「ダム・ウェイター」@下北沢 小劇場楽園 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 ハロルド・ピンター 

演出 大澤遊

河内大和/伊礼彼方

 

 不条理劇と呼ばれるピンターの作品は、筋が合理的に通ってなくてよく分からないところも多いけど、その分からない部分が脳を適度に刺激して面白さを感じるんですよねー。この「ダム・ウェイター」は過去にも観ているけど、やっぱり良い👍  初演は1960年。

 原題「The Dumb Waiter」は喜志哲雄氏の翻訳では「料理昇降機」となっています。上階のレストランと下階のキッチンを繋いで注文票や料理を上下に運ぶボックスね(確かに「物言わぬウェイター」です)。文字通りに「無言で待つ人」「間抜けな待つ人」と訳して、劇中に登場する、何かを待っている2人に重ねることもできる。

 

 ネタバレあらすじ→ベン(河内大和)ガス(伊礼彼方)は雇われ殺し屋らしく、指定された部屋で仕事の指令を待っている。とりとめもない話で時間を潰す2人。突然、壁に設置された料理昇降機が降りてくる。そこには料理の注文票が。訳も分からないまま、とりあえず持ってきたスナック類をかき集め料理昇降機に入れて上階に送る2人。そのあとも無理な注文が次々と来て対応しきれない。何かを思ったガスは水を飲むためにキッチン側のドアを出て行く。その間に料理昇降機の通話管から連絡がありベンが応対する。「男がすぐにやって来る…普通の方法を用いること」という指令を受け、銃を構えるベン。(キッチン側ではなく、廊下側の)ドアから現れたのは、スーツを脱ぎ捨て情けない下着姿のガス。ガスに銃を向けるベン、そのベンを凝視するガス終わり。

 

 芝居の感想以前に、役者2人がすごくカッコいい‼️ 殺し屋の黒い衣装が似合う😎 低く響く声がいい❗️ 河内さんはカクシンハン時代に小劇場で何度も観てるけど、目の前1~2m先で伊礼くんが演技してるのを観るのはかなりドキドキものでした💓  席が最前列だったのと、舞台に高さがなく最前列と同レベルだったので😆  フライヤー裏表の絵柄もカッコいい。

 

 

 

 ベンは几帳面な性格らしく(すべて分かっているのか、物事を深く考えないのか)落ち着いた様子で新聞を丁寧に読んでいる。ガスは少しだらしない性格で動き回りしゃべり続け(不安を隠すためか)ベンにいろいろ聞いてくる。兄貴分のベンはそんなガスを鬱陶しく感じて威嚇したりする。でもガスがトイレやキッチンに行って一人になるとベンはソワソワ落ち着かなくなる。態度は違うけど2人とも緊張し苛立っていて、2人が醸し出すピリピリした空気が観ている方にも伝わってきます。ピンター作品の特徴である微妙な間の取り方や沈黙の置き方、適度に笑いを誘うところも上手かったな👏

 

 ラストの展開はさまざまな解釈が可能ですね。自分の座席の位置的に、最後は目の前50cmのところに伊礼くんが立っているのでもう釘付け😍  放心したような戸惑ったような表情を浮かべ、自分は死ぬのか?みたいな疑問と覚悟が交互に現れていました。殺し屋用のスーツが剥ぎ取られ下着姿なのは、アイデンティティーを失ったということか?

 銃を構える河内さんを見るには180度振り向く必要があって、だから2人を同時に視野に入れることができない😖  私が見た限りでは河内さんは鋭い目で伊礼くんに銃を向けていたけど、目を逸らしたりうろたえたりという動きがあったのだろうか?

 

 よく考えるとガスの死亡フラグは結構立ってましたね😩  マッチを妙に手にするし、キッチンのガスが切れて火がつかないと不平を言うし、紅茶を淹れてほしいベンが「やかんに火を点けろ!」と言うとガスは「“ガスに火を点けろ”だろ!」と言い張る。それって「自分(ガス)に火をつけろ」と言ってるわけで、殺されることを予言しているみたいだ。

 また、殺しの手順を1つ1つ言葉で確認するときベンが「ガスが銃を抜く」段取りを(わざとなのか?)飛ばしてしまうのも、最後にガスがドアから現れたとき手に銃を持っていないことと一致します。

 

 ピンターの作品で感じるのは日常に潜む不確かさ、それがもたらす漠然とした不安です。ここでも、2人の会話は普段ふつうに交わされるような内容だけど、実はとてもあやふやなことだったり意味の通らないことだったりする。私たちが不確実なものごとに囲まれて生活している現実をあぶり出すようです。

 連絡を待つ不安と、連絡の内容がどういうものかという好奇心は、観ている方でも膨らんでいくけど、唯一動きのあるのが料理昇降機であることの滑稽さ。それが突きつける理不尽な注文に翻弄される2人。何のため?という意味はもう無くなり、目の前のことを処理するしかないところにバカバカしさを感じます。そういう行為も日常的によくあるよね。

 地下室であろう狭い部屋、漂う閉塞的な空気、パイプ式ベッドが2つ。料理昇降機が降りて来るたびに裸電球の光がボワ~と消えかかるのが、まるで照明が意思を持っているみたいで不気味でした☠️

 

 

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