監督は『007 慰めの報酬』『ワールド・ウォーZ』 『プーと大人になった僕』 『ホワイトバード はじまりのワンダー』のマーク・フォースター。幅広いジャンルを手掛けていることから、オリジナリティや作家性を前面に出すというより、エンターテイメント作品をそつなく作っている印象。そしてこの作品は、スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』のハリウッドリメイク。
ハリウッドリメイクでオリジナルに比してセンスが悪いものは枚挙にいとまがないが(その双璧は『ニキータ』のリメイク『アサシン』と『インファナル・アフェア』のリメイク『ディパーテッド』)、『コーダ あいのうた』のようにオリジナルを越えたリメイクもある。この作品は、個人的好みはあるだろうが、オリジナルよりもよかったという印象。
トム・ハンクス主演であれば、クセありの主人公が実は愛すべきキャラクターであるというストーリーは、オリジナルを観ていなくて読めてしまう。それでもこの作品がよかったのは、感動ものというより主人公とその妻のラブストーリーがよく出来ていたから。オリジナルでもその要素は多分に盛り込まれていたが、ストレートな恋愛ものはやはりハリウッド制作陣の方に軍配が上がった。
この主人公のような気難しさは生来のものであることが通常で、元々少々細かい性格ではあったが、妻の死を境に周囲の手に余るほどの厄介者になることは若干の違和感がないわけではない。また隣人が皆(特にメキシコ人一家)オットーのことを理解するいい人ばかりというのも出来過ぎではある。
こうした作品につきもののあざとさはあるものの、それをあげつらうよりも素直に楽しむのがいいと思わせるだけの出来のよさはあった。比較すると抑えた印象のオリジナルの方がいいという人も当然いるだろうが。
★★★★★★ (6/10)
