TV視聴「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」@東京芸術劇場(2022年12月収録) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 モリエール

演出 シルヴィウ・プルカレーテ

佐々木蔵之介/竹内將人/ 大西礼芳/加治将樹/天野はな/城晴彦/手塚とおる

 

 3月上旬にBSプレミアムで放送されたのを録画視聴しました。昨年2022年はモリエール生誕400年ということで、モリエールの作品があちこちで上演されたようですが、私は今まで全く観たことありません。今年1月に同じくBSで放送された五戸真理枝演出「人間嫌い」が初めて。今回の「守銭奴」(1668年初演)は演出がプルカレーテなので観ようか迷っているうちに終わってしまったので、放送されたのは有り難かった。

 

 ネタバレあらすじ→舞台はパリ。リッチなのに度を超えたケチのアルパゴン(佐々木蔵之介)息子クレアント(竹内將人)娘エリーズ(大西礼芳)と暮らしている。2人にはそれぞれ相思相愛の相手がいるが、アルパゴンは自分が選んだ相手としか結婚させる気はない。娘エリーズは執事ヴァレール(加治将樹)とラブラブだが、アルパゴンは娘を裕福なアンセルム(城晴彦)と結婚させたい。アルパゴン自身も若い娘との結婚を考えていて、相手は息子クレアントの恋人マリアーヌ(天野はな)だった。父と息子は仲違いする。

 そんな時、仕事をクビになった従僕のラ・フレーシュ(手塚とおる)がアルパゴンの大金を盗み出し、クレアントと一緒に家を出る。アルパゴンはショックでパニック状態に。そこにアンセルムがエリーズとの結婚のために現れるが、なんと、ヴァレールとマリアーヌは16年前に別れ別れになったアンセルムの子どもだった😁 盗まれたお金が返されて機嫌を直したアルパゴンは、費用はアンセルムが払うのを条件に子どもたちの結婚を許す。皆がお祭り気分で喜ぶのをよそに、アルパゴンは大金を抱いて去っていく。おわり。

 

 1幕は舞台が3つの部屋に分かれていて、壁となる仕切りはペラペラした半透明ビニールのようなもの、そこに柱やドア枠などが雑に描いてある。家具は椅子だけ。全体にダークな色調で寒々しい空気に包まれています。アルパゴンのお金が盗まれて2幕になるとビニールの壁や背景幕がなくなり、舞台は荒涼とした野原みたいな風景に変わる。どちらもアルゴパンの心像を表しているかのようです。

 また、1幕ではリアルな衣装なのに対して、2幕になるとカーニバル風の衣装を着た人たちが出てきたり、エクス・マキナ的存在になるアンセルムもカーニバルの衣装になったりと、プルカレーテらしい非現実的な演出が全開します。

 

 本作は金持ちを風刺した喜劇だと思うので、アルパゴンの人間性について……例えば、欲の塊だけど実は一番人間らしいとか、猜疑心が強いのは弱さの裏返しでそれが却って哀れさを誘うとか、自分の子どもすら信用できずに孤独と戦っているとか、真面目に解釈する必要はないですね😑 ただ、プルカレーテの演出では、笑いはブラックな味が濃厚。アルパゴンが「大地に潜っていく」終わり方は、カーニバル(祭り)が終わった後に襲ってくるどうしようもない虚しさを誘いました。

 

 アルゴパンの佐々木蔵之介さんが、役をとっても楽しんで演じている風で、ケチぶりがぶっ飛んでいて大変良かったです🎉 アンセルムの他に結婚仲介役みたいな女性との2役を演じた城晴彦さんがまた素晴らしい。低く伸びやかな声と巧みなセリフ回しが観客の耳目を引きつけます。最後のエクス・マキナっぷりも見事でしたラ・フレーシュ役の手塚とおるさんも一筋縄ではいかない執念深そうな従僕を面白おかしく演じていた。

 2組の恋人たちはセリフがちょっと感情過多に感じたんだけど、大人たちとの対比なのだろうか? もう少しドライな感じのほうがいいように思いましたが、どうなんでしょう🙄 マリアーヌの妙に乙女すぎるキャラ造形はちょっと苦手でした。

 モリエールの作品はまたいつ観る機会があるか分からないので、今回観られてよかったです。そしてやっぱりプルカレーテの演出、好みだ~😊

 

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