作 ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 コラプターズ(学生翻訳チーム)
明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)は明治大学の学部生が、学部や学年の垣根を超えて集まり、シェイクスピア劇を企画・製作・上演するプロジェクト。監修などでプロの協力を得ながらも、役者はもちろん、翻訳、演出、音楽演奏、舞台美術、衣装、照明、音響、映像&スチール、広報など、すべてを学生が行うものです。そのクオリティーはかなり高く🎊 毎年楽しみにしている公演のひとつ。無料でいいの?といつも頭を下げながら観ています🙇♀️ 第18回目となる今年の作品は、シェイクスピア劇の王道中の王道「ロミオとジュリエット」。
ジェンダーや国籍にとらわれない配役になっていてとてもいい。役者さんの特性、性格、可能性を見て配役したそうです。学生たちの「2021年の今これをやる意味を問う」意欲が伝わってくる。
具体的には、ベンヴォーリオや召使いたちを女性が演じるのは割にあるとして、モンタギュー夫人を男性が演じていて、だからモンタギュー夫妻が男同士という並びで新鮮だった。また、キャスト表から判断するにパリスを中国系の女性が演じていたのも面白かったです。彼女の少し訛りのある日本語とも相まって、外国人&女性というパリスが(ネガティヴな意味ではなく)ロミオとジュリエット2人の世界の中では異質な存在であることが感じられました。
もうひとつ特徴的だったのは、マウスシールドをつけた無国籍・無性別風の数人の若者(キャスト表では「孤児」となっている)の存在。プロローグで彼らが、これから「ロミオとジュリエット」の芝居をしますとパネルを掲げた後、無言劇でザッと物語の展開を演じてみせ、そのあと本来の役者が出てきて本編が始まります。
その後もこの「孤児」たちは時々登場し、後方で事の成り行きを見守ったり、絶望したジュリエットが短剣で自死しようとするのを止めたり、ロレンス神父がジュリエットに仮死状態になる薬を渡そうとするとき「それはダメ、やめたほうがいい❗️」という感じで神父とジュリエットの衣装の裾を引っ張ったりする。彼らは現代の私たちということ?🤔 コロスともアンサンブルとも言えるような/言えないような役割なんだけど、もっと絡ませれば、より面白い存在になったと思う。
また、ジュリエットが眠る霊廟内をスマホのライトで照らしたり、神父がiPadを使ったり、ロミオが飲む毒薬が缶ドリンクだったり、パリスが本国からの手土産をキャリーケースに入れて持ってきたりと、現代の小道具が地味に😅使われていました。衣装はもう現代服でやってもいいのでは?と、ふと思ったり。
登場人物の造形に特別な解釈はなくて、割とオーソドックスなキャラ立て。その分、2人の悲劇が普遍的なものとしてストレートに伝わっては来るけど、個々に色をもっと付けるとか、個性的な造形をしてもいいんじゃないかな。役者さんたちは大熱演、真摯な姿勢が感じられ観ていて気持ちが良かった👏 主役の2人と神父に加えて、特にマキューシオの田中悠貴さん、お調子者風でコミカルな見せ方やセリフ回しがうまく、印象に残りました。
特別公演「ロメオ、エンド、ジュリエット」
本編に加えて、今年は明治大学創立140周年ということで、記念の特別公演(配信)もありました。これは、1886年(明治19年)に日本で初めて「ロミオとジュリエット」を翻訳した河島敬蔵の「春情浮世の夢」の原本と、1904年に日本で初めて上演された小山内薫による「ロミオ、エンド、ジュリエット」の台本を掛け合わせたものだそうです。
芝居の合間に「語り」が入っていて義太夫狂言味があったり(両サイドにデスクがあって台本を持った人が「語り」を読む)、始まるときに柝の音を入れたり、セリフが文語調だったり、「ロミオくん」とか言ったりと、ちょっと面白いものでした😊
こちらはロミオもジュリエットも女性が演じていてなかなか興味深い。印象に残ったのは乳母、神父、大公、そしてジュリエットを演じた田中苑希さん、セリフに感情を乗せるのがとっても上手くて良かったなー。