日本人にフレンドリー(?)な、サイアム商業銀行(SCB)を取材しました。 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 今週11日(火)にサイアム商業銀行(SCB)を訪問してきました。インタビューに応じてくれたのは副頭取(Vice President)兼広報部長のワナポーン女史。ワナポーン氏は米国公認証券アナリスト資格(CFA)の保有者で、今年4月には日本でSET(タイ証券取引所)と共に日本の証券会社・機関投資家向けにロードショーをやってきたそうです。「日本が非常に気に入っている」とおっしゃる親日家でもあります。

 SCB本社はラチャダピセーク通りの巨大な自社ビル・SCBパークプラザにあります(下の写真↓)。真ん中のSCBパークプラザにはサイアム商業銀行、その両隣にはパークプラザ・ウェストとパークプラザ・イーストの巨大ビルが連なるビジネス街です。





 SCBは1906年にタイ初の民族系商業銀行として現王朝王族が設立。総資産規模ではバンコク銀行、クルンタイ銀行に次いで第3位。ただし、年初から第3四半期までの純利益、ROE(自己資本利益率)、ROA(総資本利益率)、時価総額(9月末)のいずれも銀行ではナンバーワンとなっています。

 08年9月末の支店数は927店舗、ATM設置数は5840ヶ所。同行のコーポレートカラーは「紫色」です。タイへご旅行された際に「紫色のATM」をもし見かけられたらそれはサイアム商業銀行(SCB)のATMだと思って間違いありません。多分、至るところで紫色のATMをみかけられることになると思います。

 また同行は、非常に「日本人フレンドリー」な銀行としても有名です。例えば、日本人旅行者がパスポート持参でバンコク銀行(注:バンコク銀行が良くないという意味ではないですよ--笑-)に口座を作成しようとすると、現時点では労働許可証がない限り難しくなっています。ところがSCBでは(支店長次第ですが)口座作成が可能な場合が多いようです。

 「日本人フレンドリー」なことは、同行のATMにも現れています。というのはSCBのATMは4言語を選択することが可能で、その4言語とはタイ語、英語、中国語そして日本語。つまり、SCBのATMは明らかに日本人を顧客ターゲットにしているわけです。日本人が「日本語で操作」できるATMは「タイではSCBだけのはず」とワナポーン氏はおっしゃっていました。

 SCBはタイの「ベスト・プレミア・ユニバーサルバンク(Best Premier Universal Bank)」を目指しています。同行の強みはリテール部門ですが、今後、いわゆるユニバーサルバンク・ビジネスモデルが急成長することが期待されます。実はこの点を調査したくて今回、SCBを訪問しました。

 「ユニバーサルバンク・ビジネスモデル」とは簡単に定義すれば、銀行、証券他の金融業務の全てを手がける総合金融機関が、それぞれの業務の相乗効果を目指したビジネスモデルです。平たく言えば、単なる銀行ではなく「利息収入以外の手数料収入(Non-Interest-Income)」を収益の大きな柱とすることです。これにより新たなビジネスチャンスを得るとともに、景気変動に影響されにくい収益体質となることができます。

 同行はグループ内に「証券」「リース」「生・損保」「資産運用」会社を保有。特に「資産運用」のSCBアセットマネジメント社は業界シェア1位の約20%で、運用資産額は約3000億バーツに上ります。またバンカシュアランス(銀行窓口での生損保商品販売)でもタイ・ナンバーワン。この辺を詳しく書くと長くなりますので、結論から言うとSCBは、他行に先駆けて「ユニバーサルバンク・ビジネスモデル」導入に成功した銀行といえます。

 年初から第3四半期までのローン伸び率も順調、不良債権比率も減少傾向にあります。またリーマンブラザーズ関連の損失を08年第3四半期にすべて処理(すべて売却)したことを付記しておきます。一方、バンコク銀行は(同じ処理とはいっても)リーマンブラザーズ関連損失を引当金に計上したのみです(これについては10月21日のブログを参照)。