A24配給作品(制作はブラック・ベア・ピクチャーズ)。昨年のアカデミー賞(第97回)で、作品賞ノミネートの下馬評で有力視されていたが、最終的には選にもれた作品。
ニューヨーク州にある実在のシンシン刑務所で行われている芸術を通した更生プログラム(RTA: Rehabilitation Through the Arts)を題材にした作品。演劇のプロの指導に基づくRTAにより、意識の改善と再犯率の低下に顕著な効果が見られるとされる。
作中、演劇をする受刑者のうち2人(Gとマイク・マイク)を除く全てがクレジットで「as himself」とあるように、実際のRTAプログラムを経験した元受刑者という配役が注目されている。演技経験者ではあるが、プロの俳優ではない彼らの演技は見どころがあった。特にストーリー上重要なクラレンス・“ディヴァイン・アイ”・マクリンを本人が演じており、彼の演技には驚かされた。
ストーリーはシンプル。Gとディヴァイン・アイの二人がRTAを通して友情を育む物語。周りを拒んでいたディヴァイン・アイがほぐれて他者を受け入れるようになる変化がポイント。
主人公Gは無実の罪で服役しているとされるが、それはあくまで本人の弁であり、彼が巻き込まれた事件の詳細は一切描かれていない。第2級殺人(殺意はあるが計画性のない殺人)で25年服役している者が、罪を認めることなく仮釈放が許されるというのは日本では考えにくいことだが、そうした刑事司法ネタも深掘りはしていない(ちなみに、予告編で「あなたの再審請求は却下されました」という訳は、意図的かもしれないが誤訳。それはclemency hearing =減刑審問会のもので、Gが無実の証拠として提出した真犯人の告白テープに関して、その告白した本人が死んだため検察は真偽を確認できないと伝えたシーン)。
受刑者を主人公にした物語と言えば、『ショーシャンクの空に』がまず思い出されるが、それほどドラマティックではないにせよなかなか「いい話」だった。アカデミー作品賞ノミネート作の10本に入ってもよかった作品。
★★★★★★ (6/10)
