カクシンハン 薔薇戦争「ヘンリー六世」3部作@シアター風姿花伝 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

怒涛のバレエ月間が終わり、しばらくストプレ&歌舞伎の観劇感想が続きます〜😄

 

原作 ウィリアム・シェイクスピア

翻訳 松岡和子

演出 木村龍之介

河内大和/真以美/岩崎MARK雄大/宮本裕子/鈴木彰紀/小田伸泰/野村龍一/大塚航二朗/別所晋/阿部卓也/長内映里香/室岡佑哉/名村辰/佐々木雄太郎/近藤修大/山田荘一朗/渡部哲成/ユージ・レルレ・カワグチ

 

 舞台中央に赤と白に塗られたパイプ椅子がピラミッドのように組まれていて、どこからともなく現代服姿の男女が集まってきてそれを見つめる。彼らが洋服を脱ぐとその下は、それぞれ赤または白の衣装で、これから薔薇戦争の芝居をしますって感じの選手宣誓。ちょっとベタなオープニングだけど😅  なぜか胸が高鳴ってくるのですねー。この瞬間に、コレ絶対面白い!と確信してしまうのです👍

 パイプ椅子は劇中で、王座&王冠になったり武器になったり死体になったりするので、あのピラミッドは、頂点を目指す権力欲、無数の殺戮の道具、それによって犠牲になった人々の屍の山などの象徴かな。

 それにしても、あの長大な3部作をここまでにまとめた構成とテキストレジが素晴らしいです。遊びもしっかり入れて笑いを取るのに(その塩梅はギリギリOK😬)、必要なところはカットせずにじっくり見せるから、戯曲のポイントは外さない。ちゃんと、人間の善悪含めた本性をあぶり出す戦争物ドラマになっている。その中で、人の死や別れのシーンは時代を超えて訴えてくるものがありました。

 

 第1部では、ジャンヌ・ダルクのくだりはあっさり目で、トールボットの無駄死にや、マーガレットとサフォークの出会いをじっくり見せて、次につなげているように見えたな。そうそう、火刑に処せられたジャンヌの魂が処刑台から降りて、最初に彼女が連れていた羊のもとに帰って行くところはちょっと胸が詰まった。彼女は聖なる乙女でも魔女でもなく普通の農民の娘だったことを思い出させる、悲劇性の強い演出。最初の登場で羊を連れていたのはお笑いネタかと思ったけど、このためだったんですね😅  それにしても、フランス王の王笏が靴ベラだとか、フランス王の妹ボーナ姫がチュチュ姿の髭面男優だとか、フランス側を完璧におちょくるのは、今や定番なのかな😆

 第1部〜2部の休憩中にシェイクスピアさんが登場していろいろ楽しませてくれるんだけど、退場前に、王冠の輪っか側を客席に見せて「ゼロ!」と言ったのにハッとしました。で、第2部の冒頭でその王冠を貴族たちが投げ合い取り合って遊ぶという、強烈な風刺💥

 

 今回、第2部ってこんなに面白かったんだと改めて気づきました🎉  薔薇戦争の発端である第1部と、ヨーク家の台頭を描く第3部に挟まれた第2部は、その中継ぎ的役割といった印象が強かったのです。ところが今回、ヨーク公がどういう人で、何を考えていて、そのために今何をしようとしているのか(何を企んで時期を待っているのか)が、まっすぐ伝わってきた。それらがすべて第3部と「リチャード3世」につながると分かってナルホドと思いました。ヨーク公を演じた大塚航二朗の演技やセリフの力もあると思うし、ヨーク公が他の貴族から離れて思いを巡らすような演出も効果的だったと思う。ヨーク公が殺されるところはホント涙で😭(白薔薇に肩入れして観ているので😬)、マーガレット憎し〜🔥

 そのマーガレットなんだけど、サフォークが殺された後の「悲しみで泣くのはやめ、この苦しみを復讐に変える!」(←意訳)みたいなセリフが胸に響きました。この別離が、第3部でマーガレットが凄まじい殺人鬼になる起爆剤になったのか?

 

 ヘンリー六世は、演じた鈴木彰紀の透明感のあるイメージもあるんだけど、第1部で、乳児〜幼児期(生後9カ月で即位)であることを外見や補足セリフで見せるので、資質や意志に関係なく王になってしまった悲劇性が滲み出ていました。

 ロンドン塔でヘンリー六世とリチャードが対峙するシーンは、インタビューでも言っていたけど、ここで2人の立場が逆転すると考えるととても象徴的です。ヘンリーとリチャードは人間として2人で一つみたいなところがあり、ヘンリーができなかったことを、リチャードが違う形でやり遂げていくようにも考えられる。結局、誰が王でもダメだったってことですが😑

 そのリチャードは第3部から目立ち始めるんだけど、河内大和が相変わらずすごい👏  彼が兄エドワードに「王冠を手に入れるんだ」と耳元で囁くとき、すでに彼自身が王座に魅せられたようにその目が光ってるし、兄が王になってからの例の独白は壁に彼の影が投影される演出なんだけど、黒い影が曲がりねじれるさまは、彼の野心が少しずつ芽を吹いていくようでした😱

 

 「ヘンリー六世」は戦闘シーンが多いんだけど、戦いそのものはあまり見せない代わりに、トールボット父子が死を覚悟するところとか、名もなき兵士たちの死とか、個々の殺害とか、あるいは、夫婦や恋人たちの別れなどを丁寧に見せることで、戦争の残虐さ虚しさ悲劇性を訴えかけてきます。そういえば、赤薔薇と白薔薇を選ぶ重要なシーンで、植木?役のマークさんがスマホに夢中で全く無関心なの、強烈な風刺でしたね😏

 最後、天下を取ったヨーク家の人々が舞台奥に並んで記念写真を撮るんだけど、舞台中央には殺されたヘンリー六世の遺体が転がっているんですね。後ろ向きで写真を撮っている彼らにそれは見えていないというのが残酷で空虚。床に広がった彼の金髪のラインがすごく美しかった✨

 

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 演劇(観劇)へ
にほんブログ村


観劇ランキング