70歳代半ばで、トリプルネガティブ乳がん、局所再発、鎖骨上リンパ節転移再発の方の治療に携わらせていただきました。
PD-L1抗体製剤+化学療法の併用を既に始めておられ、続きで2ヶ月間行いました。
原発巣の縮小、リンパ節転移の縮小を確認しました。
強い皮膚炎の副作用が出たために、治療変更か、手術かを検討しました。
あくまでも私の、切除不能・転移・再発トリプルネガティブ乳がんの治療戦略なのですが、、
全身療法で原発巣・転移巣共に一気に縮小させる。
転移が消失してしまえば、経過観察か、場合によっては放射線照射、縮小しても残っている可能性があれば、最小が得られた時点で、原発巣・転移巣共に根治切除を行います。
この方は副作用により、現治療を中断する必要がありました。
その時点で、縮小を確認して、根治切除出来ると判断しました。
ただ、さらに縮小するなら別の全身治療への変更が良いかも知れません。
でももし別の治療に変えて奏功しなかったら、根治切除出来るかもしれない1回限りのチャンスを逃してしまうかも知れません。
そこで患者さんと相談して、手術を行う事に決めました。
転院されてから2ヶ月での手術でした。
最終病理結果では、原発巣のがん遺残は乳頭部に約6mm、皮膚浸潤+、リンパ管侵襲+、脈管侵襲ーでした。
がんと切断面の最小距離は25mmで、切除断端陰性でした。
鎖骨上リンパ節転移は、上内側部の転移にがん遺残あり、下外側部でがん遺残無しでした。
当院初診時の局所CT画像です。
以下は、治療開始から7ヶ月後、根治手術から5ヶ月後の局所CT画像です。
局所の再燃はありませんでした。
当院初診時の、上内側部の鎖骨上リンパ節転移のCT画像です。
こちらは最終病理診断で、がん細胞の遺残がありました。
よって、今回摘出しておいて良かったです。
手術5ヶ月後の同部のCT画像です。
今の所再燃は見られません。
その尾側外側部の鎖骨上リンパ節転移です。
こちらは最終的に、病理学的にがん細胞の遺残はありませんでした。
手術5ヶ月後の同部のCT画像です。
こちらも今の所再燃は見られませんでした。
今後この方が、このまま長期無病状態に入られるのか、あるいは何処かに再燃してくるのかは分かりません。
しかし、がん細胞が原発巣やリンパ節に遺残していると言う事は、その治療が効かなくなった時点で、再度広がっていきます。
少なくとも私は、無病状態の先に根治(あるいは完治)の可能性があると信じています。
よってこの方は、根治に向かわれるチャンスを手に入れられたと私は考えています。
この方は無病状態で、誕生日を迎えられました。
おめでとうございます。
これからもこの方が、ご家族様や周りの方々と、元気に幸せに過ごされる事を、心より願っています。