新国立劇場バレエ「ニューイヤー・バレエ」@新国立劇場オペラハウス | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

「A Million Kisses to my Skin」

振付 デイヴィッド・ドウソン/音楽 ヨハン・セバスティアン・バッハ

米沢唯/渡邊峻郁/柴山紗帆/速水渉悟/小野絢子/中島瑞生/五月女遥/中島春菜/根岸祐衣

 2000年にオランダ国立バレエで初演された作品で、新国立劇場バレエがドウソンの作品をレパートリーにするのはこれが初めてだそうです。バッハ「ピアノ協奏曲第1番ニ短調」の全3楽章を使っていて、その急・緩・急のリズムに乗せたシンフォニックバレエ。特に最初と最後はハードな振付で運動量が半端じゃない。舞台奥で後ろ向きに立っているとき特に男性たちが肩で息してるのが生々しく、トゥールアンレールのときに飛び散る汗がキラキラとライトを反射していました。振付はクラシックのテクニックを基本にしつつ、その枠を外して自在な動きを見せていた。

 唯ちゃんと渡邉くんのデュエットは小気味よく、絢子さんの、音と動きとの一体感がいつもながらとても気持ち良かった。速水くん、シャープな動きからピッとポーズを決めるところやフ…とオフバランスになる瞬間がとてもいい。そしてついつい五月女さんに目がいってしまう。手先まで音楽を感じているような繊細な動きでした。最後に9人が並んで踊るところ、揃っているようで揃っていなくて、でも揃っていて、個々のダンサーが自由に音と遊びながら踊っている感じがとても清々しかったです。

 ちなみに13日、14日と観たのですが、これ観れば観るほど味が出るというか、何度観ても飽きがこない。マチネで踊った奥村くんは期待通り。シーンによって表情も変えていて、どんな作品でも自分のものとして一旦消化して踊ってるなあと今回も納得です。

 

「眠れる森の美女」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ

振付 マリウス・プティパ/音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

ヤスミン・ナグディ/マシュー・ボール

 キラッキラでした~✨✨✨ ロイヤル仕様だからやり過ぎず見せびらかさず、あくまでも端正&上品&高貴ヤスミンのオーロラ余裕でパーフェクト。本当にフェアリーでプリンセス……というよりクイーンだった。それでいて体幹が強いというのかつま先から頭頂までしなやかな芯がスッと通っている感じ。どのようなステップからでも、キメのポーズがすべて完璧な形を作ったまま1ミリも揺るがないし、いったん動くと柔らかくシナるようなラインを描く。そしてあの、ゴージャスと言ってもいい煌めきを湛えた表情。素晴らしいです。

 マシューの王子を見るのは久しぶり。陰りのある役が好きだけど、やっぱり王子も眩しかった。初日はやや抑え気味に感じたな(新国は初めての舞台だし)観客との感触を確かめているのかなと。2日目は随分リラックスした感じで王子オーラ全開でした。ガラ風抜粋上演だからマネージュやジャンプでテクニック見せつけてもいいのにとも思ったけど、マイルド&ノーブルに徹していて、ピルエットはとても美しかった。そしてオーロラをエスコートする所作がとても紳士。2人の相性はとても良くて、シンクロして踊るところも影のように肢体が同じ動きと角度なの、素敵でした。体感として、一瞬で終わった感じでした。この2人で「眠り」全幕観たいけど、まずは来日での2人の「ロミジュリ」とても楽しみだわー😊

 

「ドン・ジュアン」より抜粋

振付 ジョン・ノイマイヤー

音楽 クリストフ・ヴィリバルト・グルック/トマス・ルイス・デ・ビクトリア

アリーナ・コジョカル/アレクサンドル・トルーシュ

 コジョカルが深かったー。しばらく見ないうちに二皮くらい脱皮していて、ダンサーというより表現者になっていた🎊 若い頃のキュートなコジョカルを思うと、とても感慨深いです。彼女が登場した途端に、その場の空気が完全に変わった感じがした。一瞬で物語の世界を作るあの存在感、何だろう。コジョカルは白衣の貴婦人であり同時に死の天使でもあるという役柄らしい。透明感があるのに成熟した女性のようでもあり、幻影のようでもリアルな存在のようでもあり、悲しげにドン・ジュアンを慈しむようであり黄泉の国に誘うようでもあり、そのambiguityがコジョカルという存在と重なりました。

 トルーシュは、髪を手でかき上げる仕草がプレイボーイっぽく、口元に笑みを浮かべた表情は軽薄そうで、人生を楽しんでいる男だった。コジョカルと出会った時は、また女が寄って来た😏みたいな感じだったけど、いつの間にか虜になっていく過程でどんどん表情が変わっていく。コジョカルがいなくなってから踊るソロはかなり難しそうでした。トルーシュにリフトされたコジョカルが両腕を広げるとそれが十字架の形に見える場がいくつかあるんだけど、終盤で、トルーシュの背中で斜めにリフトされたコジョカルが両手を広げたとき、そのトルーシュの姿が、キリストが十字架を背負って歩く姿と重なったの、ハッとさせられました。

 

 海外組と「シンフォニー・イン・C」の間に10分くらいの休憩がほしかった。海外組のダンスの余韻にしばらく浸りたかった、そして気持ちをリセットして「シンフォニー……」に臨みたかったです。

 

「シンフォニー・イン・C」

振付 ジョージ・バランシン/音楽 ジョルジュ・ビゼー

米沢唯/福岡雄大/小野絢子/井澤駿/池田理沙子/木下嘉人/吉田朱里/中家正博

 この感想は初日(13日ソワレ)の公演のものです。第1楽章は米沢さん福岡くんなんだけど、この日の米沢さんはちょっと覇気がないというか、最初、本当に米沢さん?と思ってしまった。福岡くんが大きく動いていて米沢さんもリズム感を取り戻した感じだった。続く第2楽章の絢子さん井澤くん、しっとりしたダンスがとても良かった。絢子さんの、抽象バレエなのに物語を感じさせる踊りがとても好き。井澤くんは端正でリフトが上手くなりましたね。

 ここでかなり満足したのですが、続く理沙子さん木下くんの第3楽章が大変良かったです。きびきびした動きが気持ちよく、木下くんも弾けていて、ジャンプも美しく、良いではないですかぁ……と思ったら最後で理沙子さんの去り際が???だったのです。翌日から怪我降板でした😢 で、その14日も観たのですが、奥田花純さんが代役だった。木下くん、理沙子さんとも花純さんとも完璧なパートナーシップを築いていて素晴らしい👏 花純さん、急な代役とは思えぬパフォーマンスで、リズムの取り方がとても気持ちよかった。第4楽章を踊った吉田さん中家くんのリードもあってか他と引けを感じさせない踊りでした。フィナーレで怒涛のように繰り広げられるダンスは音楽とも相まって壮観。年明け早々の公演のトリを飾るにぴったりの作品でした。

 

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