「2009年1月末現在、日本の外貨準備高は1兆米ドルを超えています」
本日は「外貨準備」について書いてみたいと思います。
「外貨準備」とは、簡単に言えば外為市場で為替レートの安定を確保するために活用されるもの。この場合の為替レートとは、円・ドル為替レートです。
例えば、米ドルが急上昇する場合には、外貨準備で保有する米ドルを外為市場で「売却」し、急激なドル上昇を回避します。つまり、米ドルの「売り手」に回ることで急激なドル高(円安)を抑えるわけです。一方、米ドルが急落する場合には、外為市場で米ドルの「買い手」に回り、米ドルを「購入」することで急激なドル安(円高)の進行を回避します。こうした外為市場での介入の結果、蓄積したものが外貨準備です。
外為市場介入は、形式上、政府が日銀から借り入れた円資金によって行われます。つまり、政府は日銀から借り入れた円資金で米ドルを買う形になるわけです。そして「ドル買い・円売り介入」によって外貨準備高が増えると政府はドル資金をそのままにしておくと利息が付かないために米国債を購入します。
すなわち、結果的・図式的には、①政府は日銀から円資金を借りて、②外為市場で米ドルに交換して、③米国政府に貸し付けていることになります。
外貨準備は勘定としては財務省の外国為替資金特別会計が保有しています。ところが、「国家予算」と異なり、この資金に対する民主的統制はほとんどないのが現状です。そのために最近は勘違いをしているとしか思えない政治家発言も目に付くようになりました。
外貨準備は「納税者のオカネ」であり、決して「政府のオカネ」ではありません。
冒頭で書いたように、現在、日本は1兆ドルを超える膨大な外貨準備を蓄積しています。そしてその内訳は、財務省ウェブサイト・統計によると09年1月末現在で外貨準備の97%は外貨(100%米ドルでしょう)でそのほとんどは証券(つまり米国債)で運用しています。残り3%の内、2%はゴールド(金)で保有。
つまり、日本政府は1兆米ドルを超える巨大な「納税者のオカネ」を為替リスクに晒している(expose)していることになります。
現在、米国は米ドルを増刷することで金融危機を乗り切ろうとしているようです。仮に、長期的に米ドルが減価するならば、このままでは外貨準備に大幅な為替損失が発生することになります。
例えば、1兆ドルの外貨準備高のほとんどを米ドル建てで持つのではなくて、ゴールド(金)保有分を増やしたり、または外貨準備でレアメタルやエネルギーを購入したり、中国元や通貨ユーロを購入してリスク分散するのはどうでしょうか。
莫大な外貨準備高については、早期に国会で議論を尽くすことが必要だと思います。みなさんはどう思われますか。私には沈みつつあるタイタニック号にいつまでもしがみついていることはとてもリスキーなことのように思われるのですが・・また、本来的にこうした為替リスクを政府は取るべきではないとも思います。
(参考)
財務省 統計/外貨準備等の状況