脚本/音楽/歌詞 ステファン・ドルギノフ
演出 栗山民也
成河/福士誠治
成河・福士誠治ペアの回を観ました。自分が本作を観るのは先日の田代・新納ペアに続きこれが2度目、それ以前のものは観ていないので、それなりの感想です。
まず、成河やっぱり天才🎉と脱帽し、福士さん(の演じる彼)がものすごくツボで惚れた😍 そして面白いことに、田代・新納ペアとは違って、このペアからは(同性愛としての)愛情、セクシュアルな空気はほとんど感じなかった。恋愛的欲情は私の一方通行のもので、彼の欲は全く別のところにありましたね。
それゆえ、2人を結びつけた「契約」の重みが前面に。最初は、私は彼に自分だけを見てもらうために、彼は私に自分の優越性を証明してもらうために結んだ契約。独占欲と承認要求、2人の中にある歪んだ自己肯定。とてもドライだ。2人の出発点は異なるけど、行き着いた先としての殺人。だからなのか、なぜあんな残酷な事件を起こしたのかという真相は、混沌とした闇の奥にあり、同時にとてもシュールなものに思えました😰
成河が演じた私は、弱く脆そうに見えて、したたか、目の前の問題に対して攻撃するのではなく、見ないようにして、あるいはうまく避けて生きる、そういう処世術を身につけた、ある種狡猾な知性を感じる。そして、最初からかすかに狂気(軌道を逸した精神状態)にあったよね😨 自分が彼の愛を絶対に手に入れることができないのは最初から分かっていただろうし、それでも(それゆえ?)彼を執拗に求め、それが高じて、どうしても彼を手に入れたいと執着していく熱情。彼が自分を愛していなくても、もはやそれは何の問題でもないという、狂気じみた虚しさが辛い😓 その成河私なら、殺人の共犯者になると決めたとき、彼とずっと一緒にいる方法を一瞬で思いついただろうと納得します。
成河はいろいろなシーンで意味深な笑みを見せるんだけど、メガネが証拠として見つかったことについて「あんなに早く見つかるとは思いませんでした」と屈託無く笑ったときや、護送車の中で「彼を支配した」と確信した晴れやかな笑みには背筋が凍ります💦 拘置所で彼が弱音を吐くのを聞いているときに流す涙と最後に緩む口元には、彼への憐憫と甘美な陶酔が混ざっていた。そして最後「スリル・ミー」とつぶやいて泣き顔のままうっすらと微笑む成河、怖かったよー😱 彼はもういないのだから自由(釈放)などなんの意味もないけど、私の心の中には高校生のときのままの彼が微笑んでいる。現実を超越したところでの彼との一体感に恍惚とする私でしたね。
バードウォッチングを楽しむ孤独な私は、周りには愛されていたかもしれないけど、「優等生の良い子」を装っていただけなんだろうな、成河私だったらそれくらいやりそうです。私の屈折した心理を思うと切なくなるのでした😖
彼を演じた福士さん。立ち姿がカッコいい❗️ 歩く姿がスマート‼️ ナイフのような鋭い感性を感じさせる硬質な佇まい、感情を封印したクールで知的な表情💕 でも、隙を見せない超然とした立ち振る舞いは、壊れた心の扉を固く閉じていることを感じさせる。何か満たされずイラつき、克己するために高みに登り社会を見下ろしているような。彼は無理して孤高を持しているというか、超人を気取っているようで、父や弟に対するねじれた感情がその根底にあるよね。その投影でもある欺瞞的な社会を憎み、超えてやると思うまでになったけど、実は心の奥底はかなりホットで、背伸びしているだけの幼さも見えたし、張り詰めた糸が1本切れたらバラバラになってしまう危険も感じました。
私に対しては1ミリも近づいていなかったですね😔 キスしても触っても感情は動かない、私に心は与えない。そもそも私をあまりちゃんと見ていなかったし、むしろ私と接触するのが好きじゃなさそう🌀 同性愛的行為は単なるゲーム、契約してからは義務の遂行なだけみたい。一方、犯罪を犯した時の、熱を帯び高揚した声(ほんの少し高音になり強さと抑揚がつく)の変化に驚く。そういう彼のある種の危うさの裏には純粋ゆえの青臭さがあって、だから捕まってからの福士さん、特に拘置所で弱音を吐く彼の動揺が生々しい。あのときの彼は普通の18歳の青年だったな😢
「九十九年」を歌ってフェイドアウトしていく彼は、最後まで私に対して感情のかけらも示さないけど、私の心の中にすっぽり収まってしまう抜け殻のような姿が(最初とのギャップもあり)不憫だった。対する私はついに彼を手に入れ美化したまま永遠に手の中で飼えるわけで、成河の表情は幸福の絶頂にあるそれでした。
2人が抱える異なる孤独、2人が求める異なるスリル。私は彼の愛を得られないのは知っているけど彼を自分のものにしたかった、彼が私に与えるのはなおざりの愛の行為だけど自己完結のために私が必要だった。交わした契約の履行はパワーゲームみたいなもので、2人の力が合わさったとき世間を超越するというベクトルに向かったのか。越えられなかったけどね。その壁に気づかなかった2人の18,9歳としての甘さや緩さ、綻びみたいなものが愛おしかったです。