仕送りのひと | 【asa】晩酌と音楽と小説と日々のブログ。そしてランチョンマットと食器が好き【blackout】

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酒と音楽と料理と読書と現実逃避と絵空事が大好きなんですが
大体毎晩晩酌で記憶なくしblackoutに陥ります。
翌朝シラフ状態で自分の酩酊時を振り返る為の自分の為の記録。

確か肉屋のひとが連れてきた一人だった気がする。
30代前半くらいの男性。
若いのに少しくたびれたスーツで、髪も長め、長身だけどなんか冴えない。
彼も誰の客とういより誰でもいいから話聞いて欲しいといった人だった、


当時大井町には日本人のキャバクラは2件しかなく、他にはフィリピンパブがちらほら。
りんかい線もまだ開通してなく、今より栄えてなかったこの街で、数少ない店が客の取り合いをしていた。


仕送りのひとはそのフィリピンパブに彼女が勤めているらしく、名前のまんま、その彼女の家族に仕送りをしていた。
月に10万送っていて、他にも彼女の母親が病気がちだったり、おじいちゃんが体が不自由だったりで、ちょこちょこ仕送りしてるそうだ。
そんなに儲けてなさそうなこの人がどうやってそんなお金を工面してるのか不思議だったけど、彼自身は実家住まいで家にお金も入れてないから大丈夫とのこと。
私含めホステス達はみんな、それ騙されてるからやめときなと諭した。
しかし仕送りのひと曰く、彼女はそういうよく聞くタイプではないのだと、その根拠と思える話をたくさんしてくれた。


じゃあなんでキャバクラに来るのかというと、彼女との相談話がしたくて。
相談内容はいつも同じ。
彼女がやらせてくれない、キスすら中々させてくれないという相談。
今度彼女と○○行くんだけど、どんな風に持っていけば今度こそキメられるだろうか、という相談だった。
私達は無理だよと思いながらも、仕事だし時間過ごさせなきゃだしで、叶わないであろうデートプランを提案した。


ある日店がとても暇な夜、仕送りのひとがきた。
他に客もなく暇だったため、そこにいたホステスの多くがついた。
店長の気まぐれな計らい。
その日仕送りのひとはいつもの相談を始めながらとうとう泣いてしまった。
こんなに思ってるのにどうしてうまく伝わらないんだろうかと。
すると驚いたことにそこにいたホステス達の多くが貰い泣きをした。
仕送りのひとに呆れながらも、一途に思い続ける彼の姿に誰しも経験のある辛い恋心を思い出したのかもしれない。
安いメロドラマを見ているかのように感情移入してしまった。
そしてみんな口を揃えて言った。
騙されてるんだよと。



顔も知らない異国の彼女に、ホステスとして学ぶことは多々あったはずだった。
でも私達はいつの間にかみんな仕送りのひとの味方になっていた。
その後仕送りのひとの恋がどうなったかは知らない。