夫を起こしても、1時間以上起きられないことがよくあります。２年以上前になりますが、仰向けになっている夫の手を引っ張って起こそうとしても、重たいからびくともしません。子どもの時に酒に酔った父が外出先の道端で仰向けにひっくり返ってしまい、手を引っ張っても起き上がってくれなくて、泣きながら「お父さん起きてー」と引っ張っていた記憶が鮮明に蘇って、ぞっとしました。
先日も、座った姿勢になっても、まだ眠ってしまって、また横になって「むにゃむにゃ」言っていて一向に起きる気配がありません。起きようと努力はしているから「むにゃむにゃ」言っているのですが……
「むにゃむにゃ」言っているのを可愛いとは思えません。ひどい嫁だと思うけれど、なにしろ、起きてくれないとわたしは眠れず… 真夜中になっていきます。無性に腹が立ってきて、強烈な怒りが込み上げてきました。
部屋を出て、一人になって、この強烈な怒りを感じていました。子どもの頃に同じような怒りを感じていたことが思い出されてきました。アルコール依存で酔っ払った父に対して、「お父さんの馬鹿！お父さんなんか死んじゃえばいい！」と怒りを抱いていた自分が見えました。でもそんな感情はいつも押し殺していたから、ずっと思い出したことはありませんでした。
抑圧した怒りは苛立ちを生み、祖母に八つ当たりをしていました。祖母に酷い言動をしていた自分に対しては、強い怒りと自己嫌悪と罪の意識をずっと感じてきました。
いつも苛立っていたのは、本当は寂しかったからなの……
いつも不安で寂しかった……
怒りが自然に収まり、悲しみを感じ始めました。お父さんも、お母さんも、おばあちゃんも、子どもだった自分も、可哀想で寂しくて不安で悲しかった。泣きました。
起きられない夫に対して、いつも腹が立ってしまうのは、酔っ払って動けなくなった父と、夫が重なって見えるのが辛いのだと思っていました。そして、悲しみや寂しさや不安を感じると、怒りで蓋をしていたことに気づきました。
うつ状態だった父の悲しみを感じました。
悲しみ… 苦しみ…
まるで海溝に沈んで行くような深い悲しみ… 息苦しさ…
父は、くる日もくる日もこういう苦しみを感じていたのだろうか。
逃げずに感じよう。
ここで逃げたら、また悲しみに蓋をしてしまうことになる。
２日目の朝、もう耐え切れなくなったとき
「お父さん、もう自分のことを責めなくてもいいのよ！」
と咄嗟に言っていた。
涙が溢れました。
父の死期が近づいても、逝った後も泣かなかった。
苦しんでいる父に、あたたかい言葉一つかけてあげなかった。
そんな自分をずっと心の奥で責めていたことに気づいた。
長年のアルコール依存からやっと抜け出せたときには、父の身体は健康を取り戻すことは不可能な状態だった。
体調が悪くなり入院したときは、病気を改善して再び元の生活に戻ってくるつもりだったのに… 入院後はますます身体を壊していった。
祖母が他界してアルコール依存を抜け出すことができ、やっと親子３人のまともな暮らしが始まったというのに… しあわせなときは、２年少しで終わってしまった。
弱っていく父に、死を予感して、悲しくて寂しくて仕方なかったのだろうけど、父にそんな顔を見せられない。
なにより、そんな感情に向き合えるわけもなく、頑丈に蓋をした。
８ヶ月位だっただろうか… 入院したまま最期を迎えた。
あれほどの苦しみを味あわなければ、人は死ぬことができないのだろうか…
この時にわたしは、病気と病院への恐怖心を植えつけられた。
もうこの治療法では回復の余地はないのだ……
ああ、どうかこの苦しみから解放してくれ……
父の最後の願いは、叶えられることはなかった。
器械で無理やり生かされ、生きながら朽ちていく身体。
母とわたしは、一日おきに着替えを持って病院に行く。
高校一年の秋から、父が逝った４月１日まで。
学校から帰ると、自転車で通う。
長い長い坂を登って、商店街を抜けて、父に着替えを届けに行く。
「父に会いに行く」ではない。
父が日に日に弱っていく姿を直視できない。
だから泣いたことはない。
感情なんて感じたことはない。
父の最期に立ち会った時も、もう今は泣いてもいいんだ… と考えて、泣いたのだと思う。
わっと数分泣いた。感情を感じて泣いた訳ではなかった。
その時を思い出してみても、ドラマの１シーンを見ているようだ。
一緒に立ち会っていた母と叔母も涙ぐんでいるだけだった。
その後は葬儀の準備、親戚への対応に追われ、納骨を済ませ、クラス替えのあった新学期の教室に１日遅れで加わった。
母も仕事に戻った。
この時の1週間の記憶は殆どない。
突然に家族を亡くした場合と違って、闘病生活が長い場合は、悲しみに暮れることはなく、こんなものなのだろう… とずっと思ってきた。
父が最期に悲しみや苦しみを感じていたのではなく、「ありがとう」と感謝しながら生き切ったのだと、気がついた一ヶ月ほど前までは……
自分が悲しみを感じずに蓋をしていたことを、このとき初めて知ったのです。
この気づきがあるまで、感動することが殆どなく生きてきました。
感情を抑圧してしまうと、自分の感情も、人の感情も感じられなくなるものなのでしょうか。
「お父さん、なんにもしてあげられなくて、ごめんなさい。
悲しんであげなくて、ひどい娘でした」
「いいんだよ。直子の気持ちはわかっていたよ」
父の声が聞こえました。
泣いても泣いても、まだ残っている悲しみ……
ふとした瞬間に、こみあげてくる寂しさ……
きっと人は、大切な人を亡くしたら、こうやって悲しみに暮れるものなのでしょう。
４月１日が近づいて来ると、母と「もうすぐお父さんの命日だね」と話していても、４月２日になってから「あっ！ 昨日はお父さんの命日だった！ また忘れていた！」ということが何度もありました。でも、もう忘れてしまうことはないでしょう。
恋人や夫と数時間や数日だけ離れるときに、いつも襲われていた寂しさや不安や恐怖心は、父と離れるときに感じていた思いだったのだ……
恋人や夫が弱っていると不安でたまらなくなるのは、祖母が亡くなる時に父が感じていた思いなのだと思っていたけれど、父が亡くなる時に自分が感じていた思いだったのだ…とようやく気づけました。
いつも、この恐怖心に支配されて理不尽な要求をしてしまい、失敗ばかりして来ました。
こうして悲しみを解放して、放つことができたら、恐怖心も消えていくのでしょう。
今とても悲しいけれど…… 父を愛し、父に愛されている喜びでいっぱいです。
とても悲しいけれど、とてもしあわせを感じています。
お父さん、ありがとう。
今までも思っていたけど、子どもの頃お酒を飲んでいたときには思えなかったけど、
一度も言えなかったけど、
あなたの娘にうまれて、本当によかったです。
ありがとうございます。感謝しています。
おじいちゃんの悲しみ苦しみを一緒に感じてくれたね
ありがとうね
おじいちゃんも 母ちゃんも あなたのことが大好きよ
いつも助けてくれて ありがとうね
今日も すばらしい一日になりますよ( ´ ▽ ` )ﾉ
最後までお読みくださり ありがとうございました
皆様 ご自愛して お元気にお過ごしくださいね
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ﾟ･:,｡ﾟ･:,｡★ﾟ･:,｡ﾟ･:,｡☆ お知らせ ･:,｡ﾟ･:,｡★ﾟ･:,｡ﾟ･:,｡☆
９/２９（日）は、カウンセラー澤谷 鑛先生による
ＴＨＥ ＺＥＮ セミナーVol.2 【万法に証せらるということ】
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☆☆ ＴＨＥ ＺＥＮ ～ZEN mind，Beginner’s mind～ ☆☆
●Vol.1 【自己をならうということ】 東京開催 8月31日（土）
●Vol.2 【万法に証せらるということ】 東京開催 9月29日（日）
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11月９日（土）14:00～ 11月10日（日）13:00昼食後解散
澤谷先生は３０年間カウンセリングを続ける中でこの「禅」の教えに
注目してきました。
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でも受講できます。
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◎会場◎ 中央区産業会館
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