先月、香川県東かがわ市で「議会基本条例」が水面下で可決されようとしている情報を入手。http://www.higashikagawa.jp/itwinfo/i5555/
去る
214日、同市で開催された「住民説明会」に出席し、225日まで募集されていた住民からのパブリックコメントを市議会へ提出しました。

議会基本条例とは、円滑な議会運営や議員の意識改革という美辞麗句を並べたて、その実態は議会や議員の存在意義が根底から覆されるような危険性を多分にはらむものであり、またその根っこは全国の自治体を虫食む様々な基本条例と同様の代物であると認識しています。

自治基本条例と同様に、最近流行り病のように全国の地方議会でバタバタと可決、施行されているそうです。中には、議会基本条例を自治体での最高規範として位置付けている自治体もあるそうですが、条例に優先制などあってはならない事です。同条例が
自治体の最高規範として君臨し、「自治基本条例」
とリンクした時を想定すれば、大変恐ろしい結果を招くのではないでしょうか。更には住民投票条例や高松市 子ども・子育て条例などとの関連性も大いに危惧すべき点です。
自治基本条例の布石ともいえる同条例を早々と施行した自治体の例では、すでに改正の動きもみられているようです。
現在のシステムにおいても円滑な運営が営まれている議会に、本当にいま「議会基本条例」の施行が必要なのでしょうか。
いま一度、考察する余地はあると思います。

以下に、私が提出した同条例についてのパブリックコメント
(一部)を転載しておきます。
※この条例も、東かがわ市の3月議会で可決の方向で推進されていたので、時間稼ぎのために41
項目に及ぶ質問状形式をとりました。
幸い同市では、今議会へ議案の上程はされておりませんが、全国の自治体として内容の把握と共通認識はしっかりと持っておかねばならないと考えます。

以下転載
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議会基本条例についてのパブリックコメント 
東かがわ市議会は、東かがわ市議会基本条例(案)【解説付き】並びに、同条例を説明する市のホームページで以下のように述べている。議会に関わる条例案にも関わらず、年齢条項や国籍条項、納税義務の有無、その他の項目で、その対象者が誰なのかが明確に特定されないまま制定されようとしている同条例案について、次の通り反対意見を申し述べる。

 また、地方自治法及び議員必携の遵守により、現在の議会システムにおいても正常な機能を果たしていると評価してよい東かがわ市議会の運営において、今なぜ議会基本条例が早急に必要なのかその主体性の説明と責任の所在について、同条例案が可決、成立すると聞いている平成253月議会開会までを期限に、明確な説明を求める。 

1 反対の要旨  
条例には拘束能力があり、議員や議会及び議会事務局はその範囲内だけでしか動けなくなる。条例に記載されていることは必ず実行しなければならないようになり、記載されていないことは実行できなくなる。もし議会を条例で拘束すれば、議員自身も条例で拘束され、これまでの議員活動並びに議会運営の基本方針についても大幅な修正を余儀なくされると懸念する。議員定数や議員報酬に対する費用対効果を大幅に上回る、議員個人及び議会事務局への過重業務の追加を考慮すれば、本来の円滑な議会運営が果たせなくなる事態も十分に考えられ、結果的に議会の崩壊や機能のシャットダウンへと繋がりかねず、自治体としての機能をも根底から揺るがせるような重大な過失をもたらすことに繋がるのではないかと大いに懸念する。 

2 同条例案に関わる事実と反対理由 
1.
同条例案には、東かがわ市民及び市民団体の定義が明確にされていない その対象者が明記されていない事について反対する。 
◆反対理由  
東かがわ市議会基本条例(案)【解説付き】 の(前文)には以下のように記載されている。
>東かがわ市民(以下「市民」という。)から選挙で選ばれた議員により構成される東かがわ市議会(以下「議会」という。)は、同じく市民から選挙で選ばれた東かがわ市長(以下「市長」という。)とともに、東かがわ市の代表機関を構成している。この二元代表制の特性を生かし、2つの代表機関は、ともに市民の信託に応える活動をし、議会は多人数による合議制の機関として、また市長は独任制の機関として、東かがわ市(以下「本市」という。)~


この前文の訂正を以下の通り求める。
 
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(前文)東かがわ市選挙管理委員会が管理する選挙人名簿に登録された、東かがわ市に住所を持つ年齢満20歳以上の日本国民で、その人に係る住民票が作成された日(他の市区町村からの転入者は転入届をした日)から引き続き3ヶ月以上にわたり、東かがわ市の住民基本台帳に登録されている被登録資格をもつもの(以下「市民」という。)から、投票で選ばれた議員により構成される東かがわ市議会(以下「議会」という。)は、同じく市民から投票により選ばれた東かがわ市長(以下「市長」という。)とともに、東かがわ市の代表機関を構成している。 
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また、「住民自治の拡充」、「市民福祉の向上」とあるが、「住民」と明記したり「市民」と明記したりとその対象者についての一貫性がない。
 
「市民」とは、市の選挙管理委員会の選挙人名簿に登録されている有権者を
 
指すものではない。ここでは、国に住む者を国民、県に住むものを県民、市に住む者を市民、町に住む者を町民、村に住む者を村民とするかどうかが問題ではなく、年齢条項を記載しない限りは未成年も市民である。議会運営に関わる条例に「年齢条項」を明記しなければ整合性がとれない。 

「住民」とは、東かがわ市に住民票を置く人の事である。外国人登録の改正により、外国籍の人にも住民票が交付される以上、議会運営に関わる条例に「国籍条項」を明記しなければ整合性がとれない。 

また今後、東かがわ市に本拠地を置く企業やNPO団体、市民団体などが市内外、県内外、国内外から誘致されてきた場合、そこで従事する従業員や運動員は東かがわ市の住民票がなくとも、活動の拠点を市内に置く会社や団体を通じて東かがわ市への納税に貢献している理由から、「市民」という権利がある。 議会運営に関わる条例の対象者が、納税義務者を指すのかどうかを明記しなければ整合性がとれない。 

条例は、地方自治法の範囲内で制定されることは分かりきっているが、東かがわ市では先般、住民投票条例の直接請求が提出されたばかりである。今回は市庁舎に関わる個別設置型の住民投票条例であったが、今後、常設型住民投票条例が提出され可決、成立した場合を想定すれば、議会に関わる条例には市民の定義を改めて明記しておいた方がより望ましいと思われる。
 ※常設型住民投票条例の一例として、神奈川県川崎市では永住外国人らを含む18歳以上に投票資格を認める市提案の常設型住民投票条例案が可決、成立している。※添付資料1

 想定の話をするとキリがないが、今後あらたに施行される他の条例や、改正される既存の条例との関連性を考慮し、それによる弊害をなるべく出さないためにも、東かがわ市議会に関わる条例には東かがわ市民の定義を改めて明記しておいた方がより望ましいと思われる。

 社会経済情勢の変化や多様化する市民社会のなかで、今後の東かがわ市を考える上では、従来の議会運営では考えられないような市民団体及び外部団体からの行政訴訟や直接請求権が行使される可能性は十分に考えられ、今後どういった請求がなされた場合においても、自治体の一翼を担う議会として不測の事態に耐えうる事前の用意は十分にしておかなければならないと考える。
 以上、議会運営に関わる条例の対象者をあらためて特定せずしてそれが制定されることについて反対する。

 
2.
日本国憲法及び地方自治法の遵守とある限りは「国民主権」を明記しなければならない。
「市民主権」という政治用語の引用について反対する。
 ◆反対理由  
日本国憲法を遵守するのであれば「国民主権」と明記しなければならない。
日本国憲法第
1条には「国民主権」が定められているからである。ところが同条例案を説明する市のホームページには、以下のように明記されている。
東かがわ市議会は、市民主権を基本とし、市民に開かれた議会及び市民参加を推進する議会を目指して活動するため、議会運営委員会で議会改革に関する議論を重ねてきました。そのなかで、議会改革の指針となる「議会基本条例」を策定する必要性を強く感じ、そのために議会基本条例検討協議会を設置しました。※添付資料2 とあるが、

まず「市民主権」とは政治用語である。「市民主権」や「補完性の原理」という政治用語は、法政大学名誉教授の松下圭一氏が「市民自治の憲法理論」という著書で提起した「機構信託論」に基づく考え方である。
これは個人
(すなわち市民)など少数派意見の持ち主が実現できないことは、すべて地方自治体や政府にカバーさせ奉仕させるという考え方が基本である。基礎自治体が無理ならば県に、県が無理ならば国に、更には国際社会にカバーさせるという考え方は、挙句の果てに「地球市民」、「宇宙市民」などという訳のわからない主張を展開し、既に憲法で補完されている基本的人権の尊重をさておき、「市民主権」の主張を優先せざるを得なくなる可能性をはらんでいる。
これは、本来の社会のあるべき姿である「自助・共助・公助」の考え方とは大きく相違する。
 公平、かつ適正であるべき条例を制定するに際し、偏った考え方を踏襲してはならない。

 また同条例の説明をするうえで、一方では「国民主権」と明記し、また一方では「市民主権」という偏った政治用語を引用しそれを示唆させ、表示方法を統一せずに話をすり替えること自体も問題視するべき点である。 以上、同条例案には「国民主権」と明確に明記しなければならず「市民主権」を基本とすることについて反対する。 議会基本条例 パブリックコメント  第3.質問事項 へ続きます。