芸術祭十月大歌舞伎・夜の部@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

「助六曲輪初花桜」

仁左衛門/玉三郎/七之助/歌六/勘九郎/彌十郎/児太郎/又五郎/巳之助/片岡亀蔵/千之助/秀太郎

 はぁ〜……きらきら 仁左さまの、江戸一番のいい男がまた観られるとはハート もう一度観たいと願いつつ、正直、もうないと思ってましたから。仁左さまも「この先、もうたぶんできないと思います」とおっしゃっているから、今回が見納めでしょう涙

 これまで演じられた「助六」のうち、74歳の助六って最年長?冷や汗 以下、毎度ながら仁左さま大絶賛の感想ですが、さすがに、助六に必要と思われる颯爽とした動きやスピード感などは物足りないです苦笑い でも、セリフ回しや所作や内面表現などに、その足りない分=若々しさを補って余りある芸の深さがあるわけですよニヤリ そしてもちろん、シュッとした立ち姿、細っこい足も含めて、姿形の美しさきゃー

 今回観て特に感じたのは、すごーく粋な江戸っ子だけど武士でもある、そこがちゃんと分かる助六だったということ。そして、セリフに聞き惚れましたうっとり 場面ごとの声の変化やリズムの妙といったらため息

 

 出端での空間の支配力がすごかった。蛇目傘で頭を隠してカッカッカッと出てきて、その傘をスッと外して現れるお顔の上品なこと静怒 そのあとの所作の要所要所が絵のごとく美しく決まる。上半身を反らして傘でバランスを決めたときの優美な身体ラインとかね。そして、発する声が重厚で立派OK

 本舞台ではその声に軽やかさが加わって、キリッとした男らしさ+色気のある洗練された物腰に惚れ惚れらぶ1 チヤホヤしてくる傾城たちに愛嬌を振りまき、門兵衛や朝顔をからかってヤンチャぶりを発揮し、ドンと構えた意休にケンカを売るときは幼さを見せる。長ゼリフの抑揚・緩急が本当に耳に心地よい〜ジュエル・red

 勘九郎とのやりとりはテンポよく、兄を思う気持ちを見せながらも、粋がったり甘えたりする感じがいい。母に渡された紙衣を着てからは曽我五郎に戻るんですね。仇討ちを胸に秘めた武士の片鱗を窺わせます。最後、助六がタッタッタッと花道を去り、本舞台では揚巻が上体をググーッと反らして幕。あっち見たり、こっち見たりで忙しいのでした笑顔

 

 七之助の揚巻が、芯があって堂々としていました。傾城としての矜持、助六をかばう心意気を感じさせる悪態をはじめ、セリフは安定していてよく聞かせる。勘九郎の白酒売は曽我十郎としての柔らかさというか江戸和事の雰囲気がもっと出るといいな。セリフもちょっと強く感じました(私の中では菊五郎がデフォルトニコ)。

 歌六の意休が仁左さまと向き合って全く引けをとらない貫禄、そして品性もあってよかったです〜パチパチ 声の良さに今更ながら気づきました。終盤での、仇討ちをなかなか実行しない助六を叱る?セリフに説得力があった。

 通人が彌十郎というのは意外でしたが、笑わせるところはやりすぎず、十八代目を思い出させるセリフが多かったしみじみ 花道で、どこかで観ている十八代目に向かって「この大役、なんとか勤められましたでしょうか」って、もう泣かせるんだもん号泣 もう少しカラリとした風がいいのでしょうが、今回は十八代目追善だからこれでもいいかなと。

 玉三郎が登場して舞台の空気が一気に引き締まった感じ。それにしても仁左・玉って、半年前に兄妹だったかと思えばそのあと夫婦になり、今度は息子と母。どういう間柄のお役でも全く違和感がないのですねahaha*

 児太郎の白玉がかなり良かったんですよ〜クラッカー 何かすごく安定していて立派だった。児太郎は揚巻予備軍だからこの舞台でたくさん吸収してほしいです。

 そして千之助くん、ちょっと緊張が見えたけど、言いがかりをつけられて切るタンカはきっちり静怒 声は澄んでいて綺麗。あとは江戸っ子らしさが出ればね。門兵衛をやりこめる仁左さまをじっと見つめる姿が印象的でした笑顔

 

 今回の仁左さま助六は、十八世中村勘三郎七回忌追善公演ということで実現したもの。仁左さま(当時の孝夫)が初めて演じたときは十七代目勘三郎から教わったそうです。そうだったんだ。次の十八代目勘三郎は、仁左さま助六のときに白酒売や通人を勤めたけど、助六を演ることはなかった。で、いつか演るであろう勘九郎に見せておきたいという思いでの今回だそうです。そのとき仁左さまは意休でお付き合いされるかもねーキャッ

 

「宮島のだんまり」

扇雀/萬次郎/錦之助/彌十郎/片岡亀蔵/高麗蔵/巳之助/隼人/歌昇/種之助/鶴松

 こういう、様式美を楽しむ芝居は好きだーにっこり 巻物を巡って、それを盗もうとする人・守ろうとする人がワラワラと増えていき、明かりも消えてだんまりに。敵・味方の区別があるらしいですが、もう誰がどっちやらニコ 最後にぶっかえったりして衣装が変わる人もいて、とにかく目が楽しいです。ただ、特に若手の役者さんたちは、あまり「だんまり」になっていない人も凹 暗闇だから人は見えないはずなのに、周りを確認して動いているみたいという……がーん ひとりイイ男がいる〜と思ったら隼人でしたいいな 身体も大きいから映えるし、やっぱり華がありますねー。

 主役は扇雀で、最初は傾城の衣装なんだけど、一旦引っ込んだあと、上だけ盗賊の衣装という倒錯したQueenly姿で登場。鬘も面白いことになっているびっくり 最後はスッポンから上がって、上半身は荒々しい振り、下半身は傾城風のすり足という面白い動き(傾城六法と言うらしい)を交互に見せながら花道を引っ込んで行きました。楽しかったパチパチ

 

義経千本桜「吉野山」

玉三郎/勘九郎/巳之助

 玉さま静御前の、たおやかで華のある所作。勘九郎の忠信は軽さや滑らかさ、そしてキレが効いたメリハリのある動き。狐として鼓(親)を慕う姿がいじらしいです。巳之助の藤太が良かったなーきゃぁ~ 最後、勘九郎が投げた傘が吸い込まれるように巳之助の手に。そのまま左指で輪を作り、左脚を曲げて右脚の腿あたりに乗せるという、お地蔵さんポーズのまま幕が閉まるまで微動だにしないの立派パチパチ ……すいません、踊りは苦手なので、この程度の感想しかない土下座 実は勘九郎が踊っている時ちょっと意識飛びましたショック

 

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