加藤健一事務所「Out of Order 〜イカれてるぜ!〜」本多劇場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 レイ・クーニー

翻訳 小田島恒志

演出 堤泰之

出演 加藤健一/浅野雅博/加藤忍/さとうこうじ/阪本篤/新井康弘/坂本岳大/日下由美/

   頼経明子/はざまみゆき

 

 いや〜、面白かったきゃぁ~ 冒頭からラストに向かって笑いっぱなし笑 out of orderは「故障中」の意味ですが、他にも「乱れている/秩序から外れている/許しがたい行動/議会規則違反」などいろいろな意味があって、すべてこの芝居を言い表している感じです。

 初演は1990年。舞台は高級ホテルのスイートルーム。イギリス与党副大臣リチャードと、野党議員の秘書ジェーンとが、臨時閣議をサボって国会議事堂近くのホテルで愛の密会。そこで起こった侵入者のトラブルのせいで不倫現場がとんでもないことに! という、イギリスの王道的爆笑劇です笑顔

 

 バルコニーに通じる上げ下げ式窓に欠陥があることが、すべての元凶でしたQueenly ジェーンの夫に頼まれて不倫調査しに来た私立探偵がそれに挟まって死亡びっくり(実際には仮死状態)。ホテルに知られないようにその男を何とかしないと、不倫がバレて家庭も議員人生も崩壊、保守党の人気急落は必至という、絶体絶命のリチャード叫び 私設秘書を呼び出して隠蔽工作を頼みます。そこに、リチャードの妻、ジェーンの夫、私設秘書の母の看護師が次々と現れ、その間にも、ホテルの支配人やウェイターやメイドが入れ替わり立ち替わり出入りしてくる。そのたびに、「死体」を抱えたリチャードと私設秘書は、窮地をつくろうために嘘をつき、その嘘がバレそうになるとさらに嘘を重ねていき、もう、誰に何て説明していたかがこんがらがって、ぐちゃぐちゃにがっかり

 畳み掛けるようなその場しのぎの言い逃れによって、目まぐるしく変わっていくプロット。馬鹿馬鹿しさを突き詰めた緻密な脚本が、素晴らしく良くできていますパチパチ こじれにこじれたプロットが、最後の10分ぐらいであっという間にすべて丸く収まるという神ワザ的結末もお見事クラッカー感動して涙するとか深く考えるとか社会的メッセージとか、気持ちいいくらいゼロでしたキャッ

 

 加藤健一のリチャードは、我が身第一、自分の醜態をもみ消すために私設秘書をいいように扱い、時にパワハラめいた圧力をかけ、すました顔で口からでまかせをスラスラと発するという、とんでもない政治家冷や汗 逆にいえば良くも悪くも機転が利く、なかなかやり手の男です。真面目な顔してとぼけて見せ、横柄さと真剣さといい加減さと情けなさをクルクルと演じ分けるところは、カトケンの真骨頂発揮といっていいかも笑顔

 私設秘書の浅野雅博が大変なことになってましたショック 上司の災難のもみ消しを、嫌々ながらも引き受けざるを得なくなるんだけど、やるときは本気で仕事に取り組む几帳面な男静怒 次から次へと降りかかる難題に翻弄されつつ、身を挺して奮闘する姿に大笑い。その彼が次第にリチャード顔負けのテキトーな嘘をついて深みにはまり、ボロボロになっていく変化がまた可笑しいQueenly カトケンとの呼吸もぴったりで、絶妙な間の取り方や微妙な表情の見せ方がホント上手いです。

 

 他の役者さんも総じて良かった。私立探偵のさとうこうじは、途中まで仮死状態という設定なので棺「死体」の状態でひきずられたり踊らされたりと、かなり難しい役どころを面白く見せていて、歌舞伎の「らくだ」を思い出しました。クローゼットのドアが開くとそのフックに引っ掛けられていてドロ〜ンとぶら下がって出るところは傑作うるとらまん ホテル支配人の新井康弘がイギリス人らしい慇懃さを見せつつトボけた感じが良いです。

 

 演出は奇をてらった小ワザは使わず、ウェルメイドプレイの良さを尊重した正攻法な見せ方。福○雄一が作る洋物コメディーとは違って、つまんない日本の流行ネタや楽屋落ちギャグを加筆していないのがgoodクラッカー右から スピーディーな展開なので役者同士のセリフやドア開閉のタイミングの取り方が難しいけど、そこもこなれていたと思います。そして部屋の構造の妙。ここぞというタイミングで窓枠が落ちるところに、スタッフと役者との阿吽の呼吸を感じましたahaha*

 

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