「ジェーン・エア」@東京芸術劇場プレイハウス | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

原作 シャーロット・ブロンテ

脚本/作詞/演出 ジョン・ケアード

作曲/作詞 ポール・ゴードン

屋比久知奈/井上芳雄/上白石萌音/春風ひとみ/春野寿美礼/神田恭平/仙名彩世/大澄賢也/樹里咲穂/中井智彦

 

 いろいろ思うところあって観ないでいたんだけど、配信されると知り、思い直して視聴することに。タイトルロールWキャストのうち、ジェーンは屋比久知奈さんがピッタリと思ったので、この回を選びました。

 孤児の家庭教師ジェーン(屋比久知奈)と暗い過去を背負う偏屈な中年男ロチェスター(井上芳雄)との愛の成就の話だけど、小説が書かれた1840年代のイギリスでジェーンのような女性が置かれた社会的立場、それに反発し自由を求めて自立しようとした女性を描いた物語でもあります。

 

 原作は読んでいるけど細かいところは忘れてる~💦 大部の作品(私が持っている新潮文庫だと上下巻すごく小さい字で全860ページほど😓)で、プロットは割と入り組んでいるのを上手くまとめてあると思いました。小説はジェーンによる一人称語りスタイルで、このミュージカルでも、アンサンブルたちがジェーンの言葉で気持ちや状況を語るという手法を取っている。丁寧に説明しすぎに感じる時もあったけど、分かり易いことは確かですね。

 序盤でヘレン(上白石萌音)の存在と彼女の信念を強調することで、ヘレンに影響を受けつつも対照的な性格のジェーンの生き様が際立ち、終盤でのジェーンの心の変化とうまく結びつけてある。また、セント・ジョン(中井智彦)とのくだりは、設定を原作とは少し変えてシンプルに処理してあり、お話の焦点がボケずに済んだと思いました。

 

 舞台中央にイングランド北部を思わせる寒々しい大地の風景を作り、その両サイドに室内風の背景を配した舞台美術。荒野は時々ソーンフィールド・ホールの庭になったり背景を暗くして室内に見せたり、左右のエリアはそこに家具を置くことで居間や寝室などさまざまに変化する。セットチェンジせずに瞬時に場面転換できる上手いアイディアです。背景が真っ暗になることが多いのが気になったけど、作品のイメージには合っていたのかも。

 

 屋比久知奈さんのジェーン、予想通りとてもよかった。身寄りも美貌もお金もない彼女は身につけた知識だけを武器に生きていきます。現状に満足せず、たとえ世間のしきたりから外れていようと、自分が求めるものを手にしたい、自由が欲しいと……。自分なりの信念があり強くて頑固で真っ直ぐ。それを表現できる資質を知奈さんは持っていると思った。彼女の歌声の力強さには、そうした気持ちがこもっていました。ロチェスターへの感情が反発から好奇心を経て愛情から慈悲へと変わっていくところも上手く出ていたと思う。

 欲を言えば、強さの陰に隠れたもろく弱い部分がもう少し繊細に出ていたらよかったかな。たとえばロチェスターに愛されていないと思ったとき、道を見失って崩れそうになっているとき、あるいはセント・ジョンにプロポーズされて心が揺れるときとか。

 

 さて、ロチェスター役の井上芳雄くんです。私はミュージカル俳優では芳雄くんイチオシなのですが(全部観ているわけではないけど🙇‍♀️)、本作の配役を知ったとき、さすがに、いや芳雄くんはロチェスターのニンではないだろうと思ったわけですよ。で、やっぱり……でした💦

 ロチェスターは粗野で高慢、無愛想。エレガントでもなく、複雑な過去を背負った、すさんだ雰囲気の中年男……なわけだけど、芳雄くんはその資質からして、どうしても、どんなに「それらしい演技」をしても、そう見えないんですよね😔 線が細くスウィート&スマートだし、品が良すぎるし、泥臭さや鬱屈した翳りが見えない。仕方ないんだけどねー。だからロチェスターの存在がちょっと弱いのです。ジェーンに荒っぽく接するところやブランチ(仙名彩世)への冷たい態度、終盤での絶望の慟哭とか、もっとザラザラした感触が欲しい

 やっぱりミスキャストだと思います。初演時の橋本さとしさんのような役者さんがやるべきでしょう。ジョン・ケアード氏は芳雄くんと何度か一緒にやってきているとはいえ、そういうの感じなかったのでしょうか。それでも芳雄くんは歌が本当に上手いから、歌い出すとほぉ~😍っと聞き入ってしまうんですけどね。

 

 いろいろ書きましたが、最後は涙がブワーッと出てきてしまった😭 芳雄くんの歌がそうさせるのかも。ロチェスターと結婚した後のジェーンのセリフが自信に満ちていて希望を感じさせました。赤ちゃんがが最初と最後に出てくる見せ方は、円環が閉じる感じがよく分かって面白かったです。それにしても「許すのが正義(ヘレン談)」とはね……なかなかそこまで考えられないですよ、自分は😅

 

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