おはようございます、はるとです。

 

「お前も、もっと厳しく部下を育てろ」

 

送別会の出口で握手を交わしながら、その部長が最後に残した言葉だそうです。

 

お話を伺ったのは、30代の男性でした。

 

勤め先には営業部門があり、定年を迎えて去っていくのは、在籍30年を超える営業部長でした。

 

売上は社内で一番。大口の取引先との付き合いも長く、社長からも厚く信頼されている方です。

 

送別会はホテルの宴会場を借りて盛大に催され、部下は全員が参加を求められたといいます。

 

けれど、その部長を心から見送りたいと考えている人は、ほとんどいませんでした。

 

数字に対して容赦のない方でした。目標に届かない社員を、みんなの前で怒鳴りつける。成績が振るわないと椅子に座らせない。営業車の鍵を取り上げて、歩いて契約を取ってこい、と告げたこともあったそうです。

 

辞める人が出れば、根性がない、と笑う。休職した人のことは、会社に迷惑をかけて逃げた、と表現していました。

 

その部長のもとで、何人もの社員が去っています。体を壊した方も、自信をなくした方もいました。

 

そして、ここが今日いちばんお伝えしたい点になります。

 

会社は、売上を上げているその部長を守りました。

 

■ 「こんな理由で辞めていいのか」という問いは、答えが出ません

 

上司 嫌い。上司 うざい。上司 怖い。

 

こうした言葉で検索する方は、たいてい同じ場所で足が止まっています。

 

これくらいで辞めるのは逃げではないか。どこへ行っても合わない人はいる。自分が弱いだけではないか。

 

この問いに答えは出ません。辞めてよい理由かどうかを、誰も判定できないからです。

 

ですので、判定できるものへ置き換えます。

 

その上司と、あと何年一緒に過ごすことになるのか。

 

嫌な上司の下で残り1年なら、しのぐための工夫を組む価値があります。残り10年なら、それは上司の問題ではなく、その会社にいる限りついてくる労働条件です。

 

同じ「嫌い」でも、意味がまるで変わってきます。

 

順に見ていきましょう。

 

■ 【判断軸①】「されたこと」と「されそうなこと」を2列に分ける

 

はじめに、嫌いの中身をほどきます。紙に線を1本引いて、2列つくってください。

 

左の列には、この1か月で実際に言われたこと、されたことを、日付とともに書きます。

 

右の列には、いつか言われそう、されそうだと感じていることを書きます。

 

書き出すと、たいてい片方へ偏ります。

 

右ばかりが埋まるなら、いまあなたを削っているのは予期のほうです。上司 怖い、と調べる方の多くがここにいます。

 

実害が小さいという意味ではありません。身構え続けるのは、実際に怒られるよりくたびれます。

 

ただしこの状態は、顔を合わせる量を減らすと和らぎます。報告を口頭からテキストへ移す。相談する相手を何人かに散らす。それだけでも右の列は薄くなっていきます。

 

反対に、左の列が埋まるなら実害です。その場合は次へ進んでください。

 

冒頭の部長のもとにいた方たちは、左が埋まるタイプでした。全員の前で怒鳴る。椅子に座らせない。鍵を取り上げる。予期ではなく、現実に起きたことです。

 

■ 【判断軸②】その上司は、あと何年あなたの上にいますか

 

ここからが本題です。

 

上司そのものは変えられません。けれど、その席の任期は調べられます。

 

見るのは3点です。

 

1つめ。前任者は何年でかわりましたか。3年前後で入れ替わってきた席なら、いまの上司もいずれ動きます。10年同じ方が座り続けた席なら、動きません。

 

2つめ。自分の側に異動はありますか。定期的な異動がある会社なら、自分が先に抜ける道もあります。そうした仕組みがなければ、この手は使えません。

 

3つめ。その上司の年齢と役職です。定年まであと何年か。役職定年はあるのか。ここは調べれば分かります。

 

出てきた数字で、打つ手が変わります。

 

1年以内に外れそうなら、耐えるのではなく、しのぐ形を組みます。接する機会を減らし、評価に響く場面だけ丁寧にやる。終わりが見えていれば、人は驚くほど持ちこたえます。

 

3年以上、あるいは見通しが立たないなら、それはもう人の問題ではありません。その会社で働き続ける限り、ついてくる条件です。

 

ここを「嫌な上司がいるだけ」と呼び続けてしまうと、判断が何年も遅れます。

 

先ほどの会社では、部長は定年まで席に残りました。途中で外れる要素は、はじめから一つもなかったわけです。

 

■ 【判断軸③】会社がその上司をかばっていませんか

 

任期を延ばす要素が、もうひとつあります。

 

会社がその上司を守っているかどうかです。

 

見分け方はかんたんで、苦情が上へ届いたあとに何が起きたかを見ます。

 

誰かが相談した。人事も知っている。役員の耳にも入っている。それでも配置が変わらないなら、会社はその方を必要な人材だと判断しています。

 

冒頭の部長がまさにそうでした。何人も辞め、体調を崩す人が出ても、会社は手を打ちませんでした。売上を上げていたからです。

 

こうなると任期は延びます。周りが我慢するほど、その状態は保たれてしまいます。

 

逆に、会社が問題として扱っているなら、任期は縮みます。注意が入った。担当が減らされた。下に人が付いた。そういう動きがあるなら、待つという判断に根拠が生まれます。

 

つまり見るべきは、上司の性格ではありません。

 

その上司を、会社がどう扱っているかです。

 

性格は変わりませんが、扱いのほうは事実として観察できます。

 

■ いま、上司が嫌いで会社に行きたくないあなたへ

 

送別会の続きを書いておきます。

 

会場では功績をまとめた映像が流れました。大きな契約。表彰式。社長との握手。

 

社長は挨拶で、厳しさの中に愛情がある人でした、と述べ、拍手が起きたそうです。

 

司会の方が、部長との思い出をお話しくださる方はいませんか、と会場へ呼びかけました。

 

誰も手を挙げませんでした。沈黙が広がり、最後は役員が指名されて話したといいます。

 

翌日、部長の席は空いていました。

 

そこから起きたことが、すべてを物語っています。

 

部署の空気が目に見えて軽くなり、社員同士の会話が増え、質問する声が聞こえるようになり、定時で帰る人まで出てきました。

 

ひとりいなくなっただけで、職場の音が変わった。相談者ご本人の言葉です。

 

数週間後、以前に辞めた後輩から連絡が入ったそうです。毎朝のように吐いていた後輩で、退職を切り出したら5時間説教され、最後は退職代行を頼んで二度と会社へ来なかった方でした。

 

送別会、みんな泣いてましたか。

 

誰も泣かなかった。そう返すと、そうですか、とだけ返信があったといいます。

 

ここに、この記事の答えがあります。

 

待てば空気は変わります。ただし、待てる人と待てない人がいます。

 

後輩のほうが先に限界を迎えました。それは弱さではなく、任期が長すぎただけのことです。

 

ですから、根性の話にしないでください。

 

あと何年なのかを調べて、その年数に自分が耐えられるかを見る。それが判断になります。

 

転職する場合の伝え方にも触れておきます。面接で上司の話をするとき、人柄の話にすると通りません。高圧的な上司で、という言い方では、また同じ理由で辞めるかどうかを面接官が読み取れないからです。

 

仕組みの話へ言い換えます。評価が上司個人の感覚で決まる作りで、成果の測られ方が合わなかった。この言い方であれば、これから何を基準に会社を選ぶのかまで届きます。

 

今日やることは、辞表を書くことではありません。

 

紙に3つ書いてください。前任者が何年で交代したか。自分に異動はあるのか。上司の定年まであと何年か。

 

分からない項目は、社内の方との雑談で出てきます。3つ埋まった時点で、答えはほとんど見えています。

 

決めるのは、そのあとで構いません。

 

そのうえで、次の一歩の話も少しだけ。

 

離れたほうがいいと分かっていても、相談先が決まっていないなら、現在地の確認から始めれば十分です。

 

▼ 30秒でわかる転職サービス診断

 

もう動くと心が決まっていて、評価の仕組みや上司との距離で見比べたいなら、こちらにまとめてあります。

 

▼ タイプ別おすすめ完全ガイド

 

私は普段、元面接官として転職サービスを実名でレビューするブログを書いています。異動の頻度を選考の場で確かめる方法も、あちらに置いてあります。

 

では、また明日。