七月大歌舞伎「伊勢音頭恋寝刃」@大阪松竹座 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 大阪松竹座へ日帰り遠征してきました。コロナ関係者が出たりしないか、当日ギリギリまで気を揉みましたよ。まず昼の部2演目。

 

「伊勢音頭恋寝刃」

幸四郎/壱太郎/扇雀/鴈治郎/隼人/虎之助/寿治郎/松之助/孝太郎

 幸四郎の福岡貢は2017年以来2度目。今回も仁左さまのご指導のもと(どこを写真に撮られても綺麗じゃないといけない、と言われたそうですよ😊)きっちり勤められていた。幸四郎は姿が美しいしセリフも良いし、貢はそこに柔らかさとほんのりした色気が加わり、また主君への忠義というキリッとした面も持ち合わせていて、正しくピントコナでした👏  心理・感情表現、特に気持ちが次第に変化していく見せ方も丁寧です。お鹿を利用して自分を騙したのが万野と知った時の、怒りをぐっとこらえた思い入れたっぷりの表情と立ち姿。幸四郎、決める時の形は本当に綺麗だなー✨

 でも、終盤の無差別連続殺人のシーン、殺しの様式美は十分あったんだけど、何か……あとちょっと何かが欲しい。妖刀に操られるように人を殺していく怪しさというのか、放心したような狂気というのか、観ていてヒュッと寒気がしてくるような何か

 

 幸四郎は仁左さまの芸を着々と引き継ぎつつあり喜ばしい限り。8月の「義賢最期」もすっごく楽しみです。ただ、幸四郎はビジュアルも芝居も申し分ないのに、役によってあとひとつ物足りなさを感じる時があって、それは白鸚さんにはあるもの、内側にくすぶる狂気/闇のようなもの、を見せる演技。終盤の貢にはそれがあるといいなと思った(仁左さまがデフォルト😅)。

 じゃあ誰の貢なら?と過去20年を見たら、愛之助、海老さん、勘九郎、菊之助、梅玉が勤めている。海老さんが一番ニンだと思うけど(團十郎さんは何度も勤めてる❗️)、海老さんはこういうお役には興味がないようだからいいとして、この中では勘九郎が良いかもと思いました。

 

 扇雀の万野が結構怖かったな。陰湿にネッチネチ、ネッチネチいじめるのではなく、割と強気で攻め込んでいた。料理人喜助の隼人はセリフがちょっとフワフワしていたー💦

 で、これって、店で待つと言う万次郎(孝太郎)を、他所で待つようにとお岸(虎之助)が追い返したことがそもそもの元凶だなといつも思う。あのまま居れば貢と会って青江下坂を受け取れたのにぃ〜😑 ところで虎之助、しばらく観ない間にずいぶん上手くなっていたし、女方も綺麗だった。最初は誰なのか全然わからなかったです。

 

 

「お祭り」

仁左衛門/孝太郎/千之助

 松嶋屋親子三代では2004年以来なのか、目出度や〜。あのときは千之助の初舞台だったんですね。懐かしいなあ。華やかで楽しくて、舞踊の鑑賞が苦手な私も楽しく観られる。役者さんが良いのも大きいですけど😅

 祭りの花形としての鳶頭、先月の清玄&権助とはガラリと変わって、シュッと粋でいなせな仁左さまが眩しかった〜。爽やかな所作、ほろ酔いで動くたびにこぼれる色香、はぁ〜、かっこ良い😍  若い者たちとの所作ダテも見せるところを美しく決める。芸者2人両手に花状態でデレっとするところにこちらもニンマリ。孝太郎の踊りはしなやかで艶っぽさがあり千之助の女形はしっとりと美しくてびっくりでした。

 最後に仁左さまは千之助の手を取り、千之助はツンとした表情で孝太郎に見せつける。孝太郎はちょっと嫉妬して見せ、清元連中にお礼を言っている間に2人が行ってしまったので、ちょいと〜という感じで追いかけて終わりました。孝太郎、味わいある役者さんになりましたね✨

 

 「お祭り」は松嶋屋にとって特別な演目であることが筋書の記事に書かれてありました。上に書いたとおり千之助の初舞台に親子三代で踊ったことを始め、孝夫時代に7か月の闘病生活を終えての復帰舞台(1994年)が「お祭り」だった。あの時の興奮と熱気と感動は忘れられません😭  Eテレ「にっぽんの芸能」リニューアル第1回放送(2020年)ではゲスト出演された仁左さまがスタジオで「お祭り」を生披露しましたよね。

 仁左さまは、現役の歌舞伎役者さんの中では「お祭り」を演じた回数が最も多いのだそうです。コロナ禍が収まり、大向こうとの間で「待ってました!」「待っていたとはありがてえ」のやりとりができるようになった時に、ぜひ演っていただきたいです🙏

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 歌舞伎へ
にほんブログ村


歌舞伎ランキング

明日もシアター日和 - にほんブログ村