七月大歌舞伎「引窓」@大阪松竹座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 大阪松竹座日帰り遠征、続いて夜の部です。帰りの時間の関係で「新口村」は観られませんでした🙇‍♀️

 

「双蝶々曲輪日記」引窓

仁左衛門/幸四郎/吉弥/孝太郎/壱太郎/隼人

 それぞれの役者さんの繊細な演技が心の琴線に触れてくる芝居でした。仁左さま演じる与兵衛は決して派手なお役ではないけど、刻々と変わっていく心情を細やかに見せるという、仁左さまの本領を発揮できるお役だと思う。目線ひとつすら見逃せなかった。

 

 冒頭からね、絶妙の演技なんですよ。2人の侍(壱太郎隼人)を伴って花道を出てくる仁左さま、郷代官になった嬉しさと緊張が入り混じる気持ちを、ピンとした動きと少し硬いセリフで見せる。侍を他所へ向かわせ、1人になったとたんに緊張が解けて背筋がフニャッとなり、ニンマリ笑顔になり☺️  再び背筋を伸ばし居住まいを正して玄関を開け、中学1年生がピカピカの制服を着せてもらったような自慢顔で、母(吉弥)女房(孝太郎)の前で胸を張る。萌え、萌え、萌え〜💓  2人の侍を呼びに行くとき、侍身分に慣れないゆえうっかり刀を置いたまま忘れ慌てて戻って来るところも可愛いのですよー😆  でも決して無駄にはしゃいでいるわけではなく、ここで侍になった喜びと初任務に張り切る様子を全身で見せておくことで、その後の展開の悲劇性が際立つのですね。

 

 濡髪を捕らえて母を喜ばせるのだと意気込む与兵衛、でもそれが母を悲しませてしまうという皮肉。母と女房が濡髪の捜索を思い留まるよう遠回しに説得するあたりから何か変だと思い始め、視線を泳がせ思案する。手水鉢に移った人影に、はて?となって推理を進める表情、母が、死んだ時お寺に納めるため細々と貯めていたお金を出し「絵姿を売ってくれ」と頼むところでハッと全てを悟るまでの、思考の展開の見せ方が丁寧で胸を打つ。

 母の「(お金を納められない)自分は地獄に堕ちてもいいから絵姿が欲しい」という願いを聞いた仁左さまの表情には、「なぜものをお隠しなされます」(私はあなたの息子なのだから隠し事などしないでください、水臭い😥)というセリフも合わせて、やっぱり自分より実子が大事なのか……と思った悲しさもあったよね。でも自分が愛する母が実の息子を必死で守ろうとする思いに打たれ、初手柄を捨てる決心をする与兵衛、辛いねー😭

 

 幸四郎の濡髪も良かった。恩ある人を守るために図らずも人を殺めてしまった……。基本、すごくいいやつなんですね。人目を忍ぶためにかぶっていたムシロをとったときの身体大きさが立派で、実母との会話には優しさが滲み出る。一度は与兵衛の好意に甘えて逃げようとするも、変装のために前髪を剃ってもらっている間に与兵衛の義理を思い、自分は捕まるべきなのだと心を決める。ここまでセリフはないけど腹の中で決断するところ、しっかり感じ取れました。結局、与兵衛の情けが勝ち濡髪は逃げるんだけど、いずれ捕まってしまうだろうと予感させるのですよね……😰

 

 吉弥のお幸がまた泣けるんですよ〜😿  2人の息子の間で板挟みになる、引き裂かれるような思い、どちらも可愛いけど、でもやはり実の息子への愛が勝る、与兵衛の前でその選択をしなければならない辛さ。つつましやかに貯めてきたお金を丁寧に包んで与兵衛に差し出すところ、小さく丸まった背中が切なかった💦

 今回はお幸が濡髪を縛るところの心情や、引窓の開閉によって明かりが射す射さないという仕組みを物語に絡めた巧みさを、改めて味わいました。それにしても、ここ数カ月を振り返っただけでも、仁左さまのお役の振り幅の大きさ、そしてどのお役もニンというのに改めて驚かされます🎉

 

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