S君がドラゴンフルーツ畑を始めたのは10年前、ちょうど僕がタイに来た頃です。
家族の期待を背負った英国の大学農学部留学からの帰国後、親戚の持っていた土地を借りて中米やベトナムから輸入したドラゴンフルーツ畑の苗を植え栽培を始めたのでした。
初めて畑を訪れ彼に会った時、(何でこんな綺麗な英語をしゃべるタイ人がオフィスでは無く、畑にいるんだろう)と驚いたものでした。その時彼が語った夢、
「この畑をタイで一番のドラゴンフルーツ畑にして、まだ一般のタイ人には知られていないこのフルーツをメジャーにしたいんです。」
という言葉は今や現実のものとなりました。どこのスーパーに行っても安価でビタミンCが豊富なフルーツとして山積みになっています。
暴風雨や冠水の時もここで過ごしたという彼の苦労の10年はタイでドラゴンフルーツが普及する歴史そのものといっていいでしょう。
その時僕も応じて、
「よし、出来るだけ輸出者として協力するよ」
といったにも関わらず未だに毎年少量の仕入れに留まっているのは心苦しい限りですが。
毎年数百トンの収量が上がるようになった今でもS君の頭痛のタネは尽きません。ひどくなる一方の鳥害からどうやってフルーツを守るか、低迷する市場価格、そして5人いる弟・妹たちの学費・・・(タイ人は家族に一人稼げる人がいると兄弟・親戚が皆その一人に寄りかかり生活していくパターンが多い)
しかし頑張り屋のS君ならばこれもきっと乗り越えていくに違いありません。
ガンバレ、S君 !!