映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」(2023年) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

監督 ポール・キング

脚本 サイモン・ファーナビー/ポール・キング

ティモシー・シャラメ/ケイラ・レーン/ヒュー・グラント/パターソン・ジョセフ/マット・ルーカス/マシュー・ベイントン/キーガン=マイケル・キー/オリヴィア・コールマン/トム・デイヴィス/ジム・カーター/ローワン・アトキンソン

 

Merry Xmas🎄🎉🌟🎅

 ロアルド・ダールの1964年の小説「チョコレート工場の秘密」の前日譚です。小説ではウォンカの巨大なチョコレート工場が舞台ですが、本作ではウォンカがどうやってそのチョコレート工場を築くに至ったかを描いている。ダールは前日譚は書いてないので本作のストーリーは完全にオリジナルです。

 ダールの「チョコレート工場の秘密」は1971年にジーン・ワイルダー主演で、2005年にジョニー・デップ主演で映画化されていて、本作はジーン・ワイルダー版の姉妹編として捉えられている。それを思わせる音楽やテーマ的要素やキャラクター造形があります。でも、ワイルダー版映画を知らなくても全く問題なく👍独立した作品として観られる、どちらかと言うと子ども向けファンタジー映画で、早々にミュージカル舞台化されそう。

 

 ネタバレあらすじ(長い……🙇‍♀️)→ウォンカはマジシャンで発明家でショコラティエ。絶品のチョコレートを作ってくれた亡き母との約束「一流ショコラティエが集まる町のグルメ・ガレリア(高級アーケード街)にチョコ店を開く」という夢実現のためその町を訪れる。着いたその日に持ち金を失い、強欲な女将が営む宿屋兼洗濯屋に滞在することに。賃料を稼ぐため街角でチョコを売るが、街のショコラティエ3人組警察署長に営業妨害だとして売上を没収される。3人組はカルテルを組織してチョコ市場を独占(水で薄めたチョコを高額で販売)、チョコ好きの警察署長と神父をチョコの賄賂でまるめこんでいた。不正を記載した裏帳簿は教会の地下に隠してある。

 賃料を払えなくなったウォンカは宿屋の洗濯場で働かされる。夜になるとウォンカは自分の「ポータブルチョコ工場」で、食べると幸福感を覚える魔法のチョコを作り、洗濯場の仲間の協力で宿屋を抜け出しチョコを売る。一方、身長約20cmのウンパルンパがウォンカのチョコを夜ごと盗みに来るのにも悩まされる。ウォンカはかつてウンパルンパの国にある貴重なカカオ豆を盗んだことがあり、監視人だったウンパルンパは責任をとり豆を1000倍返しで取り戻す必要があるのだ。

 やがてウォンカはグルメ・ガレリアにある荒廃した店舗を手に入れ、売上金で改装し見事なチョコ店をオープン。しかし宿屋の女将がチョコに雪男の汗💦を入れたことで食べた人の髪やヒゲが伸びてしまい評判ガタ落ち。カルテル3人組は洗濯場の仲間を女将から自由にする条件でウォンカを町から追い出すが、なんとか舞い戻ったウォンカはカルテルの裏帳簿を盗むため教会の地下に潜入。3人組に見つかってチョコ撹拌器に落とされるがウンパルンパに助けられる。悪もんたちは捕まり、ウンパルンパはウォンカのチョコ工場の味見部門に採用される。おわり。

 

 ロアルド・ダール色は薄め。ダールが小説で造形した「チョコ工場主ウォンカ」はかなりシビアな視点をもち、時に子どもたちを懲らしめたり辛辣な態度をとったりするし、お話全体にイギリス人の好きなドライでブラックなユーモアが効いている。でも本作のウォンカは、エッジの効いた性格=俗に言う「変わり者」ではなく「皆んなをハッピーな気持ちにさせるチョコを売る」という希望と行動力をもち、純粋で無邪気で弱者に優しく、ひたすら楽観的でキラッキラに輝いている✨ なので本作をジーン・ワイルダー版の前日譚として捉えると、このウォンカがどういう事情であんな毒気のある大人になったの?って思っちゃいます。

 お話には社会風刺的なテーマも盛り込まれてる。カルテルを結んだ3人組は不正チョコの独占販売で暴利を貪り、清き起業家を抹殺しようとするし、賄賂をもらって彼らと結託するのが、人々の精神的拠り所であるはずの教会の神父と、悪を取り締まるはずの警察の所長だし、労働者は強欲な経営者に搾取されるし……と、まさに現代の映し絵です。

 また、チョコ店を出すまでの原動力は亡き母との約束だったり、洗濯場仲間の1人である孤児の少女が最後に母と巡り会えたり、「美味しいチョコの秘密は皆と分かち合うこと」という亡き母のメッセージがあったりと、ちょっと常套的な “絆の大切さ” も語られていました。

 

 ティモシー・シャラメは本作のウォンカにぴったり。歌も歌うけどミュージカル俳優っぽい歌い上げる風ではなく自然体での表現。ウンパルンパのヒュー・グラントが傑作。とぼけた感じなのに本人は大真面目という、どこか力が抜けた演技が最高です。カルテル3人組もそれぞれ個性があって面白かったし、悪徳神父はお久しぶりのローワン・アトキンソンで、出番は少ないけど出るたびにインパクトを与えます。宿屋の女将のオリヴィア・コールマンも豪快な悪役を愛嬌交えて演じてました。

 映像はファンタスティックでカラフルでスイートでマジカル。魔法のチョコレートを食べた人たちが空中を翔んだり、老朽化した店内がテーマパークのような売り場に変わったり、というところはヴィジュアル的見せ場です👏 撮影地はスタジオの他、オックスフォード、バース、セント・オールバンズ、海辺の町ライム・レジス、ロンドン郊外のリヴォリ・ボールルームなどだそうで、あー🇬🇧イギリス映画だな〜。

 

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