これまでになされている様々な基礎研究の集積と、自らの多くの臨床経験から、特に乳がんの肺転移は根治する可能性が高い、と私は考えています。
先に経験した8,000個以上の肺転移の方は、最初ご主人とお二人でお越しになられ、病状をひと通り把握された時に、「それでもできれば治してほしい。」と申されました。
はじめにこの画像を見た時に、私が感じたことは、実は「なんとかなるかもしれないな。」でした。
「私の病状把握が正しければ、治る可能性は充分ある、チャンスはけっしてゼロではない。」と、なぜか自信めいたものを感じました。
原発巣もかなり病状が進み、実臨床では、途中山あり谷ありの様々なドラマがありました。
今現在の肺のCT画像です。
この方の肺転移はすべて完全寛解に至りました。
初診より3年、切除不能原発巣の根治切除より、およそ2年を経過しました。
腫瘍マーカーは、手術後に基準値内に低下し、今も基準値内を維持しています。
(図は以前講演会で使用したものの抜粋なので、術後1年3ヵ月までの経過しか示していませんが、その後も基準値内を維持し続けています。)
原発巣・遠隔転移巣共に再燃なく、今も元気に笑顔で過ごしておられます。
医学的には、根治したかどうかが重要なのかもしれませんが、私が最も大切だと思うことは、この方は乳がんのない(検出されない)状態で、今現在を過ごしておられる、と言う事です。
完全寛解に至ったポイントは様々ありますが、一つだけあげるとすれば、無治療で私のところにお越しになられたことかな、と思っています。
もちろん、前治療が入った後に、私のところに来られて、完全寛解あるいは無病状態に到達されている方もたくさんおられます。
しかし、薬が入った分だけ、その可能性は下がる傾向にあると思います。