こんばんは、はるとです。

 

きょうも、ひとりぶんの転職の話をさせてください。

 

思い出したのは、31歳の男性のこと。

 

学習塾の講師をしていた人です。

 

 

大学時代のバイトがきっかけで、そのまま社員になったそうです。

 

分からなかった問題が解けるようになる。志望校に受かって、笑顔で報告に来てくれる。

 

その瞬間に、やりがいを感じていたといいます。

 

 

ただ、勤め先は進学実績を看板にする塾でした。

 

難関校合格者数、成績アップ率、地域トップ。

 

教室の壁一面に、合格者の名前がずらり。

 

保護者は、その実績を信じて子どもを預けていたそうです。

 

 

その分、実績を出すためのプレッシャーは強かったといいます。

 

受験生は毎日通塾。休日も特訓。年末年始も講習。

 

体調が悪くても、「本番は待ってくれないよ」の一言。

 

講師にも「生徒を休ませるな」という空気があったそうです。

 

 

真面目な中学3年の男の子がいました。

 

第一志望は難関校。模試の判定は、ぎりぎり合格圏。

 

本人も親御さんも、強く合格を望んでいたといいます。

 

 

教室長は、彼にこう言ったそうです。

 

「この子が受かれば、来年の宣伝材料になるから」

 

「絶対に落とすなよ」

 

 

毎日、その子につきっきりで教えたそうです。

 

授業後も残らせて、追加の課題を出す。

 

眠そうにしていても、「今頑張らないと後悔するよ」と励ましていたといいます。

 

最初のうちは、生徒も乗り気だったそうです。

 

 

でも、冬に入ると様子が変わってきました。

 

授業中に、ぼーっとしている。同じミスを何度も繰り返す。手が震えている。

 

「最近、眠れてる?」と聞くと、返ってきたのはこの言葉でした。

 

「寝ると勉強時間が減っちゃうので」

 

 

一日4時間も眠れていないようだったそうです。

 

彼は、休むよう伝えました。すると、教室長に呼び出されたといいます。

 

「余計なこと言うなよ」

 

「本人も親も、合格したがってるんだから」

 

 

その子の保護者は、面談のたびに「先生のおかげで頑張れてます」と、頭を下げてくれていたそうです。

 

その言葉が頭をよぎるたび、休ませることがますます言い出しにくくなったといいます。

 

合格を願う生徒の気持ちと、実績を欲しがる教室長の思惑。

 

その板挟みに、その子は立たされていたんです。どちらも「その子のため」だと言いながら。

 

 

面談での第一声は、「あの子を、追い詰めかけたと思うんです」でした。

 

私は、こう聞き返しました。

 

「休むよう伝えたのは、あなたです。追い詰めていたのは、誰ですか?」

 

答えは、返ってきませんでした。

 

 

——ここが、いちばんの分かれ目でした。

 

 

「本人が望んでる」という言葉は、都合よく使い回されがちです。

 

でも、限界のサインが出ている子に、休息より勉強を選ばせ続けるのは、望みの尊重じゃありません。

 

実績のために、そのサインを見て見ぬふりしているだけなんです。

 

 

彼が次に選んだのは、少人数制で、体調管理まで指導方針に含む個別指導塾でした。

 

合格実績を看板にせず、一人ひとりのペースを大切にする塾です。

 

 

年収は、ほぼ変わらなかったそうです。

 

面接で前の職場の話をすると、担当者はこう答えたといいます。

 

「うちは、休ませる判断も講師の仕事のうちです」

 

その一言で、決めたそうです。

 

 

生徒の手が震えているのを見過ごすことは、もうありません。

 

一年ほど経って、彼はこう言っていました。

 

「休ませることも指導のうちだと言い切れる職場で、よかったです」

 

面接では、前の塾での出来事も正直に話したそうです。担当者は、「実績のために生徒を追い詰める塾は、長い目で見ると必ず信頼を失いますよ」とだけ言ったといいます。その一言に、迷いが消えたそうです。

 

 

あの生徒がその後どうなったのかは、いまも分からないそうです。

 

それでも、次に手が震え始めた生徒を、迷わず休ませられるようになりました。

 

 

いま、誰かの限界のサインに気づきながら、何も言えずにいる、あなたへ。

 

気づけたあなたは、間違っていません。

 

それを見て見ぬふりしろと言う組織の方が、優先順位を間違えているんです。

 

気づいた人が声を上げられる場所を、選んでいいんですよ。

 

では、また明日。

 

 

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【今日のブログのおまけ】

「実績より人を優先する職場の見分け方」は、私が本業で運営しているサイトにまとめています。

 

元面接官として、転職サービスを実名で辛口レビューしています。

よかったら、のぞいてみてくださいね。

 

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