スケジュール帳の空欄に「ライブ本番」とか「コンテスト〆切」とか、いわゆる「目標日」を記した瞬間から、タタカイは始まる。


ギターを弾いたり、
スケッチをしたり、
セリフを覚えたり、
取材をしたり、
まるで決闘の時を迎えるガンマンが、ゆっくりと銃に弾丸を詰める様に、
スケジュール帳に赤ペンで書かれたその日まで、
自分の満足いくカタチを得るために、
完成を目指してひたすら、
準備する。


そうこうするうちに「その時」はやってくる。
「リミットがキちゃってもう手を加えられない!」っていう状態か、
「満足すぎて、もう手を加えられない!」っていう状態か、
いずれにせよ、
いよいよヒトにジブンのモノをお披露目する時、
つまり、ヨノナカに向かって発表をする時っていうのは、とっても緊張するものだ。
これまでの準備が雲散霧消と消えてしまったらどうしよう、いやいや、それよりも、
何かスゴいモノを動かせるんじゃないか、それとも…
期待と不安でもう胸はどっきどきなのだ。
そんな気持ちを振り切って、

イラスト投稿サイトの「投稿する」ボタンをマウスでカチっ!
あるいは、
バンドメンバーと顔を見合わせてワン、ツー…と無言でスタートの合図をかわす、
あるいは、
煌々と照明の当たるステージに、観客の目の前に、飛び出していく。
銃の引き金を引くように!


そこからはもうあっという間。
引き金と連動した撃針は弾薬の雷管をたたき、薬莢に込められた火薬に引火して、弾丸をぶっ放す。

モノを創るコトはちょっと、銃を撃つコトと似てる気がする。

でも、ホンモノの銃と、この、モノ創りGUNの180度違うところは、後者の銃は平和を創る銃だってことだ。

撃ちだされた「作品」という弾丸は、
ある時は多くの観客のココロを揺さぶり(ライブとか映画とかね!)
ある時はグルメな舌をしびれさせ(料理とかね!)
ある時は目にしたヒトをその場に釘付けにし(絵画とか彫刻とかね!)
そしてまたある時は気になるあの子のハートを撃ち抜いたりするんだ(笑 ラブソングとかね!)


「アートはココロの栄養だ」って、『レミーのおいしいレストラン』のスタッフは言っていたけど、そういう栄養を、生きるための元気のモトを、平和の弾丸はヒトのココロに植え付けるんだ。


展示会まであと少し。
明日も弾の準備をしよう。
ただ今白熱中のワールドカップ。
先日、とある外国人選手について、お昼のニュースで報道されていました。

同選手、国歌斉唱の時にお泣きになったのです。
移動しながら11人の顔を映していくカメラ。
皆、上目遣いで、張りつめた表情をしている。
そんな中、1人だけ、その選手はうえっくうえっくと、顔を歪ませているのです。

なんでも、憧れのブラジルと対戦できるコトがすごくうれしかったんだとか。


そういうの、すごく珍しかったのでしょうか。
日本のテレビスタジオの人達は、
「まだ開会式なのに!」とか、
「これ、試合終わった後の映像じゃないんでしょ??」とか、
驚きのコメントをしていました。



でも、考えてみて。

大入りの巨大スタジアム、
まばゆいばかりの照明、
観客の大声援。
目の前には夢にまでみた強豪チーム。
しかも、そのチームと、これから1つのボールを奪いあうんだ。
彼らの汗や、あつい息づかいを間近で感じ、カラダとカラダでぶつかりあうんだ。

選手の気持ち、ソウゾウしただけで、トリハダじーんです。
もう、こっちも涙が出てきそうじゃないですか。
とっても、美しい話じゃないですか。


でも、スタジオの雰囲気はそんな感じじゃないんです。
なんだか、おもしろ半分な空気。
「みましたか?みなさん!カレ、泣いてますよ!まだ試合始まる前なのに、ですよ!これ、試合開始前の映像なんですよ!?みてますか?みなさん!」
そんなコメントはなかったけれど、あの場の空気、そんな風に見えました。


その選手が、憧れの対戦相手を目の前にするまで、どれだけの練習を積んできたか。
サッカーにどんな情熱を注いできたのか。
試合の前日、ベッドに入る前はどんな気分だったのか。

そういうコトにはだーれも触れない。


「試合会場で、まだ(試合としては)何も始まってないトコロで号泣した、珍しい選手」

とっても表面的なブブンだけ、取り上げて、
もっとディープで、ニンゲン的で、アツいブブンにはほっとんど触れない、この報道。


あまりにも、うすっぺらすぎて。
とても残念。

バイトに向かう自転車走行中。
クルマにひかれたネコの死体を見た。


こんな悲惨な姿になる前、カレはどんなネコだったんだろう。

愛らしい瞳で、ヒトを魅了するかわいいネコだったのかな。
素っ気ないそぶりの愛想のないネコだったのかな。
好物は鰹節?サカナの缶詰?それももしかして、ドッグフードだったり?(以前、家で飼っていた犬さんの好物はネコ缶だった)
恋猫はいたんだろうか、雨は苦手だったんだろうか、ねこじゃらしにじゃれつくタイプだったんだろうか。


ジブンの体重のん十倍ある、鉄のかたまりの直撃を受けて、内蔵と一緒にジブンの魂も吐き出して、肉塊になってしまったカレの、生前は、もはやソウゾウするしかないんだ


そう思うと、悲しくなってきて、肋骨のアタリがひゅんと冷たくなるのを感じた。