新国立劇場 演劇研修所 第14期生試演会「尺には尺を」@新国立劇場 | 明日もシアター日和

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作 ウィリアム・シェイクスピア

演出 山崎清介

 

 演劇研修所は新国立劇場が開設した舞台俳優育成所で、研修期間は3年。2018年に入った研修生による舞台を観てきました。演出が「子供のためのシェイクスピア」シリーズの山崎清介さんだというのを、行って知った😅  随所に山崎さん色というか「子供の……」色があって懐かしかったです。

 

 とても込み入った話なので粗筋は割愛ですが🙇‍♂️  個人的には、為政者の身勝手さ、法と正義、倫理と非道と慈悲、結婚と女性の権利、権力と弱者などがテーマとして思い浮かんでくるし、メインの人物が皆偏狭で独善的、結末がとても釈然としない作品です😔

 それはともかく、セリフやシーンのカット&入れ替え、分かりやすくするための加筆など、山崎さんが自在に原作テキストをアレンジしてある。最も特徴的なのは、市民がコロス的な役割で登場し、舞台後方で事の成り行きを見ていること。そして時々、メインの登場人物のカギになるセリフを合唱したり、繰り返したり、長ゼリフや独白を“割ゼリフ”で代弁したりすることです。そうすると、セリフの肝が浮き上がって伝わってきますねー👍

 

 演出そのものは割と真面目で、メリハリを抑えた展開。そのぶん言葉が際立っているので、ドラマを通してテーマ性や演出家の解釈など、山崎さんが伝えたいことが直球で迫ってくる感じ。現代社会の写し絵のようにも見える。「罪悪を重ねて立身する者もあれば、美徳を身につけて没落する者もある」💥「悪徳の茂みから逃れてとがめを受けぬ者もあれば、たった一度のあやまちのため断罪される者もある」ってセリフ、まさに今もそうだよね😩

 山崎さん流のユーモアも随所に。公爵が修道士の衣装を脱いでデウス・エクス・マキナ風に金ピカの衣装で正体を現す時の、雷鳴轟く大仰な音響と照明には笑った〜🤣

 

 役者さん(研修生)たちはセリフが本当に良かった👏  発声の基礎ができているから、言葉が意味を持ってクリアに伝わってくる。動きや感情表現がフラットで硬さが見られるのは課題だと思うけど、こういう役者さんたちに色々な舞台でどんどん活躍してほしいなあ🙏

 登場人物のうち特に、公爵イザベラアンジェロのキャラ付けによって、この芝居の色はかなり違ってくると思うけど、ここではあまり突っ込んだ人物造形はされていなかったな。そこまで要求するのはまだ無理なのか。あるいは、もともと山崎さんの演出が強烈な個性を打ち出す方法ではないからなのかも🤔

 公爵を女性が演じていたので、その絶対的な強権性は柔らいで見え、直接的な嫌悪感は抱かせない感じだった。イザベラは毅然とした雰囲気で理性的、聡明に見えました。自分の中に矛盾を抱えていて体裁を繕うアンジェロはもう少しアクの強い感じなんだろうな。

 

 アンジェロイザベラに対して、自分に体を許せば兄の死刑は無効にすると言っておきながら、思いを遂げると…実際にはベッドトリックなんだけど😬…兄を助けたら復讐されると恐れて死刑を執行させちゃうクズ男😡  イザベラが終盤にそのアンジェロの命乞いをするところは、アンジェロと結婚したがっているマリアナのためという解釈に見えました。

 最大の注目点はラスト。公爵の有無を言わさぬ一方的なトンデモ身勝手宣言「イザベラを愛しちゃったので彼女と結婚しま〜す」🔥権力の力でイザベラを奪い取るアレ。それに対するイザベラのセリフは書かれてないので、ここをどう演出するか、いつも気になります。ここでは、イザベラ公爵に取られた手をゆっくりと離し、皆が唖然として去っていく中ただ一人残り、上からスポットライトが当たって終わりでした。公爵の結婚宣言を拒否したり嫌悪を示したりするジェスチャーも見せないのが、なんともねー😑  あるいは何らかの感情表現を見せたのかもだけど、読み取れませんでした。

 

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