テムズ河の潮汐を眺めつつ -323ページ目

初音さんと雑談

テムズ河出版の入っている建物の入り口で同僚のデザイナーの初音さんに会いました。彼女は自転車で通勤して来て、盗難防止の為に大きなチェーンで手摺に自転車を固定している所でした。前輪と後輪の両方に鍵をかけていました。自転車の前輪は楽に外せますが、後輪を外すのは結構面倒です。それでも鍵をかけて置かないと盗まれてしまうんだって。初音さんは仕上げに自転車からサドルを外しヘルメットを脱ぎました。
 ロンドンに来たばかりの頃にお店の中などで自転車の前輪を担いで買い物している人を見て「何?」と思いましたが。用心深い賢明なサイクリストだったのです。イギリスでは自転車は必ず柵や電柱等動かない物に固定します。日本だととにかく自転車の車輪が動かない様にすれば大丈夫という考えですが、ここでそうしたらきっと自転車丸ごと持ち上げて盗まれてしまうんだろうな。

さて、前置きが長くなりましたが、初音さんについて。彼女が入社したのは去年の9月です。ロンドン在住15年で現在は南ロンドンのブリクストンに住んでいます。かなり危険な地域として悪名高いのですが、初音さんはブラジルのサンパウロ出身なのでそれに比べたら大した事ないのでしょうか。ブラジルにいた頃からデザインの仕事をしているそうで、当時はまだコンピューターは導入されていなかったそうです。
 年齢は不明ですが、最近私の第一印象の30代後半よりはずっと年上なのではという気がして来ました。お肌や首の皺の感じからして。45才位かも知れません。大きめのカールの入った金茶色の髪をしていて化粧っ気がなく、いつもカジュアルな格好でそういえばスカートを履いているのを見た事がないです。強いポルトガル語訛りの英語を話しますが聞き取り易い英語です。独身みたいです。

デザイン部長の一平太さんが休暇を取る時は初音さんが代理でデザインの承認などをします。初音さんのデザイン、私は好きです。ページデザインも、表紙のデザインも。そしてページレイアウトのコンピュータープログラムについても良く知っています。それを知った時はとても嬉しかったです。趣味の問題じゃなくて、基本的なデザインセンスが無い人が同僚だったら正直大変だろうと思うので。
 そして昔テムズ河出版で働いていて今はフリーランスで自宅で働いているあるデザイナーの仕事が嫌いという点でも意見が一致! だって~酷いんだもの。あれはデザイン教育を受けずに自己流でやっているか(センスのある人は自己流でも成長するけど。)、才能はあっても全然自分の仕事に誇りを持たず利益を上げる為に必要最小限の時間と努力だけを費やしてして終わらせた仕事だと思います。

初音さんは他のテムズ河出版のデザイナー達と同じく結構個人主義です。他の部門のようにお茶を交代でいれようと声をかけたりしません。でも冷たい訳じゃなくて、4才の娘の香蓮を一度職場に連れて行った時にはわざわざ持ち場を離れて話しかけに来てくれました。子供好きらしいです。普段も私の仕事関連の質問に親切に答えてくれ、頼りになる同僚です。同性という事も有り、デザイン部門の中で一番話しかけ易い人です。

職業得と職業損

ある特定の職業に就いていると、仕事を離れた日常生活の中でも無意識にまたは誇りを持ってその職業に関連する事象にこだわってしまうという事はありませんか? 例えば洋服の買い物に行くと裏返して縫製を確認したり布をすりあわせる様にして感触を試してしまう服飾関係の仕事をしている人、通りがかりの建物の内壁をコンコンとたたいて壁の材質やら中の見えない柱の数等をチェックしてしまう建築関係の人などです。

仕事で得た専門知識が私生活で役立つ時もあります。グラフィックデザイナーの私が「役得(というか職業得)!」と思うのはコンピューターでの画像処理の技術です。デジタルカメラの写真をアップロードしたりインターネットの写真屋さんに現像に出す前にクロップしたり露出を調整したり赤目やにきびなどを修正したり出来ます。他には衣服や家の周りの物の色、材質、組み合わせ、配置が全体で調和する様に選ぶ事が出来ます。

逆に知識があるからこそ気軽にやり過ごせなくて困る事もあります。例えば、ある内容の本を探していてもデザインが酷過ぎるとそれが気になったり、時計を買おうとしても文字盤の数字の書体や位置が気になってなかなか買えない・・・。また、以前家の居間の壁に3つの横長のCDの棚を漢字の『三』の様に設置したのですが、事前に巻き尺で間隔を測ったのに完全に等間隔にならなかったのが見えてしまったり。5ミリずれていたのです!

知らなければ、見えてしまわなければ楽なのにという事もあるけれど、仕事を通じて得た知識や経験は日常生活の中でも役に立つ事の方が多いです。身の回りの人がそれぞれの職業ならではの事に日常生活の中でもこだわっているのを見ると微笑ましいな、お仕事が本当に好きなのねと嬉しくなります。そして私は知らない何をチェックしているのかを説明して貰うのも面白いものです。

最近の仕事

職場の事が中心のブログでありながら実際の仕事の話をほとんどしていませんでした。そこで早速・・・。今日の仕事は午前中はまず先日お話した『The Ashes』に関する既刊の本の増補改訂版の準備。最近のイングランドチームの『The Ashes』戦での勝利を織り込んで俄クリケットファン向けに市場に投入するのです。そして子供向けのシリーズ本の表紙と中身のデザイン。これは男児向けには恐竜、女児向けにはファッションなどをテーマにしていて、中身はそれぞれ予めミシン目の入った恐竜モデルや着せ替え人形です。
 午後からは日記シリーズのデザインをプロダクション部に引き渡す準備をしました。一平太さんがデザインした表紙に合わせてスパイラル・バウンドの針金と栞の役目を果たすゴム紐の色をパントーンという色のシステムから選びました。使われている絵に合い、かつ6冊のシリーズとして調和の良い色が必要でした。割とクラシカルな落ち着いた絵が多かったので少しグレーっぽい淡めの(muted)主張し過ぎない色を選びました。中身は私が何候補かデザインしていたのですが、承認されたデザインのサイズやパントーンの色の再確認等をしました。
 10月19日から23日までフランクルト・ブックフェアーが行われます。それに向けて新しい本のアイディアをたくさん出して表表紙と見開き2ページほどの中身のデザインを持って営業の人が売り込みに行くのです。もちろん既刊の本も持って行って新たな顧客を獲得しようとするのですが。スタンドの垂れ幕や背景などは大分前から準備しているみたいだし、デザイン部長の一平太さんには「この時期休暇は取らないで。」と言われているものの今の所はそんなに特別忙しい感じはしません。まだ安心するのは早いけど。

「もしもの場合、母体と子供のどちらの命を優先しますか?」

「もしもの場合、母体と子供のどちらの命を優先しますか?」というのは日本のドラマなどでは割と普通に耳にする事のある台詞です。医師が危篤状態にある妊娠中の患者のパートナーにする質問です。これまで自分自身や身近な人が実際にそういう場面に遭遇した事はなくて、その台詞の内容自体を深く考えた事もなかったのですが。最近出産予定間近の妊娠中のお友達が妊娠関連の病気で緊急入院し、彼女の旦那様が正にその質問を受ける事態になってしまったと聞きました。幸いにも緊急の帝王切開の手術は無事に終了し、お友達と赤ちゃんは非常に順調に回復したそうなので本当に良かったです。  

この質問の話をイギリス人である夫にした所 'Insane!'(「そんな非常識な事があるのか!」)ととても驚いていました。もちろん先にこの世に存在する母体の命を優先するに決まってるじゃないかと。我が家に短期滞在したカナダ人のお友達にもこの話をした所文字通り大口を開けて驚いていました。理由を聞くと、まず父親にそんな質問をするべきではないと。命の選択をしなければならない事態になったらどちらを優先するかは純粋に医学的見地から判断されるべきだと。もし母親と子供の生存の可能性が同程度なら母親が優先されるべきで、もし母親の状態がかなり悪いなら子供の命を優先的に救うべきだという事です。どうやら少なくともイギリスとカナダではタイトルの様な質問はあり得ない事のようです。

私は大筋ではカナダ人のお友達と同意見です。どちらを優先して救うか選ばなくてはならない事態に陥ったら医師が医学的立場から判断するべきだと思います。でも時間が許すなら夫の考えも聞いて欲しいと思います。ひょっとしたら妻の方は例え自分はこの世に残れず自身で生まれてくる子供を育てられなくても、自分と夫の遺伝子を継ぐ子供をこの世に送り出したいと強く思っていてその意向を夫に伝えていたかも知れないからです。それにしても妻の家族や夫にとっては、今この世に居る妻の命を救う方が大切なのではないかとは思うのですが。例え何かの事情でその後2人の間の子供は2度と持てないと分っていても。

もうすぐクリスマス

毎年毎年確実にクリスマス商戦の始まりが早まっています。以前は街中のお店がショーウインドーの飾り付けをクリスマス用の物に変えるのは「11月に入ってから。」が暗黙の了解だったのに今では10月半ば、10月に入って早々、とどんどん前倒しになって来ています。
 キリスト教を信じている人も信じていない人も、「季節感を無視して商業主義に走るのは許せない!」って憤慨する人が多いのですが。私は信者でもないので特に何をいう権利も無い一方失う物も無いという事で、単にどこまで事がエスカレートするのか眺めて楽しんでいるといった所です。

今年は9月17日の土曜日に最初のクリスマスカタログが届きました。新記録です!様々なメールオーダーの会社は毎年クリスマス用の特別カタログを用意して販売促進に努めますが、これを制作した人達は真夏かひょっとして春から作業をしていたんですよね。
 そして同じ週末、夫が近所のスーパーマーケットに行ったら、既にクリスマス用品が売り出されていたそうです。ミンスパイ(パイ生地の中にはひき肉ではなくて、ドライフルーツやスパイスが入っています。)まであって、賞味期限を見ると10月24日。クリスマスの2ヵ月前に傷んでしまうクリスマス用のお菓子・・・。

職場では今日総務兼受付の夏那さんから「今年のクリスマスのスタッフ・パーティーの予約をしたいと思っています。希望の場所がある人は私まで連絡してください。何の意見も無ければ私が勝手に決めてしまいま~す。」と一斉メールが届きました。
 パーティーの会場は普段仕事をしている職場で、BBCのコメディ・ドラマの『The Office』(脚注1)の様な世界が展開するのかなと想像していたのですが、どこか外でやるんですね。プロダクション部の沙弥子さんが『Smiths of Smithfield』(脚注2)を挙げていたので着席のお食事会みたいな感じなのかもしれません。

ところでクリスマス後のお楽しみだった冬のセール、ここ2、3年は売り上げの数字を上げる事に焦る店達がやはり不文律を破ってクリスマス前にスタートさせる事も多くなりました。消費者の方も賢くクリスマス直前までプレゼントを買い控えてお店を焦らせて、直前に値引きされた商品をすかさず購入したりしています。
 または単に直前まで行動を起こさないのは面倒くさがり屋なだけという場合もありますが。クリスマスショッピングは混んでいるし必ず何か買わなければというプレッシャーで「もの凄いストレス、大嫌い!」と言い切る人も多いです。人混みを避ける為にオンラインショッピングで済ませる人も年々増え続けているそうです。

私はクリスマスは好きです。街中のイルミネーションもウィンドーも自宅や職場での飾り付けもプレゼントの買い出しもラッピングもクリスマスディナーもクリスマスソングも全て。唯一苦手なのが甘過ぎるミンスパイとクリスマスプディングかな~。羊羹みたいで私には一口で十分です。

脚注1
2004年1月のゴールデングローブ賞でコメディ・シリーズ作品賞と同主演男優賞を受賞したリッキー・ジャーヴェイスのドキュメンタリータッチのコメディ・ドラマ。リッキー・ジャーヴェイスさんの演じる中間管理職の姿が笑いとムズがゆい様な居心地の悪さを誘います。日本でもWOWOWで7月から初放送されたようですね。

脚注2
スミス・フィールドマーケットという肉の市場にある肉料理で有名なレストランの名前
http://www.smithsofsmithfield.co.uk/privateroom.htm

職場の写真

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職場があるのは建物の最上階である4階です。階段とリフト(エレベーターの事。イギリス英語では 'lift' なんです。)の踊り場にある、北向きの窓から写しました。前景に見えるのはこの辺りに多い倉庫を改装して作られたオフィス兼住宅、中景には最初からその目的で建てられた新しめの集合住宅が写っています。その向こうに見えるのがテムズ河対岸の金融街、シティにある高層ビルです。左側の高層ビルのは 'Tower42' (旧ナットウエストタワー。1980年竣工。)で、右側のは '30 St. Mary Axe' (エロテッィク・ガーキンなんて呼ぶ人もいます。2003年竣工。)です。
 空にたくさんのクレーンが見えますが、これはテムズ河南岸の再開発の建築現場で使われているのです。中景の建物の陰になって写っていませんが、クレーンの足下には 'London City Hall' (ロンドン市庁舎、2002年竣工。)が建っています。その他にも大手会計事務所の入るオフィスビルがあり、'Unicorn Theatre for Children' など次々と建設中です。その建築ラッシュの流れは職場のある通り一帯にも届いていて、南側のベランダから見える範囲だけで5つほどの新築、改築中の建物があります。

付近の地名はバーモンジーと言って低所得者層のための公共住宅がたくさん立ち並び、60年代にロンドン港が閉港してからは倉庫も荒廃するに任されていました。それでもその頃にイスリントンから移って来た、金曜日の早朝5時から開くアンティークス・マーケットは世界的に有名なのだそうです。元々マーケットはプリンス・アルバートによって1855年にイスリントンに設立されましたが、その場所が1960年代に再開発される事になりバーモンジーに移されたのだそうです。
 ところが今度はバーモンジーが再開発の対象になり、不動産ディベロッパーが次々と土地や空の倉庫や個人経営の店舗を買い上げ始めました。そのあおりで小規模のアンティーク店が次々に閉店に追い込まれているそうです。貸店舗を使っている場合は、大家さんがディベロッパーにアプローチされて売る気になった場合、わざと払えない程に家賃を値上げするのでしょう。先日BBCのニュースでは、職場のある通りにただ一軒残っていたアンティーク商がとうとう手持ちの品を売り切った所で店じまいする事になったと報道されていました。

新しく入って来たおしゃれなお店と古くからある庶民的なお店が非常に対照的で、それがこの地域を面白いものにしているのにこのまま巨額の現金が流れ込み続けたらその内古くからのお店は全く無くなってしまうのかな。それもさみしい気がします。ところで再開発された建物に仕事に来る人達、新しく移り住んで来た人達と、付近に以前からある公共住宅に住んでいる人達の間では所得に非常に格差がありそうです。
 こういう場所に移り住んで来たお金持ちの人達は子供の教育はどうするんだろう、地域の公立小学校には通わせたくないだろうと思っていたら、最近ヒル・ハウスという裕福なチェルシーの方にある私立小学校の制服を着た子供と親らしき人が歩いていました。「やっぱり遠くても自分たち自身が通ったような私立小学校に通わせるのね~。」と思いました。

http://www.unicorntheatre.com/
http://www.30stmaryaxe.com/index2.asp

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入り口のドアの前から写した受付です。

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受付の隣にある台所から写しました。

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南側に職場の部屋沿いにずっと続いているベランダからの景色です。

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上の写真を撮影したのとほぼ同地点から西を向いて写しました。

巨大板チョコ

Title: Save me from myself
Date: Thursday 15 Sep 2005 15:08:32 +0100
To: Ryoko(児童書編集部長), Rio(児童書エディター), Hatsune(デザイナー), Yayoi(デザイナー)

Dear Children's Dept,
The Beehive illustration agency has kindly sent me some Cadbury's chocolate (that is now in the fridge, keeping cool). I shouldn't eat it all (I've got my figure to watch), so I advise you to run there now and have some before I invite the ravening hordes from the other departments to finish it off...
Ippeita

昨日の一平太さんからのメールです。名前以外は原文のままです。(一応訳を下に書いておきます。)「わ~い、チョコレート!」とウキウキしながら初音さんに、「もうチョコレート貰って来ましたか?」って聞いたら彼女も「太りたくないから。」という理由で要らないんだと言っていました。冷蔵庫を開けてみたらあったあった、400gの巨大板チョコが。私が一番乗りだったので紫の包装紙を開け、かなり厚みのある板チョコをバキバキと割って一人分貰って来ましたが、冷蔵庫に入っていたので冷たくておせんべいよりも固い!

一平太さん宛に「知らせてくれてありがとう。大きいチョコレートですね。割って一片貰って食べています。(冷蔵庫に入っていたから)固いけどおいしい!」と返事のメールを書こうと思ったのですが。日本語で書くと何と言う事もない文章が英語になるとなんだかちょっと怪しげに。インスタントメッセージを使ってイギリス人である夫の意見を伺おうと思ったけど席を外しているのか返事は無く、迷うくらいなら止めておこうと送らなかったメールの内容は以下のとおりです。

Hi Ippeita,
Thank you for letting me know about the chocolate. It's huge! I had broken off some and I'm having it now. It's so hard (as it was in the fridge), but very tasty!'
Yayoi

どの言語にも言葉の組み合わせによっては外国人の書き手にとっては思いもつかなかったような意味になる場合があるじゃないですか。全然そのつもりは無いのに現地の人が聞いたら下ネタ系表現になっていたり。これもひょっとしてその一例かなと心配になったのです。
 その良い例がお友達の奥さんのエピソードで、彼女はフランス人の照明デザイナーでロンドンのとある照明デザインの会社で働いていました。コンピューターなど机上の仕事だけではなくたまには実際に照明器具の組み立てをする仕事もあったそうです。
 組み立て作業がある事を予め知っていたある朝、会社に着くなり「おはようございます! 私、ネジ回しでどんどん組み立てますよ~!」('Good morning! I'm ready to screw!')って張りきって言ったらイギリス人のスタッフに大笑いされてしまったそうな。意味が分からない人、面倒がらずに辞書を引いてください。見出しのずっと下の方に出ている意味です。
 その後夫からインスタントメッセージで返事がありました。「う~んかなり怪しく響く。ヒュージもハードもテイスティーもそれぞれ1つづつだと何でもないけど。おまけにクリーミーとか言わなくて良かったね。何?送らなかったの、賢い判断。」と。

ところで『ビーハイブ・イラストレーション・エージェンシー』は実名です。このエージェンシーは前の会社でも使っていました。ポール・ビービーさん経営のエージェンシーだからビーハイブ(蜂の巣)なんです。Beebeeさんって珍しい名字ですよね。
http://www.beehiveillustration.co.uk/index.html

冒頭の一平太さんからのメールの日本語訳です。

『 僕を僕から守って(誘惑に負けてチョコレートを食べてしまわないように代わりに食べてしまってください。)』
児童書部門の皆様へ、
ビーハイブ・イラストレーション・エージェンシーが親切にも僕にカドベリー社製のチョコレートを送ってくれました。(それは今冷蔵庫に入っています。溶けないように。)僕が1人で全部食べてしまわないように(体型を気にしているんです。)どうぞ今すぐに台所まで走って自分の分け前を確保してください。これから他の部門にも知らせますが、そうしたら貪欲な人がチョコレートに群らがってあっという間に食べ尽くしてしまうだろうから・・・
一平太より。

カトリーナちゃん

香蓮を小学校の前後の時間預かって貰っている保育園には、カトリーナちゃんっていう女の子がいます。香蓮と同じ位の子で仲良しのお友達みたいです。先日迎えに行ったら香蓮は園庭でプラスチックの大きな樽を頭からすっぽり被っていて私に気づきませんでした。のっぺらぼうの樽に足だけついて歩いているみたいでした。その様子を見たカトリーナちゃんは「香蓮!ママが来たよ!」って声を掛け、「出るの手伝ってあげる!」っていきなり樽を押したものだから香蓮はその場で横転。横倒しになった樽からやはり膝から下だけが出ていました。
 園庭は特別なふわふわのスポンジのような素材でできているので転んでも大した怪我はしないようになっています。もちろん香蓮も無事でした。イギリスの公園の床は今どこもこのスポンジ状のクッション性の高い床材になっています。それにしても香蓮とカトリーナちゃんの様子がおかしくってたまりませんでした。そんな樽を被って歩いている香蓮も香蓮だし、親切のつもりでいきなり横から押すカトリーナちゃんもカトリーナちゃんです。2人に今後は気をつけてねと注意しましたが。

ところで最近アメリカのニュー・オーリーンズでハリケーン・カトリーナが大災害をもたらしました。自分の名前がハリケーンの名前に使われるってどんな感じでしょうか。昔はハリケーンに付けられたのは全部女性の名前だったのが、最近は男性の名前も使われるようになりましたよね。例えば1992年のハリケーン・アンドリュー。アメリカは他民族国家だから皆に平等にという事で、その内英語以外の名前も使われるようになったりして。例えばハリケーン・サダムなど。ハリケーンの名前は最初にハリケーンになりそうな熱帯低気圧を見つけたアメリカ版気象庁の人が決めるのでしょうか。

一平太さんと雑談

月曜日に一平太さんのコンピューターのデスクトップピクチャーが変わっているのに気がつきました。シド・ビシャスとジョニー・ロットン(本名ジョン・ライデン)が上半身裸でこちらを向いて写っていて、胸には少量の血(鼻血?切り傷からの血?)で汚れている結構ハードな写真です。「セックス・ピストルズのファンなんだ~。家の夫と一緒!」と思ってそれについて話しかけたくてたまらなかったのですが。一平太さんは普段仕事以外の話を全くしない人なのです。
 自分の仕事を一平太さんの机まで見せに行くついでに話をしようとしたけれど切り出せず仕舞い。1日の途中じゃなくて、朝一番に彼が出社する時に話しかければ良いんだと思ったけれど、いざという時になって「でも~、コンピューターをまだつけてなくてデスクトップピクチャー出てないのにそれを話題にしたら変かな。ずっと観察してたみたいで。(してるんだけど。)」と思ってしまって「おはようございます・・・。」しか言えなかったのです。その後も仕事中は言い出せる様な雰囲気ではありませんでした。

今朝になってもう考えるのに疲れてでもやっぱりお話ししたかったので思い切って声をかけました。一平太さんが9時半にデザイン部門のコーナーに入って来た時に。尋ねると彼はやっぱりセックス・ピストルズのファンで、音楽だけではなくレコードやポスターなどのグラフィックも含めた全てが好きなのだそうです。私も夫が大ファンで、『マスターマインド』という特定の分野に詳しい人の知識を試すクイズショーのテーマがセックス・ピストルズだった時に番組に出演した挑戦者よりも回答率が良かったとか、バンドに関連する書籍もたくさん持っていると話しました。
 また私と夫が5人のハウスメイトと以前一緒に住んでいた家の3軒程隣には、セックス・ピストルズのマネージャーだったマルコム・マクラーレンの当時のオフィスが入っていたという話もしました。これは夫のセックス・ピストルズの本で知ったのです。本にオフィスの入ってる建物の正面の写真が載っていて、なんか見覚えがあると思ったら近所でした。その通りはロンドン中心部ウエストミンスター区のマリルボーンにあるのですが、『ロンドン・プロパティー・ガイド』という不動産関連の本では「マリルボーンで一番おしゃれじゃない地域。」と評されていました!
 一平太さんのお友達にもセックス・ピストルズの大ファンがいて、彼は70年代からのバンドについての新聞記事や雑誌の切り抜き等を大量に持っていて、その資料を使ってバンドについて本を書きたいと思っているそうです。「その切り抜きの写真や記事の文章を本の中で紹介したり引用したりするには著作権の問題をクリアしなくてはならないので大変かも知れないけど。何か始まりそうだったらまた教えるね。」と言ってくれました。「一平太さんと雑談をした!」という達成感で朝から良い気分でした。なんだか少し緊張気味だったので、「お見合いってこんな感じかな・・・。」とも思いました。
 話している最中に一平太さんの一見普通の黒いキャンバス地の肩掛け鞄の裏側には白いどくろの絵が付いているのに気づきました。靴は今まで見た事のある彼の定番の先の尖った黒のショートブーツでも新しいオフホワイト、黒、カーキの3トーンのボウリングシューズ風の革靴でもなく、昔原宿で良くみかけたようなスエードで甲の部分にチェックのような編み込み模様のラインの入った厚い底のものでした。

夕方帰宅してから事の始終を夫に報告すると「一平太さんは何才?」と聞かれたので、「39才。」と答えると「5才年上か。という事はバンドが活動していた当時は11才。僕と同じで恐らくリアルタイムのファンじゃないな。その本を書きたいっていう人はきっと一平太さんより年上だろうな。よっぽど早熟な子供じゃないと11才でパンクロックバンドのファンにはならないよ。」と感想を漏らしていました。そして「そのセックス・ピストルズの本が実現したら買いたい。」とも言っていました。セックス・ピストルズって活動していたのは1976年と1977年のたった2年間だったんですね。今日初めて知りました。なのにイギリス社会に与えたインパクトは大きい!

フランスのネットワークにようこそ!

今年の5月に日本語衛星放送(JSTV)に加入しました。同じ衛星から日本語衛星放送のチャンネル以外にも様々な言語のチャンネルが受信出来て面白いんですよ。たまにフランス語のTV5というチャンネルにしてホリデー気分を味わいつつフランス語のヒアリングの勉強にしています。今夜もボーッとTV5を見ているうちに、前回のワイト島の旅行の感想に書き忘れた事があるのを思い出しました。携帯電話のネットワークについてです。

ワイト島南部にある夫の実家では以前は携帯電話は電波が届かなくて使えませんでした。それが前回の旅行では圏内に入っていたのです。でもイギリスのネットワークじゃなくてフランスのネットワークの圏内に。携帯にフランスの電話会社の名前が出て来て「フランスのネットワークにようこそ!」ってメッセージが。きっと最近対岸のフランスの海岸近くに新しい携帯電話のアンテナ塔が建てられたのでしょう。

携帯電話、使えなければ使えないで諦めるのですが、メッセージが送られて来たらそれを読んだり返事をしたくなったりするのが人情という物です。でもフランスのネットワーク内に居るから、同じイギリスに返事を送っても国際電話の料金になってしまうのです!国際電話をかけている事に気がつかず後日請求が来てからびっくりする旅行者も居るに違い有りません。