吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 夜の部@京都南座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 今回の南座遠征では、もちろん仁左さま由良助もだけど、いちばんのお目当ては「助六」にご出演の3人です。児太郎の揚巻男女蔵の意休隼人の福山かつぎ。まず、順調にいけば児太郎はいずれ歌右衛門を襲名するでしょう。亡くなった六代目歌右衛門は十二代目團十郎さんの海老蔵襲名でも、團十郎襲名でも、さらには十一代目の團十郎襲名でも揚巻を勤められました。なので私は、成田屋の襲名公演「助六」に成駒屋が揚巻でお付き合いしてくれるのはセットだと思ってる。十三代目の歌舞伎座での襲名公演ではそうならなかったのが残念だったけど(本来なら福助さんが……😢)、それが南座で実現しました。

 また、男女蔵もパパ左團次の持ち役だった意休をいつか継ぐ必要があったし、今まで「助六」の舞台にはご縁がなかった隼人が福山かつぎでご出演。というわけで、3人がそれぞれ大事なお役に初役で勤める。初役の舞台ってどんな役者さんにも一生に1度しかないわけだから、今回の「助六」はすごく貴重な公演だと思うのですよ✨

 

「衹園一力茶屋(七段目)」

仁左衛門/孝太郎/芝翫/莟玉/錦吾/松之助/進之介/隼人/染五郎

 まずは「七段目」からね。仁左さま由良助、何度観ても良いわ~☺️ 仇討ちへの固い決心を胸に、茶屋で遊興に耽るそのはんなりした風情、所作のたびにこぼれ落ちる色香。ふわふわした酔態から一瞬真顔になって鋭い視線を向け、身請けされ3日だけ囲われれば自由にしてくれると知って喜ぶおかるを見てそっと顔を逸らして涙をこらえ、九太夫を打ち付けながら、浪士を思う気持ちを吐露する時の泣きや、生臭ものを食べさせられたことへの激しい怒りを見せ、そこに仲居たちが出てくると再びサッと酔った面持ちに戻る。剛柔演じ分けによる喜怒哀楽の自在な表現に、そして、どんなときでも失わない品性と風格に、今回も見入りました。それにしても仁左さまの流し目は甘い凶器ですな~💓

 平右衛門は芝翫さん。奴(やっこ)役は似合うし、熱血だけどそれが却って小者っぽさを出していたし、深い情の見せ方も良かったな。孝太郎さんのおかるも遊女としてのアダよりはむしろ庶民感があり、お似合いの兄妹コンビでした。

 錦吾さんの斧九太夫は手慣れて安定。そういえば、お座敷での仲居たちによる見立てがなかったな。最近これカットされることが多いような。由良助の真意を聞きに来た三人侍の1人が進之介なんだけど、しばらく見ないうちにお顔がふっくらしていて、若き日のパパ我當さんそのまんまでびっくりでした😳 役者ぶりも上がっていて、もっと歌舞伎の舞台に立てばいいのになー。他の2人は隼人染五郎でイケメンの並びは眼福ですね。

 

「口上」

團十郎/新之助/仁左衛門/梅玉、ほか

 前列上手から、仁左さま、團十郎、新之助くん、梅玉さん、後列に成田屋一門および市川家に所縁のある役者さんたちが並びました。仁左さまは「先代とは夏雄ちゃん孝夫ちゃんと呼びあう間柄で、稽古の合間には相撲を取ったりしてよく遊んだ」と。す、すもう😅 仁左さまと十二代目の体格を想像すると、仁左さま負けっぱなし……いや、十二代目のことだから3回に1回くらいはワザと負けてたかも。そして「新之助んくんは芸感がよく大人顔負け‥……」と言葉をくださいました。梅玉さんは「先代とは同年齢の同級生。自分の娘と新・團十郎も同級生」と言って縁の濃さを語り、新之助くんの芸の上達をベタ褒めでした。口上のあと市川團十郎家が代々受け継いできている「にらみ」の披露。巻の乗った三方を運ぶお役は男寅くんが勤めました。男寅くん良いお役をもっといただけるといいなあ。

 

「助六由縁江戸桜」

團十郎/児太郎/男女蔵/扇雀/鴈治郎/芝翫/歌昇/隼人/門之助/市蔵/九團次

 いや~、大満足ですよ🎊 揚巻は壱太郎とのダブルキャストで、14日から児太郎にバトンタッチ。私が観た回はまだ数日しか経ってないのだけど、初役とは思えないとても立派な揚巻でした。花道道中では足の運びが少し……あまりちゃんと「八文字」を踏んでなかったようだけど、ぽってりした色艶と華やかさがあり、セリフ回しには最高ランクの遊女としての矜持が感じられた。意休に対する悪態には力があり、高笑いのところは福助さんそっくりでちょっとウルッとなりました😢 回を重ねて貫禄を付けオーラをまとっていってほしい。

 男女蔵の意休は期待通りで、悪役や憎まれ役の経験を積んでいるだけあって良い敵役でした。声など口跡がますます左團次さんに似てきて憎々しくも威厳があり、化粧映えのする悪党づら。派手な衣装に負けることなく大きくて、所作にも力があった。今後は持ち役にしつつ、もっともっと憎たらしい大きな意休になってくださいな。

 隼人の福山かつぎは生きのいい爽やかな江戸っ子でした。隼人の福山かつぎはこれが最初で最後かもしれないけど、是非いつか助六を演っていただきたいですね🙏

 團十郎の助六は、もう完璧に板についているというか、安定の江戸の花。歌舞伎好きな方はそれぞれ自分の贔屓の役者の助六を推したいだろうけど、やはり團十郎は圧倒的な華やかさと存在感があるし、特徴ある衣装に負けないほどの見た目の濃さがある。出端の所作は美しくキメの形も見栄えがします。本舞台でのつらねは歯切れが良く、セリフの癖は助六だとあまり目立たない。白酒売り(扇雀)とのやりとりや股くぐりのところも面白かったです。

 傾城は廣松/玉太郎/吉太朗/芝のぶの4人でみなさんもちろん綺麗なんだけど、廣松がすっきりとした美しさで惚れ惚れ。そうそう、幕開きの口上は染五郎で、大役を立派に果たしていました。

 

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