昨年(2008年)末に訪問したカンボジア証券取引委員会(SECC)のフオト・プム氏(デュプティー・ジェネラルディレクター)は「カンボジアは証券取引所を2010年中に開設する」と発言していました。2000年開設のベトナム証券市場に10年遅れてラオス、カンボジア両国でも証券市場開設がすぐそこに迫ってきています。
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写真はビエンチャンのラオス財務省
ラオス・カンボジア両国に共通しているのはいずれも韓国証券取引所(KRX)の協力の下に証券市場開設を目指していること。例えば、資本面ではKRXはラオス証券取引所に49%出資。また、人材教育面でもKRXはラオス・カンボジア両国に支援をしています。
ラオスの特徴を少し書きます。ラオスは典型的な農業国です。輸出はGDPの20%しか占めていません。そのために、世界不況の影響が少ないと言われています。
また、地形的に山岳部が多いため水力発電所を建設するのに最適とも言われています。一方、タイをはじめインドシナ各国では電力不足が顕在化しているため、将来的にはラオスは「インドシナの発電所」の役割をするのではともいわれています。現在も、タイのラチャブリ・エレクトリシティ・ジェネレーティング(RATCH、タイの電力会社)などが北部ラオスで水力発電所を建設中。発電所完成後はタイへの売電を予定しています。
資本市場を創設して海外などから資金を調達しラオスに水力発電所を建設することは電力不足で悩む(特にベトナムやカンボジアなどの)インドシナ各国の発展に大きな貢献をすると思われます。但し・・・これはあくまでも長期的な展望。水力発電所は初期コストが高く、現実的な近未来ではベトナム、カンボジアなど湾岸部の原油・天然ガスを利用した火力発電所の建設が優先されると思われます。
証券取引所創設は両刃の剣。証券市場創設によって、所得格差は拡大するし、実体経済から乖離したバブル的な株価形成もありえます。株価が大きく変動すれば国民の不満も・・。本来の「のどか」なラオス農村地帯の良さも次第に消滅の方向へ進むでしょう。反面、証券市場を通じた資金調達は今まで不可能だった水力発電所建設を含むインフラ整備を可能にする可能性があります。
社会主義国家ラオスをよしとしてきたラオス人は証券取引所創設を選択する道を選びました。これは1980年代前半に中国が下した決断と同質なものです。
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