ABKAI「SANEMORI」@シアターコクーン | 明日もシアター日和

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海老蔵/児太郎/右團次/新蔵/梅花/廣松/九團次/宮舘涼太(Snow Man/ジャニーズJr.)/阿部亮平(Snow Man/ジャニーズJr.)

 

 海老蔵としての最後のABKAI。全5回のABKAIの中でいちばん面白かったな👍「源平布引滝」のABKAI版通しというのでしょうか。よく上演される「義賢最期」と「実盛物語」に前中後の話を付け、エンタメ性のある新作歌舞伎としてうまくまとまっていたと思う🎊  源氏の白旗をキーアイテムにし、主軸を「実盛物語」におき、その実盛と成長した木曽義仲&手塚太郎とのドラマになっていて、時代をまたいだ群像劇という感じでもありました。

 

 プロローグは倶利伽羅峠で義仲たちが平家軍を討ち破ったところ。ここで、成長した義仲(宮舘涼太)と手塚(阿部亮平)を登場させ、2人が、源氏の白旗をめぐる父母の代からの物語を回想する形で始まります。2人の回想が終わって大詰で現実に戻り、舞台は篠原の合戦。実盛が討ち死にしたところで、義仲と手塚それぞれが思いを馳せて物語の円環が閉じるという、よくできた構成でした👏

 

 序幕1場「摂津国布引滝」では源氏のものだった白旗が平家側に奪われた経緯、それが再び源氏の手に戻るまでを見せて白旗の重要性を印象付ける。白旗を取り返すのが、無念にも討たれた義朝の亡霊というのが面白かったです。海老さんチョイ出なのに華を振りまく✨

 序幕2場が「義賢最期」なんだけど、色々カットでスピーディーな展開。待宵姫が出ないから折平とのあれやこれもなく、物語はサクサク進み分かりやすいけど、義賢の心情・感情を見せる部分が少ないのが物足りなく感じるのも確かです😞  白旗は義朝の声(録音)とともに天井から振り降りてくるというしかけで、こういう歌舞伎の嘘っぽさは結構好きだな😆

 見所である終盤の立ち回りですが、襖を使った立ち回りはあって海老さん襖の上で見得するけど戸板倒しまではやらなかった、なぜだろ?🙄 また、仏倒れは見せたけど、きれいな形にならなかったのは三段が低かったせいかな。

 ここでは児太郎の小万がとっても良かったです。夫を慕う田舎娘の可愛らしさと、いざとなると芯が通った頼もしさ発揮、勇敢に敵に向かうキリッとした感じとがバランスよく出ていた🎉

 

 続く2幕1場は「矢橋の浦」「御座船」で、小万の奮闘と、小万が実盛に腕を切り落とされる下りを見せています。ここ見ると実盛の物語り部分のイメージがわきやすいし、夜の海に浮かぶ御座船のセットがかなり美しかったー☺️

 

 2幕2場の「実盛物語」は本作の肝だけにしっかり見せていて、実盛、太郎吉、生まれた赤子との関係を印象付け、次の大詰での3人の心情がよく理解できるしくみでした。小万を呼び生けるところは、九郎助が井戸の底に向かって小万の名を叫ぶことはせず、皆が小万の死骸に声をかけるなど、分かりにくい部分は変更してあった😑

 瀬尾は右團次。セリフはいつもの癖がなくて聞き取りやすく、前半の憎らしさは下品にならずに良くて、モドリになってからたっぷりと聞かせます。平馬返りを期待していたけど、立ち上がってからトンボを切るやり方だった(最後は左腕で支えて回転)。もちろん無理することはないけど、以前に見た亀鶴の平間返りは、本当に座った状態から前転するスゴ技で、あれは最高だったな〜と思い出したり💕  あと、ここでは九郎助の新蔵さんが良い味を出していました。

 

 大詰はプログラムを見ると、河竹黙阿弥作「老樹曠紅葉直垂」となっています(1場「実盛陣所」2場「篠原野陣」)。九代目團十郎が活歴として上演したことがあるらしい。新歌舞伎十八番の「白髪の実盛」ってこれの通称?🤔 ここではSnow Manの2人が立派に演じていた👏  声がよく通り歌舞伎調のセリフも身についていて、あの中にあって違和感なかったです。見得するところが何か可愛かった😊

 

 海老さんは、義賢は重厚で大きさと悲劇感があり、瀕死の状態のときに葵御前とまだ見ぬ子どもにふっと未練を残すところ、1人の人間に戻った感があって良かったな。実盛では大らかさと爽やかさを見せる。物語りのところは割とサラサラで、もう少し音楽を感じさせて欲しかったかな。あと、やっぱり高い声になると喉の奥にこもって声が通らなくなるね〜😣

 最後は馬に乗った実盛が星空の中に浮き上がり、そこに銀の紙吹雪が降るという演出🌟  源氏の子孫(義仲)を生かし、源氏のために白旗を守り抜き、そのために斬った小万の仇として息子(手塚)に潔く討たれた、高潔な武将実盛の物語なんだなあと実感。カテコではお馬さんもちゃんと出てきてホンワカしました☺️

 

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