シネマ上映 ロイヤルバレエ「ダイヤモンド・セレブレーション」(2022年11月収録) | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 ロイヤルオペラハウスのファン組織「Friends of Covent Garden」の創設60周年を祝うプログラム。芸監オヘア氏が、バレエ団の歴史をたどり未来を展望すべく選んだ作品のほか、フレンズ会が望んだ演目も入っているらしい。第一部はアシュトン、マクミラン、マクレガー、ウィールドンというバレエ団を牽引してきた振付家による作品(リアム・スカーレットの作品は入っていない)。第2部は本公演のために創られた新作で、4人の若手振付家のうち3人はロイヤルバレエ団以外から。第3部フィナーレはバランシンの作品で締める。とても贅沢で楽しいプログラムでした。以下、ネガティヴな感想もあります。

 

「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」より 振付:フレデリック・アシュトン

アナ=ローズ・オサリヴァン/アレクサンダ―・キャンベル

 これはフレンズ会が創設された1962年と同じ頃(1960年)にロイヤルで初演された作品、というコメントがありました。記念すべきガラ公演の初っ端を飾るに相応しい joyful な作品ですが、アナ=ローズの溌剌としたポワントワークには魅せられたけど、申し訳ないけどアレックスがちょっと苦手で💦ボーッと観てしまった。

 

「マノン」より 振付:ケネス・マクミラン
高田茜/カルヴィン・リチャードソン

 寝室のPDDです。茜さんはマノンのニンですよね。一見すると少女っぽいけど実は成熟した大人の女であり、したたかさを感じさせ、時々見せる蠱惑的な表情がとても良いです。ダンスも繊細で、個人的には背中が見せるラインが綺麗だなと。全幕も観たくなる表現力でした。マクレガー作品が似合うカルヴィンはてっきり次の「クオリア」で踊るのかと思っていましたが、デ・グリューで来ました~。ロイヤルでプリンシパルになるには物語バレエも踊れなければ、ということでしょう。抜粋部分は踊ったことあるのだろうか? 「マノン」でいきなりこのシーンというのはやりにくいと思うし、実際、感情のほとばしりというか、マノンに夢中…振り回されているのも知らず……というような、感情表現がまだ不完全燃焼気味だったけど、悪くなかった。全幕デビューを期待したいです👍

「クオリア」 振付:ウェイン・マクレガー
メリッサ・ハミルトン/ルーカス・ビヨンボー・ブレンツロド

 は~、凄カッコいい💓 マクレガーが2003年に初めてロイヤルに振付けた作品だそうです。人間の身体能力、身体構造の可動能力を、極限のその先まで追求するような作品。本当に好きだわ。今回もメリッサ出色の出来。まさにワトソンの女性版。身体の動きはもちろん、無機質だけど、艶かしさまで行かないスレスレのところでの色っぽさがこぼれる。彼女は感情表現がイマイチ薄いんだけど、それがいい具合にマクレガー作品では機能していると思います。一方ルーカスくんはかなりナマの感情を見せていて、時に色気も。ワイルドと言ってもいいマスキュリンで力強いバネを感じさせるダンスだった。2人が時々見せる陶酔したような表情にハッとしたし、最後、抱き抱えて去っていくところでなぜか胸熱に。だからさ、来日公演でもマクレガーのこういうのをやってほしいんですよ。(こっそり言いますが)「田園の出来事」はイラ・ナ…イ……💦(←個人の好みです🙇‍♀️)。

「FOR FOUR」 振付:クリストファー・ウィールドン
マシュー・ボール/ジェイムズ・ヘイ/マルセリーノ・サンベ/ワディム・ムンタギロフ

 本公演にあたって、2006年初演のオリジナル・キャストに資質的に近いダンサーを選んだらしいです。それと照らし合わせるとマシュー(=イーサン・スティーフェル)、ジェイムズ(=ヨハン・コボー)、マルセリーノ(=アンヘル・コレーラ)、ワディム(=ニコライ・ツィスカリーゼ)となります。ナルホド。各ダンサーの特徴がちょこちょこ垣間見える振付。マシューの手堅さと自由な伸びやかさが調和したダンス、ジェイムズの軽やか且つ正確なステップ、マルセリーノは電気が走るようなスピーディーに弾ける踊り、そしてワディムのエレガントで華麗な正統派ダンス。彼らが個性を出しながらひとつの塊として調和していく感じ。欲を言えば、全体的にソロを繋げた感じだなので、せっかく4人のトップダンサーが踊るのだから、複数が絡んで踊るところがもっとあるとよかったな。

「SEE US!!」 振付:ジョセフ・トゥーンガ
ジョセフ・シセンズ/アシュリー・ディーン/マリアンナ・ツェンベンホイ、ほか

 好みではなかったです😔 ヒップホップ系の振付家らしい。集団が同じ振付で踊るところはクリスタル・パイトっぽい。拳を振り上げたり銃を構えてこちらを狙ったりという振りがあり、若者が怒りをもって何かにプロテスとしているらしい。表現が直接的・具体的で分かりやす……すぎる。メッセージ性の強い作品は、リアリズムの中にも象徴性や抽象性を込めてあるものが好きです。

「ディスパッチ・デュエット」 振付:パム・タノヴィッツ
アナ=ローズ・オサリヴァン/ウィリアム・ブレイスウェル

 本公演のために創られた新作の中ではこれが刺さりました🎊 タイトルから判断するに、(相手を制して)前に進んでいくことを表現したのかな? とにかく、機械的な動きなど、振付の予測できない意外性、ちょっと妙で不思議な動きが突然入ったりするところに惹かれる。最後がすごく変だったし😆 その意味不明の面白さが刺激的アナ=ローズの回転のキレや力のあるポワントが素晴らしく、ロボットのような動きが面白い。ウィリアムはソフトなイメージがあったんだけど、ここでは意外にもクールで硬質な動きを見せていて新鮮でした。プロセニアムアーチの両サイドにダンサーが座って互いを見つめ合うというシーンも意表を付く展開。舞台後方のセットが何をヴィジュアル化したのかよく分からなくてすごく気になってしまった。テッド・ハーンの音楽も好みでした。

「コンチェルト・プール・ドゥ」 振付:ブノワ・スワン・プフェール
ナタリア・オシポワ/スティーヴン・クレイ

 ダンサーは表現力もテクニックもあって素晴らしいのに、なぜかイマイチ感動しなかった。サン=ブルーの音楽が、何かベタすぎて感傷的すぎて気恥ずかしくなってしまい😓 そのせいもあって気持ちが奥に引いた。オシポワとマクレイの表情から推測すれば、愛にまつわる苦悩、悲しみ、別れみたいな感情を表現しているようす。でも、振付に目新しさが感じられず、よくある作品というふうで新鮮味がなかったです。

「プリマ」 振付:ヴァレンティノ・ズケッティ
フランチェスカ・ヘイワード/金子扶生/マヤラ・マグリ/ヤスミン・ナグディ

 ウィールドンの、男性4人の踊り「FOR FOUR」に対を成す作品として、女性4人のための作品の創作を、ロイヤルのダンサー、ズケッティが任されたのだそうです。それぞれのキャラに合わせてデザインしたという衣装のビジュアル効果もあって、華やかでリズム感の強い作品だった。ヤスミンは複雑なステップにも盤石なテクニックを見せ、細かいところまでピシッと決まる。やはりトップとしての風格がありました。金子さんは衣装のせいもあると思うけど、手脚の動きの美しさが際立ち、とてもエレガントで華やかなダンス。マヤラはキレの良い動きで、プリンシパルとしての存在感を見せました。フランキーの踊りはやや印象が薄かったな。衣装はロクサンダ・イリンチックという著名な?デザイナーが担当したそうで、すごくユニークで面白いデザインだけど、ダンスの衣装としてはやや主張しすぎのような。ダンサーの踊りを見ながらも、つい目が衣装に移ってしまうことしばしば💦

「ジュエルズ “ダイヤモンド” 」 振付:ジョージ・バランシン
マリアネラ・ヌニェス/リース・クラーク

 群舞も入ったフルヴァージョン。もうネラさま最高、絶好調🎊 ステップに独特のメリハリがあり、音を自分の中に入れて自在に操っているふうに見える。そして、あの温かみと幸福感ある表情は、抽象バレエにも人の心を要求するロイヤル好み。踊る喜びを刻んでいるようでした。リースくんに支えられ、かしずかれるところでの至福の笑顔よ😊 リースくんもよく喰らいついていて(ほぼ😅)遜色ない踊りだった。身長があるから見栄えするし、型を決めたポーズが映え、ラインの美しさも際立ちます。リフトも軽やか~。輝ける姫ネラさまを守る騎士のごとくのエスコートぶり。ソロは力強くてダイナミック。グランドピルエットも見事でした。あとは、柔らかな滑らかさがあるといいなというのと、着地の時の音がもう少し小さければなー。おそらく重心の取り方がまだ完璧ではないのかも。

 群舞の踊りでは、例えば腕脚の上げ下げとかがイマイチ揃っていないのは、そこに重要度をあまり置かないロイヤル仕様でご愛嬌かな。フォーメーションで見せる華やかさは祝祭感を煽り、本公演のフィナーレに相応しい一幕でした👏

 

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