ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」@日生劇場 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 Vaso Patejdl/作詞 Eduard Krecmar/脚本 Ivan Hejna

演出 白井晃

木村達成/松下優也/田代万里生/加藤和樹/May’n/エリアンナ

 

 ダーク・ミステリー風味のエンタメとして笑っちゃうほど面白かった😅  プロットにはツッコミどころ満載なんですけどね💦  切り裂きジャック(Jack the Ripper)事件は19世紀末ロンドンで実際にあった連続殺人事件。1888年にロンドンのスラム街で3カ月に5人の娼婦が殺され、腹部を切り裂かれ内臓を取り出されたケースも。犯人を名乗る者からの手紙に「切り裂きジャック」と署名があり、それが新聞に掲載され、殺人鬼に対する呼び名として一般に広まったそうです。結局犯人は見つからず事件は迷宮入り。

 なので、この題材は自由に脚色できるわけですね。ここでは人造人間の話「フランケンシュタイン」と、二重人格者の話「ジキル博士とハイド氏」をミックスしてあった。

 

 物語は時間を前後させた展開になっているけど(←あまり効果的には思えなかった)、ここでは時系列に💥ネタバレ💥あらすじを→1881年、アメリカ人外科医ダニエル(木村達成)は臓器移植の研究をしていて、アメリカでは入手しにくい解剖用の死体が簡単に手に入ると聞きロンドンにやってきた。知人のツテで娼婦グロリア(May’n)に会い(ここで2人は一目惚れ)、死体を提供してくれるジャック(加藤和樹)を紹介してもらう。この年すでに連続殺人が起こっているらしく、グロリアは犯人がジャックだと知っている。犯人に懸賞金がついたのでグロリアはジャックを密告、それを知ったジャックは彼女の家を放火。結局ジャックは警察に撃たれ死亡。ダニエルはグロリアも火事で死んだと思い失意のうちに帰国。

 1888年、ダニエルは研究発表のためロンドンを再訪し、顔に火傷を負い病気で内臓がボロボロのグロリアと再会。彼女の臓器を移植しようと決心したダニエルの前に、死んだはずのジャックが現れ、内臓(=死体)提供を約束。そして再び連続殺人が! 刑事アンダーソン(松下優也)は犯人を捕まえるべく奔走、新聞記者モンロー(田代万里生)はスクープを狙ってつきまとう。5件目の殺人の後ダニエルは、ジャックは自分のオルターエゴで、殺していたのは自分だったと気づく🙀  それを知ったグロリアは、自分のために人を殺すのはやめてと自殺。アンダーソンは殺人鬼ダニエルを射殺、モンローもその場で事故死。残ったアンダーソンは事件報告書を書くが、結局破棄してしまう。終わり。

 

 ダニエルの「どうしてもグロリアを救いたい→臓器移植をしよう→新鮮な死体が必要→誰か死んで欲しい」という願望がつのり、無意識のうちに自分が、過去に知っていた殺人鬼ジャックという別人格の男になり殺人を犯していたということですかー😄

 話のつじつまが合わないところは多々あるけど😆  いちいち気にしている暇がなく、スピーディーな展開で強引に話が進んでいく。いろいろ入れ込んでいる割に物語が破綻していないのは凄いです。事件が迷宮入りになった理由もちゃんと押さえてるし。

 で、これはダニエルの話だけど、刑事アンダーソンの物語でもあるかな。アンダーソンは「この街が嫌いだ」と吐いたりコカインやったりと厭世的なんだけど、元恋人の娼婦ポリー(エリアンナ)をジャックの餌食にしてしまった罪悪感に苛まれる。最後に事件報告書を破棄するのは「これが公になったらダニエル/ジャックがダークヒーローとしてもてはやされ、殺された女たちはただの飾り物になってしまう」のが許せないからで、彼は最後に人間性を取り戻すみたいな感じになっている(いや、そもそもこの作品自体、女性が全く描かれていない、飾り物的存在なんですけどね🙄)。ラストに向かって、ダニエルは自己崩壊していき、アンダーソンは正気になっていく、2人の精神状態が逆転していく対照性も面白い。

 

 木村達成さんダニエルは繊細さと大胆さ、ピュアな前半と自我が引き裂かれ狂気じみていく終盤との落差が見事で、物語をドラマティックに彩っていました。松下優也さんアンダーソンは足が地についた男の葛藤と優しさが見え隠れする割と難しい役をうまく演じていた。加藤和樹くんは人外感あるダークなジャックをすごく楽しそうに演じていました。シャウトする歌やマントの扱い方がカッコいい。トートを意識してる?😄 田代万里生くんもクレイジーな新聞記者をノリノリで演じていて、新しい万里生くんを目撃しました。ずっとテンションが高くてキレそうなところはルキーニだった。

 

 木村ダニエルと和樹ジャックが、すれ違った瞬間に人格が入れ替わり、木村さんがジャックとして高笑いし、和樹くんがダニエルとして苦悩するという二重人格の見せ方、2人の演技が逆になるところは上手い演出でした👍

 白井晃さんの演出は猥雑だけど人間味が濃厚。19世紀末ロンドンの下町のいびつな建物、闇夜に浮かぶイエローオレンジの時計塔、光と陰のコントラストが効いた照明、次第に増えていく血まみれの新聞紙など、白井さんお得意のデストピア風セットが素晴らしい。舞台上の空気が麻薬的な毒気を含んでいるみたい。怪しい夜になると犬の遠吠えが聞こえるのが「狼男」伝説を連想させ、さすがにベタすぎて笑った😄

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村


ミュージカルランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村