LGBTQ+を題材にした作品には優れた作品が少なくないが、この作品もその一つ。2024年(第74回)ベルリン国際映画祭で、LGBTQ+をテーマにした作品に授与されるテディ賞の審査員特別賞を受賞した。世界三大映画祭の中でも社会派作品が強いとされるベルリン国際映画祭受賞作らしい作品。
ジョージアに暮らす元教師のリアは、行方不明になったトランスジェンダーの姪テクラを探すため、彼女を知るという青年アチとともに、トルコ・イスタンブールへ旅立つ。しかし、行方知れずとなったテクラを見つけ出すのは容易ではなかった。やがてリアは、トランスジェンダーの権利のために闘う弁護士エヴリムと出会い、助けを借りることになる。東西の文化が溶け合うイスタンブールでテクラを捜す旅を通して、リアとアチ、エヴリムの心の距離は少しずつ近づいていく。
監督はスウェーデン人のレヴァン・アキン。彼の『ダンサー そして私たちは踊った』(2019)は、LGBTQ+をメインのテーマにしながら、「国家の精神そのものである」と作品中でも言及されるジョージア・ダンスに対する芸術的挑戦がサブのテーマとなっていた秀作だった。
この作品はとにかくエンディングが秀逸。これほど見事なエンディングもないだろう。
(以下、ネタバレを含めてエンディングを解説)
隣国とは言えトルコとジョージアは言葉や文化が違い、その隣国の都市に行方知れずとなった一人の人間を探すのは容易ではないことは想像に難くない。その困難な状況下で旅をするリアとアチに加え、探す姪のテクラと同じトランスジェンダーのエヴリムが加わるロードムービーなのだが、LGBTQ+の要素はただ単にテクラとエヴリムがそうであるというだけの背景に過ぎないと思っていた。
そしてエンディングでリアとテクラが道でばったり出会うというのは、偶然というにはあまりにも可能性が低いだろうと驚いた。しかし次のシーンで、そこにいるはずのないアチを映し出し、彼が以前にした「もしテクラと出会ったら何と声を掛ける?」という質問を問いかけることで、リアはテクラとは出会っていないことを観客は知る。そしてその答えこそが、リアがテクラを探す旅の目的であり、それはテクラの母の言葉でもあり、リア自身の言葉でもあった。それはLGBTQ+肯定の強いメッセージであり、なぜリアが姪を探すことにそれほどこだわっていたのか作品中で少し引っ掛かっていた疑問への答えだった。ラストシーンは船上のリアだが、姪を見つけることが叶わなかった、彼女の悔恨が浮かび上がる無念の表情が痛々しかった。
それまで遠景だったLGBTQ+のテーマが一気に浮上し、そして余韻たなびく秀逸なエンディングだったと思う。リアと出会うことのなかったテクラの物語に、イスタンブールというエキゾチックな舞台とアチとエヴリムという個性豊かな脇役を配した秀逸のロードムービーだった。
★★★★★★★ (7/10)
