Kさんの最期は看ている方も本当につらかった・・・・・・
肺がん末期の患者Kさん(仮名)が入院していました。
Kさんには息子がいましたが、縁を切っていたので見舞いにきたことはありません。
息子さんからは、延命処置は望まず自然に看取ってほしいと言われていました。
私の夜勤中です。
突然Kさんが真っ青な顔をして廊下を走ってきました。
それまで「痛い」とも「苦しい」とも言ったことのなく穏やかな毎日を過ごされていたKさん。
肺がんでしたので、呼吸不全の症状が突然現れてパニックになったんだと思いました。
Kさんはズボンをおろし、下半身を出したまま廊下に座り込みました。
頭を壁に打ち付けることもありました。
部屋に戻してベッドに座らせて酸素を吸わせようとしますが、マスクを外してしまいます。
私は手を握り、ゆっくり呼吸するように言いました。
ゆっくりした口調で
「ゆ~っくり吐いて~、ゆ~っくり吸って~・・・・・」
Kさんはベッドに横になり、ウトウトし始めました。
そのまま2時間ぐらい私は手を握っていました。
目をつぶっていたままでしたが、時折Kさんは手を握りしめてきます。
私が、手を握っている人が、ここにいることをまるで確かめるように・・・・・
他の患者さんの朝食の時間になり、私は一旦その場を離れました。
しばらくすると、真っ青になったKさんが廊下に出てきて大声をあげました。
私はあわてて病室に行き、Kさんの手を握りました。
Kさんはベッドに横になり、また目を閉じます。
寂しい思いをさせてしまったと後悔しました。
しかしいいわけになりますが、夜勤帯はスタッフが少ないのです・・・・・。
その後、日勤の看護師が来て、2人でKさんの手を片方ずつ握りました。
私たちはもう片方の手で、Kさんの両側から身体をさすりました。
Kさんはそのまま穏やかに息を引き取りました。
私たち看護師2人の手を握りながら・・・・・。
死ぬ瞬間は苦しくないけど、そこまではやっぱりくるしい思いも少しはあります。
その苦しみは、もしかしたら身体的な痛みよりも精神的な痛みなのかもしれません。
そんな時に必要なのは、麻薬でも、言葉がけでもなく、人のぬくもりだったりするのかなぁと改めてこのとき思いました。
私も亡くなるときは、誰かのぬくもりを感じて死にたい・・・・・・・