先に、活性型ビタミンDの摂取と、乳がん発生、進行乳がん(転移乳がん、命に関わる乳がん)の発生についてあまり関係が無さそうである事を述べました。
日本人については、血清中のビタミンD濃度とがんの発生について研究された報告があります。
the BMJ, 2018, 360, k671
日本人の3,301人のがん患者さんと、4,044人の対象との比較です。
血清ビタミンD濃度は、季節によって変動する様で、血清濃度の低い季節から、高い季節4つの季節に分けて、がんを発症した方々と、発症していない方々の、血中ビタミンD濃度を比較しています。
それ以外の細かい説明は省略します。
すべてのがんの比較です。
がん全体の検討では、血清ビタミンD濃度が少しでも高い群が、がん罹患リスクが低い様です。
以下はその中でも、乳がんの罹患リスクを見た部分です。
様々な条件を調整してみると、有意差は認められませんでした。
つまり、血清ビタミンD濃度が高くても、乳がんの罹患リスクは下がらない、と言う結果です。
それでは血清ビタミンD濃度が高いと、どのがん種で罹患しにくいのでしょう。
それは肝がんでした。
ウイルス肝炎の有無に関わらず、血清ビタミンD濃度が高い方が有意に肝がん罹患リスクが低下する様です。
しかし、肝がんはそもそもほとんど原因が限られています。
先のウイルス性肝炎か、アルコール性肝硬変、NASHと呼ばれる脂肪肝等がほとんどの肝がんの原因です。
それらに関連のある方は、ビタミンD摂取は有効かも知れません。
しかし、それ以外の方はビタミンD濃度が低くても、肝がん発症はほぼ心配無いかと思います。
今回検討されたそれ以外のがん種では、すべてビタミンD濃度による罹患リスクの差は認められませんでした。
以上より、日本人においても、血清ビタミンD濃度と乳がんに罹るリスクには関係ない様です。