「ロミオとジュリエット」@東京グローブ座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 ウィリアム・シェイクスピア

翻訳 松岡和子

演出 森新太郎

道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)/茅島みずき/宮崎秋人/森田甘路/小柳心/平田敦子/斉藤暁/花王おさむ/栗原英雄/太田緑ロランス/坂本慶介/高橋和明

 

 森新太郎さんの演出がいつもながら手堅かった🎉  ひねった解釈や込み入った装飾は加えず、真正面から直球で向かう正攻法。覚えている限りでは1、2箇所を除いてすべてのシーンが入っていて、セリフもあまりカットしてないという、かなり本気の上演。オーソドックスだけど、ところどころにアクセントが加えてあって面白かったです👏

 舞台美術は様式的かつスマート。舞台上にさらに回転式の正方形の盆があり、それを回してシーンを変える。あるいは、後方に置いた2つの可動式の壁型セットを動かして場面転換する。あとはシンプルな椅子だけ。余計なものを削ぎ落としたミニマムな舞台空間の中、役者のセリフと動きの力で物語が進んでいきます

 

 どの役者さんのセリフもクリアで言葉がきちんと伝わってくるから、ドラマがくっきりと浮き上がります👍  改めて聞いているとシェイクスピアのセリフって本当に美しくて耳に心地よく(翻訳のおかげもあるけど)、確かに詩人だな〜と納得してしまった✨

 大人たちは時代がかった衣装だけど若者たち(ジュリエット以外)は現代服で、最後のヴェローナ大公のセリフもちゃんと入っているから、大人たちの争いの虚しさ、空回りする建前の世界、運命に押し流される人間の無力さなど、現代に通じる批判的観点が明確になっている。オープニングでの両家の人たちの喧嘩がスローモーションという様式的表現になっていて、それも、これが現代の寓話であることを思わせました。そして、改めてロレンス修道士(斉藤暁)ヴェローナ大公(花王おさむ)のセリフがけっこう胸にしみたなー😢

 

 ジュリエットは最後まで白系のロングドレス姿(最後はウェディングドレス)なんだけど、最初に登場したとき上半身に甲冑をつけていた。そのあとの舞踏会でも甲冑姿のまま踊ります(ちなみに、そのときのパリスは羽と光輪をつけた天使の仮装姿😅)。甲冑からは、可憐で純真な深窓の令嬢ではない、強い意思をもった女の子という印象を受けたけど、もしかしたら外界から自分の身を守っているという暗喩なのかな? ロミオと出会ったあとのバルコニーシーンでは甲冑はつけていなかったから、ロミオに恋したことで防備を解き、まっさらな自然体の自分になったという風にも取れるよね。一方のロミオは基本、白シャツと黒パンツというシンプルな衣装で、現代の普通の男の子という感じでした。

 

 そのほか造形で興味深かったのは、マキューシオ(宮崎秋人)がかなり強めのクィアなキャラになっていたことで、顔は白塗り(道化っぽい位置付けなのか?)、両家のゴタゴタを批判的に俯瞰している役柄が強調されていました。舞踏会に行くロミオの仲間たちがドクロのマスクをしていたのも面白くて、このときロミオが「嫌な予感がする」と不安を口にするのと重なり、死の運命と共に乗り込んでいく暗示みたいでした。乳母の召使いピーター(和田慶史朗)は膝立ち姿、ロミオの従者バルサザー(久留飛雄己)は背中が曲がった姿だったのは、多様性を取り入れたのだろうか🤔  パリス(坂本慶介)はちょっと高慢な男にしてあったのは良かった😬

 

 タイトルロールを演じた道枝駿佑茅島みずきは十代とは思えないしっかりした演技とセリフ回し(発声からできている!)で驚きました👏  2人を見るのは初ですが、道枝くん18歳は舞台では初単独主演、茅島さん16歳は初舞台だそうです。それであそこまでできるって、森さんの丁寧な指導のもと、相当な稽古を積んだんだと思う。2人の演技への真摯な向き合い方に感動しましたよ。とにかくセリフがまっすぐ伝わってくるのが素晴らしい👏  微妙な心理表現や気持ちの変化までは繊細に表しきれてはいないけど、精気と情熱があり、純粋でロマンティスト、世間知らずで自分たちのことしか頭にない、生き急ぐ恋人同士……という十代の若者の気持ちがズンと伝わってくる

 

 茅島ジュリエットは真っ直ぐな芯のある利発な女の子。ロミオと出会って一途に突っ走る姿はみずみずしく、それだけに若さゆえの未熟さを隠しきれないところも見せていました。道枝ロミオは前半ときどきコミカルな面を見せるなどチャラい感じの😆(ある意味)普通の男子から、後半に成長していく過程が素敵だ。2人とも等身大の恋愛を演じているから作為的な無理がなく自然で透明感がある。バルコニーや寝室のシーンはあまりにピュアで少し涙ぐんでしまった😢

 

 最後、ウェディングドレス姿で横たわるジュリエットの上にレースが被された絵柄が美しかった。そのクライマックス、ロミオが仮死状態のジュリエットの腕を掴んだとき彼女の腕が一瞬動くという切ない演出だった。あと数秒早くジュリエットが目覚めれば、あと数秒長くロミオがジュリエットを抱いていれば、2人は再会できたのにという、運命の非情、残酷さを思わせる演出で、辛さが増したー😭

 エピローグは、ルネサンス期風の音楽に合わせて全員が楽しげにダンスを踊るという、ロンドンのグローブ座の公演っぽい見せ方でしたね🎊

 

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