第四話 「前田日明の理想」
K-1の「ジェロム・レバンナVSスタン・ハンセン」という超度級の試合決定と、三沢光晴の対戦拒否により、トーンダウンした感の否めないリングス・横浜アリーナ大会が開催された。
夢と消えた「前田日明対三沢光晴」に替わるメインイベントのカードはいまだ未定のまま、大会当日を迎えることとなった。
苦情を未然に防ぐために、前売りチケットの払い戻しが行なわれたが、それでも大入りマークを付けられる1万2000人を超える観客が、雨中横浜アリーナへ集まった。
「メインの前田の対戦相手は一体誰なんだ!?」
そこに集まった観客のほとんどの関心事は、そこに集中していた。
大会は白熱の好試合が続出し、高いムードのまま、いよいよメインイベントを迎えた。
「前田日明選手の入場です!」
力強いアナウンスとともに、颯爽と入場してくる前田日明。
場内のボルテージは一気に高まる。
そして、前田がリングイン。
観客たちが前田の名前を連呼する。
鳴り止まない観客たちの声援。
すると、前田は試合前には珍しく、リングアナウンサーからマイクを要請した。
「前田が何かを話す!?」
観衆の声はさらにその度合いを増した。
「みなさん、本日はご来場いただき、ありがとうございます」
そして前田は観衆を見渡し、次の言葉を発した。
「NOAH三沢選手との対戦は実現しませんでした。期待していただいたファンのみなさま、申し訳ありません。
しかし、本日私の心意気を理解していただいた大物プロレスラーが急遽出場していただくことになりました」
ドッと盛り上がりを見せる横浜アリーナ。
「これが、…この試合が、私、前田日明の理想とする大会の礎となることを願っています!」
そして、マイクを受け取ったリングアナウンサーからのコール。
「NOAH秋山準選手の入場です!」
その瞬間、横浜アリーナには天をも突き刺すほどの大声援が爆発した。
白いガウンに身を包んだ秋山の表情は、今まで見たこともないほどに険しい。
それを見つめ返す前田の表情も、真剣そのもの。
「秋山!?」
“渦中の人”であった三沢が声を荒げた。
前田からの対戦要請は断ったものの、リングス中継を見入っていた三沢に衝撃が走った。
NOAHはちょうど一週間前から束の間のシーズオフに入り、三沢は秋山と一切連絡をとっていなかった。
「秋山…なぜ…」
テレビ画面では既にリングインしている秋山の姿。
三沢はその画面をただ見つめるしかなかった…。
展開予測不能の試合が始まった。
ホームグラウンドであるだけに、前田に対する声援が圧倒的。
アマレス出身の秋山らしく、手四つからの静かなスタートを切った。
と、次の瞬間、互いの胸が触れ合った後、二人はすぐに離れた。
そして間髪入れず、前田の右ハイキックが飛んできた。
それを間一髪かわした秋山がそのまま高速タックル。
あっという間にマウントポジションをとった。
秋山の格闘センスに、リングスファンが悲鳴を上げる。
ここから秋山のパンチのラッシュ。
しかし、前田もまた完璧なまでのディフェンスを見せる。
パンチのスピードがやや落ち始めた秋山。
その瞬間、巧みに体勢を入れ替える前田。
と同時に即座に腰を引き、身体を離す秋山。
試合開始わずか30秒の出来事に、再び沸き返る横浜アリーナ。
秋山の格闘センスに「脅威」ではなく、「喜び」さえ感じたのか、前田の口元が笑みを作った。
「秋山ってのは、意外と格闘技向きかもしれないな…」
練習の合間にテレビに見入る一人の男が弟子にむかって言った。
「将来戦うときが来るかもしれませんね」
「ははは、そりゃないだろう!」
ポカリスエット片手にその男は汗を拭った。
しかし、その男の目は新たなライバルの出現を喜ぶかのように、輝きを増していった。
柔道家・吉田秀彦が不敵に笑った。
第五話 「日本人最強」 に続く…
第三話 「三沢の回答」
NOAH日本武道館事件から三日後の7月10日。
ようやく、三沢光晴が公式の場に姿を現した。
格闘技系・プロレスマスコミを集めての公式記者会見。
会見場に三沢が登場するだけで、多くのフラッシュが瞬いた。
会見における注意事項として、三沢光晴からの報告のみ、一切の質問を受け付けないという異例の説明がなされた。
それでも、そんなことはおかまいなしとばかりに、記者たちはそれぞれが欲する質問を“渦中の”三沢に投げかけた。
「ご静粛にお願いします!」
司会進行役の男性がまず釘を差した。
「本日はお忙しいなかお集まりいただき、誠にありがとうございます。これから三沢光晴よりご報告したいことがありますので、何卒ご静粛にお願いいたします」
三沢に対するフラッシュは止まない。
そして、静かにマイクを握る三沢。
フラッシュはさらにその量を増す。
「本日は、みなさんご承知のことと思いますが、一昨日7月7日日本武道館大会で起きました前田選手からの要請に対するNOAH代表取締役社長・三沢光晴としての正式な回答をさせていただきたいと思います」
そこには一片の緩みもないほどに、三沢の表情は硬直していた。
「リングス前田選手の活躍はこれまでも存じており、非常に尊敬できるファイターであると感じております。そのような彼からの要請は非常に光栄に思います」
「三沢さん、リングスの試合に出るんですか?」
業を煮やした記者が、禁じられているはずの質問を発する。
「質問は一切受け付けません!ご静粛にお願いします!」
再び司会者が声を荒げる。
そして、三沢が意を決したかのようにマイクを近づけた。
「私はプロレスこそ最強だと思っております。そしてその中でも、NOAHマットはその最高峰に位置する団体であると」
その次の三沢の言葉を待つ記者たち。
「ですから、私自信がなんら慌てる必要はないと。会社の代表として、NOAHの仲間たち、多くのファン、馬場さんの教え…これらを全て考えた上での結論としましては…
前田選手からの要請にはお答えできません」
そう発するやいなや、記者たちのフラッシュはさらにそのボリュームを増し、次々に質問を浴びせかけた。
しかし、それらに一切回答することもなく、三沢は会見場を足早に出て行ってしまった。
リングス・前田日明との夢の遭遇は、やはり夢でしかなかったのか…。
記者会見場のざわめきは、しばらく途切れることがなかった。
翌日、各スポーツ新聞トップには三沢・前田交渉決裂との見出しが踊った。
しかし、それは一面ではなかった。
時代は動く。
世界の格闘家たちが何かひとつの光に向かって動き出し始めたかのように。
それぞれのスポーツ紙一面に踊った見出しは衝撃的なものだった。
『K-1・ジェロム・レバンナVSスタン・ハンセン実現!』
K-1ラスベガス大会におけるレバンナの挑発的なコメントに対し、怒りを顕にしたハンセンが、その翌日に行動を起こしたのだ。
「K-1の青二才が何かほざいているようだが、この俺が世界最強の格闘技を教えてやるぜ」
とK-1事務所に連絡を入れてきたのだ。
これを受けた谷川代表の行動も早かった。
即座にレバンナに交渉し、8月の大阪大会での対戦が決定したのだ。
ルールなど詳細は全くの未定。
ここに、互いが「最強」を自負するふたりの男の対戦が正式に決定。
このニュースは瞬く間に世界を駆け巡った。
レバンナの豪腕が勝つのか、ハンセンのラリアットか!
格闘技・プロレスファンたちの耳目は、この一戦に釘付けとなった。
第四話 「前田日明の理想」 に続く…
Mr.プロペラマンのひとりごと 01
ういっす! Mr.プロペラマンだよん♪
なぜこのようなブログを書き始めたのかというと、こういう物語がなかったから。
ただそれだけ。
今はボーダレスの時代になっちゃったけど、俺が中学生の頃なんてさ、新日本と全日本の選手が交わるってことさえ奇跡的なことだったんだ。
何度か実現したけどね(笑)。
その頃って夢があったんだなって思う。
多感な年頃ってこともあったのかもしれないけどね。
そんな夢を今の時代に実現するのは、もはや時代を超えるしかないのかなって思って書き始めたんだ。
でも、こういう物語って、商業出版の世界では到底実現不可能なんだよね、…多分。
物語に登場する人物や団体に承諾を得なければいけないのかな?そのあたりよくわからないけど…。
それならば、ブログという個人サイトなら自由に表現できるかなって。
まあ、そんなことよりも、俺たちが昔味わった「夢」を現代の若い人たちにも味わってもらいたいという思い、そして、少し盛り下がり気味のプロレス界が少しでも盛り上がればいいかな、なんて思っているのさ!(えらいだろ?)
俺の格闘技マニア歴はプロレスから始まったけど、今ではPRIDEやK-1、相撲やボクシングも見てるから、きわめて公平な立場で書いていけると思う。
「こんな対戦カードを見たい!」なんて要望があったら「コメント」に気軽に書き込んでくれ!
みんなの声を反映させながら物語を作っていきたいと思っているからさ!!!
みんなでこの夢物語を盛り上げて、結果的に格闘技・プロレス界が盛り上がってくれれば最高っす!
てなわけで、応援よろしく!!!