初春歌舞伎公演@新国立劇場 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 菊五郎劇団による恒例の1月歌舞伎公演、今までは復活狂言の通し上演というのが多かったけど、今年は古典と舞踊の3本立てというオーソドックスな構成。出番は少なくとも、創意工夫の面でアイディアを出すなどして復活狂言に取り組むには、菊五郎さんの体力的な問題があったのかなとか思ってしまいました。ただ、時蔵&梅枝親子のインタヴュー記事によると、今回の公演のテーマは「継承」だそうで(って、毎年テーマがあったのかい😅)、古典を次の世代に継承していくという気持ちを込めた公演なのかな。

 

「梶原平三誉石切」

菊之助/橘三郎/梅枝/彦三郎/萬太郎/亀蔵 

 ちょっと気になって調べてみたのですが、菊五郎さんは梶原を1回しか勤めてないんですね。1996年南座です。その後は2013年に大庭三郎をやっている(そのときの梶原はもちろん吉右衛門)。なので今回初役で臨む菊之助は岳父の型でやるの当然だけど、吉右衛門の当たり役をあれもこれもと抱えすぎのような気がしないでもない💦

 ともあれ、菊之助の梶原は風格こそまだないものの、端正で思慮深さ溢れる武将で、セリフも口跡良くたっぷりと聞かせ、大変に見応えがありました。刀を鑑定するときの目に真摯さがあり、刀に柄巻を施すゆっくりとした動きに二つ胴への(六郎太夫は斬らないゾ❗️)覚悟が感じられた。六郎太夫と梢が「生きている!」と喜び合っている横で、刀をまじまじと見つめながらその切れ味に息を呑んでいる梶原、個人的にはこの無言の演技がとても好き✨菊之助が美しいです。「胸の内では源氏の味方だ」と語るセリフには誠意が感じられます。いよいよ石切り。手水鉢の後ろ側に回り正面向きで切る羽左衛門型のほうがドラマティックだけど、播磨屋型だから後ろ向きで切るのね。切る前に刀を構えた菊之助の背中がググーッと大きくなったの見事でした🎊

 萬太郎の俣野五郎は勢いがありベリベリした感じがとても良い。萬太郎は決して大柄ではないけどとても大きく見えました。橘三郎の六郎太夫娘を想う気持ちや一途な忠義心が見えて味わい深かったです。梅枝の梢は感情豊かで老父とのやりとりに温かさが感じられた。正直いうと梢が、二つ胴に志願した父を止めようとヒステリック気味に泣き訴えるところ、ちょっと苦手なんですけどね💦 亀蔵さん呑助、酒尽くしは大いに笑わせてくれると思ったらそうでもなく、そもそも酒銘柄を入れてなくて😔語尾に「~ざけ(酒)」と付けて言葉遊びをする程度。亀蔵さんにしてはちょっとおとなしかったな。

 

「芦屋道満大内鑑/葛の葉」

梅枝/時蔵/権十郎/萬次郎

 梅枝ワンマンショーって感じで梅枝の確かな芸を堪能しました。前半で、白狐が姿を変えた葛の葉と、本当の葛の葉姫の2役を早替わりで見せるのですが、そこはまあ普通通りでして、続く「子別れ」のくだり(寝ている我が子に身の上を話す場面)でもう見入ってしまいました。奥から登場する梅枝は、狐を思わせる黄土色の衣装で、その胸元に左手を入れている。そこから出したその手は狐手になっていて、その後の狐っぽい柔らかな動きには品があり、且つ人外の存在であることも感じさせる。ここは他に登場人物はいなくて子供も寝ているだけだからモノローグで見せ聞かせるという完全に一人芝居なんだけど、情感溢れ、またどこか異次元的空気も醸し出していて素晴らしかった👏

 家を去る前に障子に書き残す、別れの和歌の “曲書き” は完璧👍「恋しくば 訪ねて来てみよ 和泉なる 信田の森の うらみ葛の葉」という歌です。基本、右手で普通に書いていくんだけど、最初の「恋しくば」のところは「恋」と書いたあと「ば」「く」「し」と下から上に書く、そのとき「く」と「し」の端っこがつながったところが涙の流れのような美しさ✨「信田の森の」では筆を左手に持ち裏文字で書くんだけど、それがまた見事な美筆。最後は筆を口にくわえて「葛の葉」と、力強く書き終えました。そうして息子を置いて信田の森に帰って行きます。

 最後は菊が咲き乱れる道中を舞台にした道行。白狐の葛の葉と、彼女を追ってきた2人(葛の葉姫に横恋慕している悪人の手下?)との立ち回りです。これは初めて見るなあ。狐っぽい立ち回りがちょっと可愛かった(そういうとこじゃないだろうけど😅)。ぶっ返りがあり、海老反りがありと、見せ場を作って幕でした。

 

 最後の「勢獅子門出初台」は踊りなので普通ならパスするんだけど、菊五郎さんがこちらにご出演なので続けて観劇。足腰が弱くなっているようで、立ったり歩いたりの際お弟子さんがちょっと支えていましたね。でも軽快な江戸っ子セリフは健在。というわけで楽しい公演でした。

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 歌舞伎へ
にほんブログ村

歌舞伎ランキング
歌舞伎ランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村