新春浅草歌舞伎「引窓」@浅草公会堂 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

隼人/橋之助/吉弥/新悟/橋吾/蝶一郎

 

 3年ぶりの新春浅草歌舞伎、あの雰囲気、とても懐かしかったです。そして「引窓」、たいへん良かった。若手が古典に真摯に取り組む姿がとにかく素晴らしい

 

 隼人の南与兵衛は仁左さまに指導を受けたそうで、教わった通りにきちんとなぞっていて、それは正しいですね👏 ここ数年の間に隼人はずいぶん成長したなあと思う(上から目線ですみません🙇‍♀️)。以前はセリフがフワフワして落ち着かず、演技も生硬だったんだけど、仁左さまに学んできた成果(と言っていいのか?)が出始めているような。

 今回も、セリフの硬軟や高低、間の取り方など仁左さまをしっかり写していて良きかな濡髪の絵姿を売ってくれと懇願する義母を見て、なぜそれほどまでに?といぶかしむ2階に目をやり、さっき見えたのは、さては濡髪なのか?思案そうか❗️となるまでの、テンポの妙と表情の変化、仁左さまに丁寧に教わったなとニヤニヤしちゃった、そっくりなんだもん😊 侍に取り立ててもらった経緯を語るときの緩急、養子に出した実の息子は堅固でいなさるか?と義母に尋ねるときの複雑な心境表現、2階に隠れている濡髪にさりげなく逃げ道を教える言い方など、仁左さま味を持たせつつしっかり見せて聞かせてくれました。

 

 あと隼人に必要なのは素の愛嬌/柔らかさかな~。侍の姿で家に入る前にキリッと居住まいを正すところや、侍姿を自慢げに見せるところなどの、内心は嬉しくてたまらずウキウキした気持ちを抑えようとしても出てしまう感じとか……ね。もちろんそういうふうに演技しているけど、根っからのものではない。これは個人の資質として醸し出されるものでもあるから、年齢を重ね自分の殻を脱ぎ捨てることで愛嬌が自然に身についていくといいな。

 仁左さまもご自身の芸を伝える相手がいることは嬉しいと思うから、隼人はこれからも仁左さまの教えを受けていってほしいです。幸四郎も仁左さまに習うときはあるけど、基本は高麗屋を背負う立場だし、愛之助は微妙だし。とにかく今回の隼人の南与兵衛は必見ものです🎊

 

 橋之助の濡髪長五郎がまたすごく良かったです🎉 こちらはお父さんにしっかり指導を受けたと思わせる作り。濡髪だから当然ですが、骨太の作りで貫禄があり、太く低い声によるセリフは明快、最初は橋之助とはわからず、化粧の奥の素顔を探し、横顔の端正な輪郭を見つけててようやく納得でした。

 ひさしぶりに母に会ったときの息子としての素直な喜び、「お前がここに一緒に住めば自分は3人の子持ち(実の息子濡髪、義理の息子与兵衛、その女房お早)だわい」と喜ぶ母に対する複雑な心境、自分を見逃してくれる与兵衛に対する義理の心など、丁寧でとても良かったです。時々セリフがやや一本調子に感じる時もあったけど(例えば終盤、逃げると言って母を安心させ髪型を変えるも実際には捕まる決意でいて、そこから与兵衛の思いを汲んで逃げることにするまでの心境の変化とか)、そういう部分を払拭するほどの出来でした。

 橋之助もお役ごとに上手くなっていくのが嬉しいです。まだ伸び代があるから色々なお役を演ってほしい。世話物とかユーモラスな軽いものより、こういうずっしりとしたお役や時代ものから攻めていくと良いかも~(またまた上から目線ですみません🙇‍♀️)。

 

 新悟のお早は孝太郎さん仕込みでしょうか、期待通りで、悪いわけないって感じだった。情が深く可愛らしい女房だけど、以前は遊郭にいたということで曲輪言葉が思わず出ちゃうところはもう少し大袈裟でもいいかなー。

 そして、吉弥さんがお幸で出てくれたことできちっと舞台が締まり、芝居がちゃんと「歌舞伎」になっていました。息子を思う母そのものだったし、実の息子と義理の息子との板挟みで揺れる想い……世間的には義理の息子を大事にしなければいけないけど、やっぱり実の息子は可愛い、義理の息子にはお尋ね者を捕まえるという初手柄を立てて欲しいけど、実の息子には逃げて欲しいという、心が引き裂かれる老母をリアルに見せてくれました。コツコツと貯めてきたお金(といってもそんなに大きな額ではない)を与兵衛に渡して「どうかその絵姿を売ってくれ」と頭を下げるところは泣かせるよね😢 吉弥さん「桜姫……」ではあんなお役も演るし😅本当に貴重な役者さんです。

 

 さて、松也が新春浅草歌舞伎に出るのはおそらくこれが最後でしょう。できれば松也の舞台も観たいんだけど、松也は第2部のみご出演。「傾城反魂香」での狩野雅楽之助と「連獅子」での獅子の精ですが、私は「傾城反魂香」がどうも苦手なんですよね💦 それなら「連獅子」だけ観に行けばいいのか?と思案中。

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 歌舞伎へ
にほんブログ村


歌舞伎ランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村