米国発金融危機とタイ株式市場、タイ不動産市場 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 米国サブプライム問題を引き金に世界は景気後退局面に突入しました。いわゆる、「世界金融危機(Global Financial Crisis)」です。現在までのタイへの影響を株式市場、不動産市場に分けて考えてみました。

●SET市場

 先週金曜日11月14日のSET指数は5日連続安(0.81%安)の429.97ポイントで引けました。売買代金も90億501万バーツと個別株式の売買単価が劇的に下がったあとだけに減少しています。とりあえず、10月29日の384.15ポイントを底値に2番底模索中といったところでしょうか。
 「光明」は11月に入ってから大量の外国人売りが消えたこと。11月前半の外国人投資家純売り超し額は3億9306万バーツと「売り超し」ではあるものの、それまでの市場を席捲するほどの勢いではありません。

 ちなみに、11月前半の国内法人投資家は3億6171万バーツの純売り超し、個人投資家は7億5477万バーツの純買い超しとなっています。純買い超しの個人投資家層はいわゆる「タイ・富裕層」。現在は、キャッシュリッチな富裕層が株価の下値に指値買い注文を出している状態といえるでしょう。

 市場は生き物です。したがって将来の予想は難しいのですが、11月以降大幅な外国人売りが消滅したため、SET指数が先月29日下値を抜ける可能性は低いと思います。1981年4月のクーデター後のSET指数歴史的安値時PER(株価収益率)は7.26倍だったということを考慮すると、現在のPER(株価収益率)5.59倍(当時の推計方法)は、非常に割安に思えます(注1:現在の推計方法では11月14日末でPERは6.60倍)。タイ・富裕層はこの辺を意識しているのだと思います。

 米国サブプライム問題のタイ経済への直接的影響はあくまで限定的です。ここが重要なところですが、米国や欧州とは影響の「性質が違う」のです。直接的影響といえるのは、SCB(サイアム商業銀行)やBBL(バンコク銀行)のようなタイ大手商業銀行の海外投資分のみ。そして、それらは既に処理済です(下記の過去記事を参照)。

(参照記事)
10月21日 BBL、KTB、SCB、KBANK、SCIBなど、タイ大手銀行が続々と決算発表
11月13日 日本人にフレンドリー(?)な、サイアム商業銀行(SCB)を取材しました。

 ただし、景気後退による輸出減少など、間接的な影響は来年にかけて避けようがないともいえます。したがって株は余裕資金で株価の押し目で長期投資用に購入するか、世界景気動向を見極めるために来年半ばまでウェイト・アンド・シー(様子見)を決め込むか、のどちらかでしょう。個人的には、米国株式市場に底値感がでてきたらアジア株式は「買い」シグナルだと思います。

 注目すべき点はリパトリエート(本国への資金還流)した米国の資金動向、つまり米ドルのインデックスなどに要注目です。また、来年半ばから後半にかけて、中国経済復活の兆しが出てきたら、再び石油などの「商品市場」も再上昇する可能性があります。その場合は、タイのエネルギー株にも注目したいです。

●不動産市場

 タイ・不動産情報センター(Real Estate Information Center, REIC)によると、08年第3四半期(08年6月~9月)のハウジング・ディベロッパー・センチメント指数(Housing Developers’ Sentiment Index, HDSI)は1.2ポイント下落。

※ハウジング・ディベロッパー・センチメント指数は146社の不動産業者(内、28社はSET上場企業)調査で作成

 タイ第2位・不動産ディベロッパーのプルックサー・リアルエステート(PS)は、2009年の不動産市場は10%程度縮小する可能性があるとしています。前提条件は、タイ政治の混乱が2009年第1四半期末まで継続し、その後は(政治状況にかかわらず)消費者センチメントは回復するという想定です。同社は今後、現在の在庫7億バーツ(試算売値は10億バーツ分)を減らしていく方針。また、景気後退の影響を真っ先に受けるブルーカラー層(バンコク郊外70万~80万バーツの戸建)からホワイトカラー層(バンコク近郊120万バーツ以上の戸建)へ顧客ターゲットをシフト(移行)する戦略をとります。

 人口動態や税制からタイ不動産市場の下値は堅いもののも、不動産市況もここ数年間の上昇の踊り場にさしかかっている状態です。しばらくは様子見という雰囲気。タイ政府は現在の住宅減税を延長・継続すべきでしょう。

 タイ不動産市場については、先週末に東京本社からからタイ・不動産市場(特に富裕層向け投資用コンドミニアム市場)の調査のオファーがありました。今後は株式市場に加えて、不動産市場もこのブログでフォローしていくつもりです。

 タイ不動産の場合、私の知っている(噂として聞いているということ)範囲では、「一緒に住んでいたタイ女性(ミヤノイ)に不動産を取られた」とか、「タイ人弁護士や不動産会社に詐取された」とか、「タイ地方部ではコンドミニアムの価格設定が市場価格の数倍の日本人価格だが現地相場を知らずにその価格で購入してしまった」とか、「地方部の日系不動産はバンコクには居られ(働け)なくなった連中が移動した」(あくまで噂ですよ)とか、「同地方部の不動産会社社長が自殺したがこれは不審死である」とか、色々な(怖い)噂が飛び交っているようです。このあたりも念頭に置きながらタイ不動産市場についてご報告できたらと思っています。現在、タイ・不動産市場は急騰する地合いではありません。したがって不動産についてはゆっくりとやっていこうと思います。