公式サイトからのコマーシャルメッセージ。
子供を作りたいのか作りたくないのか、作れないのか作らないのか。
とある老夫婦と息子夫婦の二世帯住宅の家庭。
どこにでもある、しかし極めてデリケートな問題。
どこにでもあるが、実はこの国の最も重要な問題。
この問題にしっかり取り組まねばならないのに、コロナ禍など他の問題が夫婦に押し寄せる。
大胆でいて壮大なラストに向けて突き進む、18歳以上が楽しめる、純粋社会派深刻喜劇。
山内ケンジ監督5作目の長編映画だが、自分にとっては初山内ケンジ作品。彼の名前を知ったのは『映画芸術』の「2025年日本映画ベスト&ワースト」を読んで。
ちなみに『映画芸術』の「2025年日本映画ベスト5」は
第一位 『星と月は天の穴』 荒井晴彦
第二位 『「桐島です」』 高橋伴明
第三位 『アジアのユニークな国』 山内ケンジ
第四位 『敵』 吉田大八
第五位 『ふつうの子ども』 呉美保
そして、『映画芸術』が選ぶ「2025年日本映画ワースト」第一位が李相日監督『国宝』。
「純粋社会派深刻喜劇」と銘打つだけあって、題材としている社会問題は「姑の嫁に対する『孫ハラ』」を主軸として、(不倫、セックスレスを絡めた)夫婦の在り方。コマーシャルメッセージが謳うように、「あるある」の至ってシリアスな問題をコミカルに描いた作品。
そのコミカルな演出として不条理劇を持ち込んでいて、それは大概成功していると言える。現実と幻想の境目がなくなるような描写は、この作品のもつ「どことなく変」という雰囲気を醸している。
圧倒的な存在感を出しているのが主役のさらを演じる鄭亜美(ちょんあみ)。在日コリアンの彼女はこの作品の中でも在日の役なのだが、義父母を「おとうさま」「おかあさま」と呼ぶ日本人よりも古風な嫁を演じている。
個人的に気に入ったのが、義母役のキャラクター。デモに積極的に参加するようなリベラル活動家でありながら、家庭では人権そっちのけで孫ハラ・人種差別的発言をするという設定はなかなかのセンス。その義母役は石川彰子が実年齢40そこそこで二回り上の年齢の役をこなしているのだが、彼女がシャンソン歌手のライブに誘われて目をハートにしてうきうきしたと思ったら、嫁のさらが夫と飲みに行ったことを知って凍り付く様子が笑えた。エンディングのライブ会場での彼女の幻想とも言える情景は、セックスに対する距離感を表しているのだろう。
山内ケンジ監督はCMディレクターとして成功しており、あのソフトバンクの白戸家CMは彼の作品。そのほかマイケル富岡「UFO仮面ヤキソバン」や古館寛治「コンコルド」(静岡ローカルCM)を観ると、この作品でも十分面白いが、もっとコメディ感を出した作品を作ってもよさそうなもの。ほかの作品を観てみたいと思った。
★★★★★★ (6/10)
