十月大歌舞伎「松竹梅湯島掛額」@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

菊五郎/尾上右近/隼人/魁春/團蔵/片岡亀蔵/権十郎/梅花

 

 2つの作品から、それぞれの名場面「吉祥院お土砂の場」と「四ツ木戸火の見櫓の場」を取ってつないだ2幕もの。八百屋お七の物語を題材にしてあるけど、1幕目はギャグ満載の喜劇風、2幕目は人形振りが入る超シリアス劇という、何かアンバランスというかそれぞれ別物風な展開ではあります。

 

 1幕目。お七(尾上右近)は吉祥院の小姓吉三郎(隼人)に恋い焦がれ中。吉三郎は実は武家の跡取りで、いま帰参が叶い向こうで婚礼をあげるらしい。どうしても結ばれたいというお七の悩みを知った紅屋長兵衛(菊五郎)が一肌脱いで2人を応援。お七は積極的に攻めまくり吉三郎もその気に💦  そこに、お七は俺のものだという男たちが踏み込んでくるので、長兵衛は誰彼構わずお土砂を掛けてその場をドタバタにし、2人を逃します。

 お土砂は真言密教の加持を施した砂で、これを掛けられると体の力が抜けてグンニャリしてしまう團蔵(上人)魁春(お七の母)もフニャッとなるし、乱入したお客(橘太郎)も止めに入った劇場スタッフもクニャクニャ。最後に幕引にまで掛けてしまって仕事にならなくなり、菊五郎さんが自ら幕を引いていくという。とにかく菊五郎さんが楽しそう。時事ネタも取り入れたギャグがいろいろあったけど、分からないのも結構あったな🙇‍♀️

 右近と隼人のラブラブイチャイチャがもう! 見ているこちらもトロけそうになるし、強引に押していく右近のお七が素敵。隼人はつっころばし風優男がハマり役で、鼻筋の美しさは3階からでもくっきり見えました。

 でもって、菊五郎さんの隼人いじりが傑作、それに対して真面目な顔でいちいち応える隼人が〜😂  嘘で気を失ったお七に口移しで水を飲ませなさいと言われ「はい、濃厚接触になりますが……」とか、「今はそんな顔してるけど、夜になれば……だろ、え〜?😏」(←このへん曖昧)とツンツンすると、真顔で「プライベートは本人に任せておりますので」とかね😸

 

 そこからガラリと変わる2幕目。吉三郎はお家の重宝である刀の詮議中で、帰参を控えた今日中に見つけないと切腹しなければならないらしい(ここ、1幕目との辻褄がどうもよく分からない)。で、その刀を手に入れたお七は吉三郎に渡したいけど、木戸が開かないと町から出られない、それには火事を知らせる太鼓を打てばいいと思いつき、太鼓がある火の見櫓に登るまでを人形振りで見せます。最後は人間に戻って太鼓を打ち鳴らし、降りしきる雪の中、刀を胸に抱えて吉三郎の元へと花道を掛けていく〜

 右近の人形振りが圧倒的でした🎉  カクカクした関節の動き、そこから繋がるなめらかな四肢、手の返しや首と頭の動きが美しい。力を抜く瞬間や人形遣いさんに抱えられた時のポーズ、梯子を登る動きなども見事で、本当に人間サイズの人形に見えました。しかも、人形だけど魂(情念、吉三郎への強い恋心)がこもっていて、引抜で衣装が代わり髪が乱れていくに連れて、その感情が激しく殺気立つように表に出ていく。この作品、今まで見た人の時より右近はずっと人間味があるというか、人形振りはきちっとなんだけど、人間でもあったんですよね。動きの華やかさ、狂おしいほどの情熱、何かすごく新鮮でした。

 

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