作 アリス・バーチ
演出 生田みゆき
栗田桃子/吉野実紗/柴田美波/鈴木弘秋/山森大輔/渋谷はるか/沢田冬樹/目黒未奈/梅村綾子/磯田美絵/村上佳
文学座アトリエの会による公演です。サブタイトルは「死と生をめぐる重奏曲」。母~娘~孫娘という3世代の女性、異なるタイムゾーンにいる彼女たちの物語が1つの舞台の上で同時に展開していく。初演は2017年ロンドンです。
概要のみ(ネタバレ)→自殺願望のあるキャロルが自殺未遂を起こして病院から退院。やがて娘アナを産むが漠然とした不安は消えず、自殺してしまう。そのアナは薬物中毒に苦しんでいて、過剰摂取の末に病院に運ばれ退院。やがて娘(キャロルから見たら孫娘)ボニーを産むが精神を病み、自殺してしまう。キャロルもアナも電気痙攣療法(精神疾患治療の一種)を受けていた。医者になったボニーは同性愛者で、人との関係に慎重。祖母→母と続いた自殺の連鎖を自分で終わらせたいと、子宮摘出手術を受けることを望む(実際に受けたか否かは不明)。彼女は祖母から代々受け継いできた “郊外の家” を売ろうと考えている。終わり。
最後は赤子を抱いた女性とボニーが “郊外の家” のことで話しているところで終わる……あの女性は誰だったんだろう🙄 キャロルもアナも、子を儲けることに漠とした恐れを抱いているようだったけど、ボニーは同性愛者だから子を産むことはほぼないと思われる、なのになぜ子宮摘出を希望するのか疑問。象徴的な意図としては理解できますが。
舞台は上手/中央/下手と3つに分けられていて、それぞれのエリアで母・娘・孫娘の(同じような年齢時の)10年くらいの人生が、夫や恋人や親族や友だちや仕事仲間などとの会話を通して同時進行的に展開します。時々、3人が同じ質問を同時に発したり、相手の異なる問いかけに3人が同じ返事を同時に発したり、3人のセリフが1つの文として繋がったりと、3人の言動が重奏することがある。そこに意味を読み取ることができます。
子どもの頃に母が自殺するという体験をした娘は、それをどう受け止め背負って人生を歩むのか、自分にも自殺願望が湧くのでは?というトラウマ、出産によって命をつなぐ役割を負う女性の希望と重圧など、テーマは興味深いです。
でも残念ながらそれ以上のものは感じず、自分のツボに深くはハマらなかったな🙇♀️ そもそも、異なる時代における3人それぞれの人生を同時進行で見せるという芝居の構造の面白さをあまり感じなかった。また、フライヤーに「今、生きづらさを感じる私たちの、未来への小さな突破口になりますように」という制作側のメッセージがあったけど、なぜこの作品が “生きづらさを突破する手がかり” になり得るのか???でした💦
水に関連した言葉(バスタブ、海、水泳、魚などなど)が頻繁に出てきたり、ヴァージニア・ウルフを連想させるセリフが出てきたりします。作者のバーチはウルフの影響を受けているらしい。ウルフは同性愛者で躁鬱病の症状があり最期は入水自殺したんですよね。私は、理由は上手く言えないけど、ウルフという文学者およびその作品(実験的で、いわゆる意識の流れ手法ってやつ)がちょっと苦手なのです😓 本作を距離を置いて観る姿勢になったのは、そのウルフの影が付きまとっているように感じたせいかも。考えてみるとこの作品はウルフっぽい手触りがあったし、構造的に映画「めぐりあう時間たち」に似ていないでもなかったな。