「炭素文明論」佐藤健太郎著 ★★★ | 一兵卒のブログ

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炭素文明論、
副題が
『「元素の王者」が歴史を動かす』

非常に面白く勉強になりました。
★を5つあげたい本です。

●炭素が王者たる所以は
「化合物を作る」こと。
今までに天然から、
あるいは人工的に存在する
化合物は七千万以上にも及ぶが、
炭素を含むものは八割を占有。
炭素は他の元素が叶わない
豊穣な化合物世界を創り出す。

●地上の生命は、
この化合物群に立脚。
地表における炭素の存在比は、
わずか0.08パーセント。
人体を構成する元素のうち
18パーセントは炭素。
水分を除いた体重の半分は
炭素が占める。
人間に限らず、
細菌から恐竜に至る全ての生物の
基礎を成すのは炭素。

●炭素が握る人類の未来
・有機EL‥発行材料が炭素化合物
・炭素繊維‥重さ鉄の四分の一。
重量当たりの強さは10倍以上、
固さは7倍。
・炭素の強み
=炭素は石油等、安価な材料から
量産可能。
=人工的に変えて様々な性質を
引き出せること
・医薬化合物
人体内で働く数万のたんぱく質から
目的のものを見分け、
安全かつ確実に病気を
癒す化合物は分子デザインの究極。
抗体医薬もガン治療の切り札。
抗体たんぱく質も
巨大な炭素化合物。
・ナノカーボン群
①フラーレン
‥第4の炭素
サッカーボールのように
60個の炭素化合物。
太陽電池に応用、薄くて軽く
印刷するように製造。
壁紙、カーテンの表面などが
発電所に。
・カーボンナノチューブ
‥炭素繊維よりも強く、
電気を通し、半導体にもなる。
低電力超高速コンピューター。
・グラフェン
‥炭素一つ分の厚さしかない
史上最も薄い素材。

●化学は公害等の負のイメージが
あるが、今や低環境負荷、
低エネルギー消費の文明を
創出するキーテクノロジー。

●再生可能エネルギー
・太陽光は地球表面に
薄く広がり注ぐため、回収困難。
(エントロピー的に不利で
科学が進んでも技術的に
超越するのが困難)
・太陽光発電は同じ発電量の
天然ガス発電所の3000倍の
面積必要。
建設コストも膨大。

●人工光合成
現代科学の最重要テーマ。
藻類に注目
オーランチオキトリウム
‥筑波大が発見。
炭素化合物を食べて
スクアレンという重油に
似た成分を生む。
繁殖速度は四時間毎に倍々に。
1ヘクタール、1万㌧の
油製造の可能性。
大気中の二酸化炭素を油に。

刺さった言葉は、最後の文章。
「原発事故以降、
エネルギー消費の
ライフスタイルなど辞めて
江戸時代の暮らしに戻れば良い」
といった論調を目にした。
技術と社会を昔に戻すことは
出来ない。
19世紀の技術で養える人口は
20億人ほど。
江戸時代に帰れということは
50億人に死ねというに等しい。
過去に学ぶことは多いが
後戻りすることに意味はない。
道は前方にのみ拓かれる。
そこには魔法の杖、
一気に解決する答えはない。
省エネルギー、生産の改良、
安全かつ十分な資源の開発、
都市と交通システムの再構築、
そしてもちろん我々の
意識改革などなど、
あらゆる分野にわたっての
努力が必要。
出来ることは全て行う、
人類挙げての総力戦と
ならざるを得ない。
中でもエネルギーの確保と、
炭素循環経路の確立は
最重要のピースとなるであろう。
人類は炭素によって生かされ、
歴史は炭素化合物につれて
動いてきた。
今後の我々の未来を支え、
道を切り開くのは、
炭素をマネジメントする技術に
他ならない。
人類の明日のため、
炭素という小さく平凡で、
それでいて不思議な力を
秘めた元素に、
光が当たることを願ってやまない。

★★★(★★)

後書きにも響く言葉が‥
「近年、『低炭素社会』、
『カーボンフリー』などという
言葉に象徴されるように
何やら炭素は邪魔者、悪者で
あるかのように扱われている。
しかし炭素こそは生命、
文明にとっての
キープレーヤーであり、
現在よりさらに多くの注目が
注がれるべき」