TV視聴 NHK特集「大看板 團十郎への道」(1985年) | 明日もシアター日和

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 1985年、團十郎さんが38歳で十二代目を襲名するまで、約半年にわたって取材したものを編集したドキュメンタリー。飾り立てることなく淡々と綴られた、ある意味、團十郎さんにふさわしいとも言える、想像以上に良い番組でした🎊(撮影当時はまだ海老蔵だったけど、紛らわしいので以下、團十郎さんで統一)。

 十一代目が亡くなって20年間、皆が待ち焦がれた團十郎という大看板。番組では「代々人気役者を生んできた團十郎の歴史は歌舞伎の歴史でもあ」ると。その通りですね。歌舞伎座では初めてのことだったという3カ月にわたる襲名披露公演、幸運にも私はそれらをリアルタイムで観たのですが😊  当時はまだ、それがどれほどすごいことなのか分かっていなかったな。

 

 番組で團十郎さんの声を聞いたときは泣きそうになってしまった😢  團十郎さんは終生、努力の人でした。付いてくる肩書きは、番組でも言っていたように「明るく大らかな芸風」。決して「名優」とは言われなかった。ご自身もそれは分かっていただろうから、大名跡を継ぐと決意したときの気持ちや、身を削って努力をしようと覚悟されたことを思うと胸がキュンとなります。

 

 成田山新勝寺での3カ月間の修行。水行、礼拝行に挑む恐ろしいまでの気迫、自分を極限まで追い込むストイックな姿に圧倒される。大看板を背負うには命がけの覚悟が必要なのだ、團十郎とはそれほど重い名跡なのだということが伝わってくる。

 そして星空を見るのが好きでしたね。19歳でお父さまを亡くしたから、人生の上でも芸の上でも支えを失い、どれほど心細かったことか……😔  1人で不安や重圧を受け止めるしかなく、空を眺めることでそれらから一瞬でも解放されていたのかも😥

 

 貴重な映像がいくつもありました。浅草公会堂での、海老蔵としての最後の舞台、梶原平三と日本駄右衛門の映像は嬉しかった。十一代目團十郎襲名の「助六」をチラとでも見られたのも、まだお嬢さまっぽさが残る美しい希実子夫人の姿も良かったな。

 そして何と言っても、36年前の大幹部はじめ人気役者さんたち! あー、懐かしい。40代の菊五郎の二枚目っぷり👍  歌右衛門家の玄関先のぬいぐるみ。歌舞伎見始めの頃は歌右衛門と玉さまとのことでいろいろ聞いていたけど、今となっては……ですね。ドアに半分隠れて「こんな格好でいいのー? ねえ、こんな格好でさぁ」とカーディガン姿の十七代目勘三郎に人柄がにじみ出る😊  「襲名が終わってからが本当の勝負だ」という二代目松緑の言葉が厳しくも優しい。そして十三代目仁左衛門の柔らかな品のある佇まい✨

 

 住太夫さんによる義太夫の稽古シーンは圧巻。観ている方も力が入ってしまう。團十郎さんは口跡に難があったから義太夫の習得にはずいぶん苦労されたと聞きます。ここでも、お腹から声が出ている住太夫さん、喉から声を出している團十郎さん。素人の私にも、まだまだと分かる。でも、必死にしがみつく姿が胸を打ちます。團十郎さんは襲名してからも努力を惜しまず、口跡はずいぶん良くなったと評価されたけど、克服するまでには至らなかったですよね……。

 

 襲名披露演目の「助六」は歌右衛門の揚巻に十三代目仁左衛門の意休と、超豪華でした。この映像を見て思ったけど、はやり襲名披露興行は大向こうが解禁にならない限り無理ですね。そして、もしかしたら当代仁左さまの意休💓……というのもアリ?

 團十郎さんのにらみには風格と品位があり、それゆえ確かに神性がこもっていると感じられました。團十郎さんという役者が好きだったと改めて思う。もっと長生きして欲しかったです😭

 

 

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