタツムリに夢中になる。2人はアルバと会ううちに、子どもが欲しいと言う彼女に関心を抱く。アルバの担当医師は彼女に義足を試させるが、適当な理由をつけてもう一方の脚も切断してしまう。アルバは妊娠して双子を産む(父親は明らかにされない)。双子兄弟による腐敗過程撮影は apple から始まり、海老、魚、ワニ、白鳥、犬などと続き、zebra まで行き着く。その過程で食物連鎖に惹かれた双子は、その頂点に立つ人間の腐敗を撮影したいと思うに至る。アルバにその被写体となることを頼むが、アルバの夫となった男に拒否され、自分たちを被写体にすることに😱 屋外に撮影機材をセットし、薬物を注射して自殺し横になるが、増殖したカタツムリに機材が占領されて故障。自分たちの腐敗過程は記録できなくなったまま、横たわる2人の死体に夥しいカタツムリが群がる🐌 終わり。

 

 甲殻類→魚→爬虫類→鳥→哺乳類とエスカレートしていく腐敗の映像はとても奇妙な余韻を残します。それらの映像を挟みながらグリーナウェイが見せる画面には、シンメトリー(対称性、均整美)への執着、非対称や不調和に対する忌避感がしつこく感じられる。例えば、インテリアが完璧なまでに左右対称のアルバの部屋、全く同じポーズで並んで座る双子兄弟……。一方、アルバの残った片脚を切断した医師はフェルメールに執心していて、それは映画の中では光と影の手法に反映されている。グリーナウェイ自身がフェルメールの絵画が好きなのだそうです。とにかく物の配置、画面の構図がもはやアート、実に美しいです👏

 双子は最初は見た目での区別がつくんだけど、次第に髪型や表情が似てきて、最後には本当に瓜二つになる(実際に双子の役者さんが演じているようで、これはヘアメイクさんの技かと思います)。2人はもともと結合双生児で生まれ分離手術を受けたという設定なんだけど、再び1つになりたいと願い、ひとつのジャケットを着るなどして2人で1体であるように装うのです😓 2つのものが1つに統合することへの希求……2人が両性具有のカタツムリに取り憑かれるのもそこに繋がるような。

 原題は「A Zed & Two Noughts」=「Zと2つのO」ですが、2つのOは双子の兄弟オズワルドとオリヴァーの頭文字を指すのだろうか。Zは「2」にも見える。敢えて「ZOO」としないのは、その視覚的な読み替えが面白いから? どこまでもこだわりの強いグリーナウェイでした。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

海外映画ランキング海外映画ランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村